米司法省監察官が2025年6月28日に公表した報告書によれば、メキシコの麻薬カルテル「シナロア・カルテル」が、FBIの捜査官を追跡するためにハッカーを雇い、その情報を基に複数の協力者や証人を威嚇、さらには殺害していたことが判明しました。
この事件は、元シナロア・カルテルのボス、ホアキン・「エル・チャポ」・グスマンの捜査中に起きたもので、FBIとメキシコ法執行当局の連携の中で発覚しました。
カルテルによる高度な監視活動
報告書によると、FBIの担当捜査官が2018年、カルテル関係者から「ハッカーの存在」を知らされたことが発端です。
そのハッカーは、FBIの法務アタッシェ(ALAT)の携帯電話番号を入手し、通話履歴や位置情報を取得。さらに、メキシコシティにある監視カメラ網を利用して、FBI職員の移動を追跡し、接触した人物を特定しました。
FBI関係者によれば、カルテルはこの情報を活用して情報提供者を脅迫し、一部は殺害に至ったとされこれにより、重要な捜査協力者が失われ、捜査全体への深刻な影響が出たことが示唆されています。
FBIの対応と問題点
この報告書は、FBIが「遍在的技術監視(UTS)」、すなわち民間技術の進展によりあらゆる場所で可能となった監視に対し、十分な対策を講じてこなかったと厳しく指摘。特にFBIが立ち上げた「レッドチーム」の初動が不十分で、全社的なリスク評価や長期的な対策が欠如していたと結論づけています。
FBIは報告書への回答で、多くの対応策を講じていると主張する一方で、「技術変化に伴う脅威の理解には全社的な評価が必要」とする指摘に同意し、さらなる教育と訓練の強化を約束しています。
技術を駆使する新世代カルテル
今回の事件は、メキシコ麻薬カルテルの高度なテクノロジー活用を裏付ける新たな証拠でもあります。報告書では、カルテルが監視カメラ、スマートフォンのハッキング、さらには暗号資産による資金洗浄といった先進技術を積極的に採用していることにも言及されています。
DEAやCIAといった米国機関もまた、高度な監視技術を駆使してカルテルの摘発にあたっていますが、その戦いは日々激化しています。報告書では、「FBIと連携機関の一部では、この技術監視の脅威は“存続に関わる”レベルだと認識されている」と警鐘を鳴らしています。
今後の課題
FBIは現在、これらの脅威に対抗するための戦略的計画の策定を進めているとされていますが、民間テクノロジーが生む新たなリスクは、従来の捜査手法だけでは太刀打ちできない段階に差しかかっています。司法・情報機関の協力や新技術への理解を深め、国家安全保障の基盤を守る必要性が一層強まっています。
参照
Hacker helped kill FBI sources, witnesses in El Chapo case, according to watchdog report








