
2025年3月26日、鳥取地方検察庁は、日本海テレビ放送の元経営戦略局長である田村昌宏被告(55)を業務上横領の罪で在宅起訴したと発表しました。
同被告は、同社が参加しているチャリティー番組「24時間テレビ」に寄せられた寄付金を含む、総額およそ480万円の会社資金を着服したとされています。
事件の概要:組織内で完結する「静かな横領」
起訴状によると、田村元局長は2019年から2021年にかけて、会社口座から自身の口座へ合計約470万円を不正に振り込み、さらに2022年にはチャリティー番組「24時間テレビ」の寄付金約10万円を自身の口座に入金して着服していました。
ポイントは、被告が会社の経営戦略局に所属していたこと。
つまり、財務や資金の移動に関する知識・権限を有していた人物による内部不正という点です。
警察によると、当初の書類送検段階では容疑を認めていたとされ、すでに会社からは懲戒解雇され、着服金額も全額弁済されたとのことです。
日本海テレビは「視聴者および寄付者に深くお詫び申し上げる」と謝罪し、再発防止に取り組む姿勢を示しています。
なぜ発覚が遅れたのか? 不正を見逃す「平常業務の落とし穴」
この種の着服は、外部からの不正アクセスやマルウェアのようにログに明確な痕跡が残るわけではないので、
内部の正規プロセスを悪用しているがゆえに、発見が遅れる傾向があります。
特に以下のような環境では、検知が困難です
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資金移動や決済が紙媒体や口頭ベースで行われている
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振込承認フローが一人の権限で完結する
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会計処理とシステムログが連動していない
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寄付金や預り金など「一時的に社外の金を預かる」業務にIT統制が及んでいない
一般的な対策
今回の着服事件を踏まえ、組織における内部統制のあり方や一般的な対策は以下です
まず、「権限の集中と不透明なプロセス」が不正の温床となるため、財務・寄付金・一時預かり資金に関わる業務については、「業務実施者」「承認者」「監査者」を明確に分離する職務分掌の徹底が求められます。
次に、資金移動や振込操作に関するアクセス権限の見直しと最小化を実施し、過剰な権限の付与や役職に依存した例外的運用を廃止することなどが必要です。
最後に、従業員に対する不正抑止の意識啓発として、実際の事例を活用した定期研修や、匿名通報制度(ホットライン)の整備・認知拡大も効果的です。
参照