
2025年6月25日 セキュリティ企業Rapid7は、Brother(ブラザー)製プリンターやスキャナー、ラベルプリンターにおける複数の脆弱性を公表しました。調査の結果、Brother製689モデルを含む、合計748モデル(FUJIFILM、リコー、東芝テック、コニカミノルタを含む5社)が影響を受けることが判明しています。
最も深刻な脆弱性「CVE-2024-51978」
この中で最も重大とされるのは、認証バイパス脆弱性「CVE-2024-51978」です。リモートの未認証攻撃者が、対象デバイスのシリアル番号を漏えいさせることで、初期設定されている管理者パスワードを生成できてしまうというものです。
これは製造工程における仕様に起因するもので、Brother社は「ファームウェアによる完全な修正は不可能」とし、製造プロセス自体の見直しを行うことで対応しています。
なお、シリアル番号は別の脆弱性「CVE-2024-51977」を悪用することでHTTP/HTTPS/IPP経由から漏えいさせることが可能で、他にもSNMPやPJLクエリから取得できる可能性があります。
他の脆弱性とその影響
以下の7件の脆弱性も併せて報告されています
脆弱性ID | 概要 | CVSSスコア |
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CVE-2024-51977 | シリアル番号などの情報漏えい | 5.3 |
CVE-2024-51979 | 認証後のスタックバッファオーバーフロー | 7.2 |
CVE-2024-51980 | 未認証で任意TCP接続を確立 | 5.3 |
CVE-2024-51981 | 未認証で任意HTTPリクエストを送信 | 5.3 |
CVE-2024-51982 | PJL経由でクラッシュ(DoS) | 7.5 |
CVE-2024-51983 | HTTP経由でクラッシュ(DoS) | 7.5 |
CVE-2024-51984 | 外部サービス(LDAP/FTP)のパスワード漏えい | 6.8 |
対象機器とベンダー内訳
調査対象となった748モデルは以下の通り
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Brother製プリンター・スキャナー・ラベルプリンター:689モデル
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富士フイルムビジネスイノベーション:46モデル
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リコー:5モデル
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東芝テック:2モデル
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コニカミノルタ:6モデル
なお、各ベンダーの公式アドバイザリには、影響を受ける具体的なモデルリストや、対策済みファームウェアの配布状況がまとめられています。
影響と対応状況
Brother社は、7件の脆弱性に対するファームウェア修正をすでに提供しており、公式サイト上で更新を呼びかけています。一方、CVE-2024-51978についてはワークアラウンドの提示にとどまり、完全修正には至っていません。
対象モデル例
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Brother:MFCシリーズ、DCPシリーズ、PTシリーズなど多数
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他社製品:FUJIFILM、リコー、東芝テック、コニカミノルタの一部モデル