EDR 製品 比較 9選 製品タイプや導入時の注意点、公的機関のガイドラインに学ぶ選び方も解説

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EDR製品比較9選 製品タイプや導入時の注意点も解説

【この記事でわかること】

EDR(Endpoint Detection & Response)製品9選を、提供方式・EPP/XDR機能・価格・対象規模・サポート体制の7軸で横断比較します。あわせて、米国CISA・英国NCSC・イスラエルの国家サイバー総局(INCD)という3つの公的機関がEDRをどう位置づけているかを踏まえ、ベンダーの営業資料だけに頼らない選定基準も整理しています。

サイバー攻撃の高度化・ランサムウェア被害の多発を受け、エンドポイントの「侵入後対処」を担うEDR製品の導入が急速に広まっています。一方で「製品が多すぎてどれを選べばいいかわからない」という声も多く聞かれます。本記事では主要9製品を比較表形式でまとめたうえで、公的機関のガイドラインという、ベンダーの外側にある基準から選定のポイントを解説します。

EDRとは(おさらい)

EDR(Endpoint Detection & Response)とは、PCやサーバーなどエンドポイントの挙動をリアルタイムで監視し、マルウェアの侵入・異常な動作を検知・分析・封じ込める製品です。従来のアンチウイルスが「侵入を防ぐ」のに対し、EDRは「侵入されることを前提に素早く対処する」という思想に基づいています。

近年のランサムウェアや標的型攻撃はパターンマッチングをすり抜けるゼロデイ・ファイルレス攻撃が主流となっており、EDRなしではインシデント発見が大幅に遅れるリスクがあります。詳細は「EDRとは 意味やウイルスソフトやUTMとの違いを解説」もご参照ください。

EDR・EPP・XDR・UTMの違い

セキュリティ用語が混同しやすいため、それぞれの役割とEDRとの関係性を整理しました。

製品カテゴリ 主な役割 守る範囲 EDRとの関係
EPP / NGAV マルウェアの侵入を「防ぐ」 エンドポイント EDRと組み合わせるのが標準
EDR 侵入後の挙動検知・封じ込め エンドポイント 本記事の対象
XDR 複数レイヤー横断の検知・対応 端末+NW+メール+クラウド EDRの上位互換・包含関係
UTM ネットワーク境界の防御 ネットワーク EDRと役割が異なり補完関係
MDR EDR/XDRの運用を外部委託 エンドポイント〜広域 EDRを含むマネージドサービス

なぜ米・英・イスラエルの政府機関はEDRを重要技術と位置づけているか

EDR比較の話に入る前に、「なぜ必要なのか」を公的機関の視点から掘り下げておきます。国内の比較記事にはあまり出てこない視点ですが、複数国の政府機関がEDRをどう位置づけているかを知ると、自社の要件定義がぐっと明確になります。

米国:ゼロトラスト義務化の中核にEDRがある

米国では、2021年の大統領令(EO 14028)を起点として、連邦機関にゼロトラストアーキテクチャへの移行が実質的に義務づけられました。「社内ネットワークでも安全ではない」という前提に立つゼロトラストの世界では、エンドポイントで「今、何が起きているか」を継続的に可視化する仕組みが不可欠になります。

米国政府が推進するCDM(Continuous Diagnostics and Mitigation:継続的診断・緩和)プログラムでは、EDRがエンドポイント可視化の中核技術として明確に位置づけられています。また、CISAとNISTが共同で策定したCross-Sector Cybersecurity Performance Goals(CPG、分野横断的サイバーセキュリティ実践目標)においても、EDR・SIEMのようなセキュリティツールの活用が、脅威の検知・対応能力を高めるための推奨事項として明記されています。2025年12月に公開されたCPG 2.0では、NIST CSF 2.0の6機能(統治・特定・防御・検知・対応・復旧)に沿って目標が再整理されており、EDRによる可視性確保は「検知」機能を支える基盤技術として引き続き重視されています。つまり米国政府の基準でいえば、EDRは「あると望ましい」ではなく、事実上「なければセキュリティ要件を満たせない」レベルの必須要素だといえます。

英国:「環境寄生型攻撃」への対策としてEDRを推奨

英国のNCSC(National Cyber Security Centre)は、組織のリスク許容度に応じた柔軟な枠組みであるCAF(Cyber Assessment Framework)を提供しています。

NCSCが特に警戒しているのが、OSに標準搭載されたPowerShellやWMIといった正規ツールを悪用する「Living off the Land(環境寄生型)」攻撃です。正規ツールを使うため、従来のシグネチャベースの検知ではまず引っかかりません。この種の攻撃を見つけ出すには、端末上の詳細な挙動データを収集し、通常と異なるパターンを炙り出す必要があります。NCSCがEDRを「プロアクティブな脅威ハンティングの基盤」として推奨しているのは、まさにこの理由からです。

イスラエル:国家サイバーセキュリティ戦略でEDR・XDRを重要技術に位置づけ

イスラエルの国家サイバー総局(INCD:Israel National Cyber Directorate)は2025年、2025年から2028年を対象とする国家サイバーセキュリティ戦略を発表しました。同戦略では、SOC(セキュリティオペレーションセンター)技術や脅威インテリジェンスプラットフォームと並び、EDR・XDRといった検知・対応ツールを、国家全体のサイバー防衛基盤を支える重要技術として明確に位置づけています。

あわせて注目したいのが、この戦略が中小企業・自治体・医療機関といった、従来十分なサイバー防御体制を持てていなかった民間セクターへの普及を重点課題に掲げている点です。INCDは、クラウドベースで導入が容易な検知・対応サービスやエンドポイント保護製品の普及を通じて、サイバー防御を「民主化」する方針を打ち出しています。これは、限られた予算・人員でEDR導入を検討する日本の中小企業にとっても、参考になる視点です。国家全体でセキュリティ水準を底上げするという発想は、自社単体の投資判断を超えて、取引先・サプライチェーン全体の防御力を左右するという意味でも示唆に富みます。

米・英・イスラエルのアプローチはそれぞれ異なりますが、結論は共通しています。「侵入を防ぐ」だけでは不十分であり、「侵入後にいかに速く検知し、封じ込めるか」がセキュリティの勝負所になった、という認識です。EDRへの投資は、この前提に立った合理的な判断だといえます。

EDR導入のメリット・デメリット

メリット

  • 未知の脅威への対応:既知パターンに依存しない振る舞い検知により、ゼロデイ・ファイルレス攻撃を検知できます。
  • 迅速な封じ込め:感染端末をネットワークから隔離し、横展開による被害拡大を防止します。
  • インシデント調査の効率化:アクティビティログの記録によりフォレンジック調査(感染経路の特定)が容易になります。
  • 規制対応への寄与:前述のCISA CPGやNCSCのCAFのように、政府機関・金融機関向けのセキュリティガイドラインでEDR導入が求められるケースが増えています。

デメリット・注意点

  • 運用リソースが必要:日々のアラートへの対応・調査を行う担当者が必要です。リソース不足の場合はMDR(運用代行)を検討してください。
  • コストがかかる:端末数・ユーザー数に比例してコストが増加します。EPP・XDRとの統合コストも考慮が必要です。
  • EDR単体では侵入は防げない:EDRは事後対応に特化しているため、EPP/NGAVとの併用が前提となります。

9製品 横断比較表

主要9製品を7つの評価軸で横断比較しました。詳細は各製品のセクションをご参照ください。

製品名 提供方式 EPP機能 XDR機能 MDR/運用代行 料金の目安 対象規模
Microsoft Defender for Business(Microsoft) クラウド ✓ OS標準 △ 別途 449円/月・1ユーザー 中小企業
Elements Endpoint Protection(WithSecure) クラウド 要問合せ 中小〜大
ESET PROTECT MDR(ESET) クラウド/オンプレ 要問合せ 中小〜大
LANSCOPE サイバープロテクション(モトックス) クラウド 要問合せ 中小〜大
SKYSEA Client View + FFRI yarai(Sky / FFRIセキュリティ) クラウド/オンプレ 要問合せ 中小〜大
SentinelOne XDR(SentinelOne) クラウド 要問合せ(3段階) 中〜大企業
Symantec Endpoint Security(Broadcom) ハイブリッド 要問合せ 中〜大企業
Trend Vision One – Endpoint Security(トレンドマイクロ) クラウド/オンプレ 要問合せ 中〜大企業
EISS(セキュアイノベーション) クラウド △ 定期診断 1,800円/年・1台 中小企業

※「要問合せ」の製品はエンドポイント数・機能構成・サポートレベルによって大きく変動します。複数ベンダーに見積もりを依頼し、3年間の総保有コスト(TCO)で比較することを推奨します。

各製品の詳細・特徴

Microsoft Defender for Business

Microsoftが提供するEDRソリューション。第三者テストでの高評価が続き、信頼性は業界トップクラスです。OS標準搭載のMicrosoft Defender Antivirusとの組み合わせでEPP機能もカバーできます。Microsoft 365 Business Premiumに含まれるため、すでに同スイートを利用している企業はコスト追加なしで導入可能です。

  • 提供方式:クラウド
  • EPP/XDR機能:EPP:OS標準搭載 / XDR:Microsoft Sentinel(別途)
  • 料金:449円/月・1ユーザー(最大5デバイス)
  • こんな企業に:Microsoft 365利用中の中小企業、コスト重視の初期導入

参考:Microsoft Defender for Business|Microsoft

Elements Endpoint Protection

WithSecureが提供する、ブラウザから導入可能なエンドポイント保護プラットフォームです。EPP・EDR・脆弱性管理が単一プラットフォームに統合されており、2,500以上のソフトウェアに対応したパッチ管理機能も備えます。WithSecureのMDRサービスとの組み合わせで運用代行も可能です。

  • 提供方式:クラウド
  • EPP/XDR機能:EPP:✓ / XDR:一部機能あり
  • 料金:要問合せ
  • こんな企業に:EPP・パッチ管理・EDRをまとめて一元管理したい企業

参考:Elements Endpoint Protection|WithSecure

ESET PROTECT MDR

EDR・XDR・デバイス保護・ディスク暗号化までを包括的にカバーするセキュリティプラットフォームです。必要な機能モジュールを選択して購入できる柔軟な構成が特徴。サンドボックス技術により未知の脅威にも対応し、ESETのMDRサービスで24時間365日の運用代行が可能です。

  • 提供方式:クラウド / オンプレミス
  • EPP/XDR機能:EPP:✓ / XDR:✓
  • 料金:要問合せ(モジュール選択式)
  • こんな企業に:オンプレ環境が必要な企業、段階的にセキュリティを拡張したい企業

参考:ESET PROTECT MDR|ESET

LANSCOPE サイバープロテクション

EDRとEPPが統合された国産セキュリティ製品です。2023年のテストではマルウェア検知率99%を記録しています。AIによる予測脅威技術でマルウェアが展開される前に検知・隔離が可能です。日本語サポートが充実しており、国内企業の導入実績も豊富です。

  • 提供方式:クラウド
  • EPP/XDR機能:EPP:✓ / XDR:—
  • 料金:要問合せ
  • こんな企業に:日本語サポートを重視する企業、国産製品を求める中小〜中堅企業

参考:LANSCOPE サイバープロテクション

SKYSEA Client View(FFRI yarai連携)

IT資産管理・ログ管理ソフト「SKYSEA Client View」に、オプションでEDR製品「FFRI yarai」を連携させる構成です。FFRIが検知したマルウェアをSKYSEAが自動隔離します。資産管理・ログ管理からセキュリティ対策までを一元管理したい企業に向いています。

  • 提供方式:クラウド / オンプレミス
  • EPP/XDR機能:EPP:— / XDR:—
  • 料金:要問合せ
  • こんな企業に:資産管理・ログ管理も合わせて一元化したい企業、運用のシンプルさを重視

参考:SKYSEA Client View|サイバー攻撃対策

SentinelOne XDR

AIによるふるまい検知で業界最高水準の検知精度を誇るXDR製品です。3段階のパッケージ構成で企業の要件に合わせた選択が可能です。過検知を防ぐホワイトリスト機能、24時間365日の問い合わせ対応、エンドポイントの自動修復(ロールバック)機能など、サポート面での強みが際立ちます。後述するMITRE ATT&CK評価でも継続的に高い評価を得ている製品の一つです。

  • 提供方式:クラウド
  • EPP/XDR機能:EPP:✓ / XDR:✓
  • 料金:要問合せ(3段階のパッケージ)
  • こんな企業に:高精度な検知・自動対応を求める中〜大企業、24時間サポートが必要な環境

参考:SentinelOne|エンタープライズ セキュリティ AI プラットフォーム

Symantec Endpoint Security

PC・Mac・スマートフォンを含むあらゆるOSに対応した統合エンドポイントセキュリティです。機械学習による高度な分析に加え、エンドポイント内にデコイ(囮)ファイルを配置して攻撃者を誘い込む独自の欺瞞技術が特徴です。クラウド・オンプレミス・ハイブリッドすべての環境に対応します。

  • 提供方式:クラウド / オンプレミス / ハイブリッド
  • EPP/XDR機能:EPP:✓ / XDR:✓
  • 料金:要問合せ
  • こんな企業に:マルチOS環境・オンプレ混在環境の大規模組織、高度な標的型攻撃対策が必要な企業

参考:Symantec Endpoint Security

Trend Vision One – Endpoint Security

EPP・EDR・XDRが一体化した統合プラットフォームです。PC・クラウド・サーバーを問わずあらゆるエンドポイントを一元監視できます。ポリシー管理から隔離・駆除までを単一コンソールで完結でき、セキュリティ運用の効率化に貢献します。国内シェアが高く、日本語サポート体制も充実しています。

  • 提供方式:クラウド / オンプレミス
  • EPP/XDR機能:EPP:✓ / XDR:✓
  • 料金:要問合せ
  • こんな企業に:複数拠点・ハイブリッドクラウド環境、国内実績を重視する中〜大企業

参考:Trend Vision One™ – Endpoint Security|トレンドマイクロ

EISS(アイズ)

株式会社セキュアイノベーションが提供する中堅・中小企業専門のEDR製品です。年額1,800円/台という低コストが最大の特徴で、週1回の定期診断により侵害の早期発見を支援します。90日間のログ保管でインシデント発生時のフォレンジック調査にも対応しています。セキュリティ予算が限られた企業の第一歩として最適です。

  • 提供方式:クラウド
  • EPP/XDR機能:EPP:— / XDR:—
  • 料金:1,800円/年・1台(業界最安水準)
  • こんな企業に:セキュリティ予算が限られた中小企業、EDR初導入を低コストで始めたい場合

参考:EISS(アイズ)|セキュアイノベーション

企業規模・運用体制別おすすめ

  • 中小企業(専任担当者なし) → 『EISS』または『Microsoft Defender for Business』。低コスト・低運用負荷で始められる製品を優先。EISSは年額1,800円/台、Defenderは既存のM365環境に追加しやすいのが魅力です。前述のイスラエルINCDの戦略が示すように、中小企業こそ手ごろな価格帯のEDRから着手することが、国際的にも推奨される流れになっています。

  • 専任担当者あり・運用を自社で完結 → 『SentinelOne XDR』または『ESET PROTECT MDR』。高精度なふるまい検知と充実したコンソールを持つ製品。ログ・アラートを自社で分析できるリソースがある場合に最大効果を発揮します。

  • 大企業・複数拠点・ハイブリッドクラウド → 『Trend Vision One』または『Symantec Endpoint Security』。XDR統合・マルチOS対応・オンプレハイブリッド対応が充実した製品。国内拠点が多い場合はトレンドマイクロの国内サポート体制が強みになります。

  • MDR・運用代行を活用したい → 『ESET PROTECT MDR』または『Elements Endpoint Protection』。製品にMDRサービスが付属またはオプション提供されており、セキュリティ監視を外部に委託できます。運用リソースが足りない企業に最適です。

公的機関の基準から導く、EDR選定の5つのポイント

米国CISAのCDM要件や英国NCSCのCAF要件を踏まえると、EDR製品の比較で押さえるべきポイントは5つに集約されます。ベンダーの資料を読むとき、このチェックリストを手元に置いておくと判断がブレにくくなります。

①テレメトリの収集範囲と保持期間

まず確認すべきは、EDRがどこまで詳細なログ(テレメトリ)を収集できるかです。プロセスの生成、ファイル操作、レジストリ変更、DNSクエリ、ネットワーク接続といったイベントを網羅的に取れる製品と、一部しか取れない製品では、攻撃の全体像を追跡する際の解像度がまるで違います。

もう一つ見落としがちなのが、テレメトリの保持期間です。高度な攻撃者は数週間から数カ月にわたって潜伏します。過去30日分しか遡れない製品と90日以上保持できる製品では、フォレンジック調査の実効性に大きな差が出ます。クラウド上のデータ保持期間と、追加費用の有無は必ず確認してください。

②振る舞い分析の検知精度-MITRE ATT&CK評価を読む

カタログには「AIで検知」「振る舞い分析搭載」と書いてある製品がほとんどです。問題は、その実力をどう客観的に評価するかです。

ここで活用したいのが、MITRE ATT&CKフレームワークに基づく第三者評価テスト(MITRE Engenuity ATT&CK Evaluations)です。実在の攻撃グループの手法を再現して各製品の検知率を測定するテストで、ベンダーの自己申告ではない客観的なデータが得られます。結果は公開されているので、候補製品の検知率と誤検知率を横並びで比較できます。評価結果を見る際は「検知数」だけでなく「検知のタイプ(Telemetry / General / Tactic / Technique)」にも注目しましょう。Techniqueレベルで検知できている製品ほど、攻撃手法を具体的に特定できるため、調査・対応のスピードに直結します。

③自動レスポンス機能の充実度

ランサムウェアがファイルを暗号化するスピードは、人間が管理画面を開いて判断する速度をはるかに超えています。確認すべきは、端末のネットワーク隔離(アイソレーション)、悪意あるプロセスの強制終了、マルウェアファイルの自動削除といった初動対応を、どこまで自動で実行できるかです。さらに、一部の製品にはランサムウェア被害を暗号化前の状態にロールバック(巻き戻し)する機能を持つものもあり、事業継続の観点で非常に強力な選択肢になります。

④既存のIT環境・セキュリティツールとの統合性

EDRは単体で完結する製品ではありません。Active DirectoryやAzure AD(Entra ID)などの認証基盤、SIEMやSOARといった統合管理ツールとどこまでシームレスに連携できるかが、実運用の質を左右します。理想的なのは「EDRが脅威を検知したら、連携するID管理システムがその端末からのクラウドサービスへのアクセスを自動で遮断する」といった動的な制御です。APIの豊富さや、主要なSIEM製品との連携実績は必ず確認するポイントです。

⑤運用負荷-エージェントの軽さと現場への影響

どれほど検知精度が高くても、エージェントが重くてPCの動作が目に見えて遅くなるなら、現場からの不満で運用が破綻します。導入前のPoC(概念実証)では、平常時のCPU・メモリ消費、フルスキャン時の負荷、ネットワーク帯域への影響を必ず計測しましょう。オフライン環境での動作可否や、レガシーOS(Windows Server 2012など)への対応状況も、自社の端末構成に応じて確認が必要です。

選定ポイント 確認すべき具体項目
①テレメトリ 収集対象イベントの網羅性、クラウドへのデータ保持期間(30日/90日/無制限)、追加費用の有無
②検知精度 MITRE ATT&CK評価の検知率・検知タイプ、振る舞い分析の方式(AI/ML/ルールベース)、誤検知率
③自動レスポンス 端末隔離・プロセス停止・ファイル削除の自動化範囲、ランサムウェアのロールバック機能
④統合性 IAM/AD連携、SIEM/SOARとの統合、APIの種類と数、導入済みセキュリティツールとの相性
⑤運用負荷 エージェントのCPU/メモリ消費、レガシーOS対応、オフライン時の動作、PoCでの実測値

自社に合ったEDRの選び方の詳細は「EDRのおすすめ製品と選び方のポイント」もあわせてご参照ください。

導入後に待ち受ける落とし穴「アラートファティーグ」

機能面で満足のいくEDRを導入できたとしても、安心するのはまだ早いところです。多くの組織が導入後に直面するのが「アラートファティーグ(警告疲れ)」の問題です。

EDRはエンドポイントの挙動を詳細に監視するがゆえに、日々大量のアラートを生成します。その中には優先度の低いものや誤検知も大量に含まれており、対応すべき本物のインシデントがノイズに埋もれてしまいます。米国政府機関の監査報告でも、EDRが生成するデータを分析するための専門人材の慢性的な不足が繰り返し指摘されています。

端的にいえば、「良いEDRを買ったが、誰がアラートを見るのか」という運用の問題が、技術選定と同じかそれ以上に重要だということです。EDRの導入稟議で「月額○○円の製品を△台に導入」というコスト試算だけを出して承認を取るケースがありますが、運用に必要な人的リソースのコストが抜け落ちていることが少なくありません。「誰がアラートを見て、誰が判断するのか」を導入前に必ず設計してください。

SOCを持たない企業の現実解-MDRサービスの活用

24時間365日体制でEDRのアラートを監視し、脅威の分析と初動対応を行える自社SOC(Security Operation Center)を持つ企業は、現実にはごく一部です。中堅・中小企業はもちろん、大企業でもセキュリティアナリストの採用に苦戦しているのが実情でしょう。

そこで有力な選択肢になるのが、MDR(Managed Detection and Response)サービスです。

MDRは、EDRの監視・分析・初動対応をベンダーの専門チームにアウトソースするサービスで、自社にSOCがなくても大企業並みの検知・対応力を確保できます。前述のイスラエルINCDの国家戦略でも、中小企業や医療機関へのサイバー防御普及策の一環として、マネージド型の検知・対応サービスの活用が重視されている点は、日本の中堅・中小企業にとっても参考になります。

MDRの品質はベンダーによってかなり差があります。以下の観点で比較することをおすすめします。

確認項目 チェック内容
監視体制 24/365の常時監視か、営業時間内限定か
対応範囲 アラート通知のみか、端末隔離などの初動対応まで含むか
脅威ハンティング アラートに上がっていない潜在的な脅威を能動的に探索するサービスがあるか
日本語サポート インシデント発生時のやり取りが日本語で完結するか
レポーティング 月次レポートの粒度、経営層への報告に使えるレベルの内容か

EDRの選定時に、そのベンダーが質の高いMDRサービスを提供しているかどうかは、とくに自社SOCを持たない企業にとっては製品性能と同等以上に重要な判断基準です。

導入時の注意点・導入ポイント

要件定義・環境確認

  • 目的の明確化:「何を解決したいか」を明文化します。検知精度強化・インシデント対応効率化・規制対応など目的によって必要な機能が変わります。
  • 環境の棚卸し:管理対象端末の台数・OS・ネットワーク構成を整理し、導入予定製品の動作要件と照合します。
  • 既存製品との整合性:既にEPPやUTMを導入している場合、連携・競合の有無を確認します。

運用ポリシーの策定

EDRを導入しても運用方針が定まっていないと、アラートに対応できず実効性がなくなります。最低限以下の3点を事前に決めてください。

  • 管理運用責任者:アラートを一次受けする担当者と、エスカレーション先を決定します。
  • 収集データの取り扱い方針:個人情報・業務データのログ収集範囲と保管期間を明確にします。
  • インシデント対応フロー:検知→トリアージ→隔離→報告→復旧までの手順をフロー化しておきます。

人材育成・教育とPoCの推奨

EDRが発するアラートを適切に判断できる人材が必要です。ベンダーの研修プログラムの活用や、インシデント対応訓練を定期実施しましょう。担当者が確保できない場合はMDRサービスへの委託が有効です。

また、本番導入前には一部の端末でPoC(概念実証・トライアル)を実施し、自社環境での誤検知率や管理画面の操作性を確認することを強く推奨します。多くのベンダーが無料評価ライセンスを提供しています。導入直後の2〜4週間はモニタリングモードで運用し、アラートの傾向と誤検知の発生パターンを把握してからポリシーを調整することも重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. EDRとEPP・NGAVの違いは何ですか?

EPP・NGAVはマルウェアの侵入を「防ぐ」製品です。EDRは侵入されることを前提に、侵入後の挙動監視・検知・封じ込めを行います。侵入を完全に防ぐことは困難なため、EPPとEDRを組み合わせるのが標準的な構成です。

Q. EDRとXDRの違いは何ですか?

EDRはエンドポイント(PC・サーバー)に特化した製品ですが、XDRはエンドポイントに加えてネットワーク・メール・クラウドなど複数のレイヤーを横断して分析します。XDRはEDRの上位互換にあたります。

Q. 中小企業でもEDRは必要ですか?

はい、必要です。ランサムウェア被害はセキュリティ体制が手薄な中小企業に集中する傾向があります。イスラエルの国家サイバー総局(INCD)も、中小企業・自治体・医療機関へのサイバー防御普及を国家戦略上の重点課題に位置づけており、手ごろな価格帯のEDRから始めることは国際的にも推奨される流れです。EISS(年額1,800円/台)やMicrosoft Defender for Business(449円/月)など、低コストで導入できる製品から始めることをおすすめします。

Q. EDRの導入コストはどのくらいですか?

廉価帯ではEISSが年額1,800円/台、Microsoft Defender for Businessが449円/月・1ユーザーから利用できます。エンタープライズ向け製品は端末数・サポートレベルによって変動するため要問合せとなります。導入コストだけでなく3年間の運用コスト(TCO)で比較することが重要です。

Q. EDR製品を選ぶときに最も重要なポイントは何ですか?

米英の政府ガイドラインを踏まえると、①自社の運用体制(専任担当者の有無・MDR利用意向)、②テレメトリの収集範囲と保持期間、③振る舞い分析の検知精度(MITRE ATT&CK評価で客観検証)、④自動レスポンス機能、⑤既存環境との統合性、の5点が主要な判断軸です。運用リソースが乏しい場合はMDRサービス付き製品を優先検討してください。

Q. EDRとUTMは組み合わせる必要がありますか?

UTMはネットワーク境界での防御を担い、EDRはエンドポイントの侵入後対処を担います。守る範囲が異なるため、多層防御の観点から両者を組み合わせることが推奨されます。

まとめ

EDR製品は機能・コスト・運用体制への要求が製品ごとに大きく異なります。自社の課題・環境・予算を整理した上で複数製品のPoCを実施することが、導入成功への近道です。

  • EDRは侵入を前提とした検知・封じ込め製品であり、EPP/NGAVとの併用が基本
  • 米国CISA(CDM・CPG)、英国NCSC(CAF)、イスラエルINCD(国家サイバーセキュリティ戦略2025-2028)という3つの公的機関がいずれもEDR・XDRを重要な検知・対応技術と位置づけている
  • XDRはEDRの上位概念で、ネットワーク・クラウドを含む広域監視が可能
  • コスト重視の中小企業には『EISS』(年額1,800円/台)や『Microsoft Defender for Business』(449円/月)が有力候補
  • 運用リソースが不足している場合は『ESET PROTECT MDR』や『Elements Endpoint Protection』などMDRサービス付き製品を優先検討する
  • 大規模・ハイブリッド環境には『Trend Vision One』または『Symantec Endpoint Security』が適している
  • 製品選定では、テレメトリの収集範囲・MITRE ATT&CK評価による検知精度・自動レスポンス機能・既存環境との統合性・運用負荷の5軸で比較する
  • 導入前のPoC実施と、3年間のTCOによるコスト比較、そして導入後のアラート運用体制の設計が製品選定と同等に重要

関連記事:EDRとは 意味やウイルスソフトやUTMとの違いを解説ESETのEDRってどうなの?Microsoft Defender for EndpointとはEDR 製品の一覧

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参考