
サイバー攻撃が日々進化する中、企業の情報資産を守るためには、従来のアンチウイルスでは不十分になりつつあります。特に、標的型攻撃や未知のマルウェアへの対応には、より高度なエンドポイントセキュリティ対策が求められています。こうした背景から、EDR製品の導入が国内外で加速しています。
目次
EDR(Endpoint Detection and Response)とは?
EDRとは、PCやサーバーなどの端末(エンドポイント)上で発生するさまざまなイベントを記録・分析し、脅威をリアルタイムで検出・対応する仕組みです。単なるウイルス対策ではなく、「攻撃を前提とした備え」として、検知、調査、対応までを一元的にサポートすることが大きな特長です。
本記事では、企業のセキュリティ担当者に向けて、国内外の代表的なEDR製品を紹介します。それぞれの特徴や導入事例、注意点について、実務に役立つ視点から解説していきます。
CrowdStrike Falcon
クラウドストライク社が提供するCrowdStrike Falconは、クラウドネイティブな設計が特徴のEDR製品です。軽量なエージェントで端末への負荷を抑えつつ、高度なAI技術によって未知の脅威を検出します。導入実績は世界中に広がっており、日本国内でも大手企業を中心に採用が進んでいます。
強み:
- AIと機械学習による未知のマルウェア検出
- クラウドベースの運用でスケーラビリティに優れる
- マネージド型の脅威ハンティングサービス「OverWatch」
導入に向いている企業:
- グローバルに拠点を持つ企業
- 専門的なセキュリティ運用が可能な体制を持つ組織
Microsoft Defender for Endpoint
Microsoft製品との親和性が高く、Microsoft 365を導入している企業にとって自然な選択肢です。Windows OSとの深い統合により、エージェントの展開や管理もスムーズ。特に、既にMicrosoftのエンタープライズライセンスを持っている企業では、追加コストを抑えて利用できるケースも多くあります。
強み:
- OSレベルでの詳細な可視化と制御
- 自動調査と修復による運用負荷の軽減
- Microsoftの他製品とのシームレスな連携(XDR)
注意点:
- macOSやLinuxでは一部機能制限あり
- ライセンス体系がやや複雑
SentinelOne
オフライン環境でも高い検出能力を発揮するAI搭載のEDR。特筆すべきは感染前の状態に復元できる「ロールバック機能」。中堅企業など、限られたセキュリティリソースで迅速な復旧が求められる環境で力を発揮します。
強み:
- 自律型AIによるリアルタイム対処
- 高度な自動化と復旧能力
- 軽量なエージェント設計
導入に適した企業:
- 社内にSOC(セキュリティ運用センター)を持たない企業
- 突発的なインシデントに即応したい企業
Trend Micro Apex One
国内での実績とサポート体制に定評がある製品。日本語による対応や既存のウイルス対策ソリューションとの統合性の高さから、国内企業にとっては安心感のある選択肢です。
強み:
- 日本語サポートと国内事例が豊富
- 多層防御による安定した保護
- ネットワーク監視製品との連携も可能
注意点:
- 高度な脅威ハンティング機能は限定的
Carbon Black Cloud(VMware)
リアルタイムの挙動監視を軸にしたEDRで、特にファイルレスマルウェアやスクリプトベースの攻撃に強みがあります。VMware環境との統合もスムーズ。
強み:
- 高精度な挙動分析
- EDRとNGAVの統合管理
- 豊富な可視化ツールとリモートレスポンス
注意点:
- クラウドベースの運用には一定の学習が必要
まとめ
EDRの選定では、自社のIT環境や人的リソースに応じた「現実的な運用設計」が重要です。どの製品も一長一短があり、導入するだけで全てが解決するわけではありません。検知力だけでなく、対応のしやすさ、UIの使いやすさ、そして日本語サポートの有無など、実務に即した視点で比較検討することをおすすめします。
また、近年ではEDRの枠を超えて、ネットワークやクラウドと連携したXDR(Extended Detection and Response)への進化も進んでいます。将来的な拡張性も見据えた製品選びが、セキュリティ投資の成功の鍵となるでしょう。