米Metaは2026年7月7日、画像生成に特化した生成AIモデル「Muse Image」を発表し、Instagram・Meta AI・WhatsAppへの展開を始めました。この機能の最大の特徴は、利用者が自分のアカウントを@メンションするだけで、他人が自分の公開投稿画像をAI画像合成の素材として利用できてしまう点にあります。しかも、無断使用を拒否する設定に自分で変更しない限り、すべての公開アカウントが自動的に対象となる「オプトアウト方式」が採用されており、著名人を含む多くの利用者から反発を招いています。
サマリー
- Metaは2026年7月7日、Meta Superintelligence Labが開発した画像生成AIモデル「Muse Image」を発表し、Instagram・Meta AI・WhatsAppで展開を開始した
- Muse Imageの特徴は、プロンプト内で他の利用者のInstagramアカウントを@メンションするだけで、そのアカウントの公開投稿写真をAI画像生成の参照素材として利用できる点にある
- 現時点で公開アカウントに設定されている成人利用者は、初期設定でこの機能の対象に自動的に組み込まれており、自ら設定を変更しない限り拒否できない「オプトアウト方式」が採用されている
- 非公開アカウントおよび18歳未満の利用者のアカウントは自動的に対象外とされている
- 自分の投稿画像が他人によってAI画像生成に利用されても、Instagram側から本人へ通知が行われることはない
- 設定変更(オプトアウト)は今後の新規生成を防ぐのみで、すでに生成済みのAI画像は設定変更後も削除されず、そのまま残り続ける
- 現時点では主に米国で先行展開されており、EU圏内の一部利用者からもすでに初期設定でオンになっていたとの報告があり、GDPR等のプライバシー規制との関係が今後の焦点になるとみられる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年7月7日 |
| 機能名 | Muse Image(Meta Superintelligence Lab開発) |
| 展開先 | Instagram、Meta AI、WhatsApp(Messenger・Facebookは今後展開予定) |
| 特徴的な機能 | 他人のアカウントを@メンションし、その公開投稿写真をAI画像生成の素材として利用可能 |
| 初期設定 | 公開アカウントは自動的に対象(オプトアウト方式) |
| 自動的に対象外となる条件 | 非公開アカウント、18歳未満の利用者のアカウント |
| 利用時の本人への通知 | なし |
| オプトアウトの効果範囲 | 将来の生成のみを防止、既存の生成済み画像は削除されない |
| 展開地域 | 現時点で主に米国が先行(他地域への展開は未確定) |
目次
何が起きたか-Muse Imageの機能と初期設定
Metaが発表したMuse Imageは、文章による指示(プロンプト)から画像を生成するテキスト・トゥ・イメージ型のAIモデルですが、他の画像生成AIと一線を画すのが、他人のアカウントを参照素材として直接利用できる点です。
利用者がMeta AIのアプリやチャット上でプロンプトを作成する際、対象となる相手のInstagramアカウントを@メンションすると、そのアカウントの公開投稿写真がAIによる画像合成の元データとして使われます。Meta自身は、友人のプロフィールを参照して誕生日カードをデザインしたり、特定の人物の姿にアクセサリーを合成したり、有名な観光地を背景に合成したりといった活用例を紹介しています。
問題視されているのは、この機能が公開アカウントに対して初期設定でオンになっている点です。Instagramで公開アカウントを利用している成人の場合、自分の投稿写真は本人が特別な操作をしない限り、他の利用者による画像生成の素材として自動的に利用可能な状態に置かれています。非公開アカウントと18歳未満の利用者のアカウントは自動的に対象から除外されていますが、それ以外の公開アカウントは基本的にすべて対象です。
同意なく進むオプトアウト方式-通知もなく、遡って削除もされない
この仕組みが強い批判を集めている理由の一つが、同意の取り方そのものにあります。海外メディアの報道によれば、自分の投稿写真が他人によってAI画像生成に利用されたとしても、Instagram側から本人へ通知が行われることはないとされています。つまり、自分の写真がいつ、誰によって、どのような画像に加工されたのかを、被写体となった本人が知る手段はありません。
さらに、後から利用を拒否する設定(オプトアウト)に変更した場合でも、その効果は将来の新規生成を防ぐことに限られます。設定変更より前にすでに生成されていたAI画像については、そのまま削除されずに残り続けるとされています。設定を見つけて無効化したとしても、それまでに作られてしまった画像を取り戻すことはできないということです。
悪用のリスク-なりすまし・ハラスメント・非同意の画像編集
セキュリティ関連メディアからは、この機能が持つ悪用の可能性についても懸念が示されています。公開されているSNSの写真は、これまでもなりすましや本人確認突破を狙った偽造画像の素材として攻撃者に悪用されてきました。
当サイトでも以前、生成AIによって身元確認書類の偽造が容易になりKYCが実質的に終焉を迎えつつある状況や、MetaのAIアシスタントを悪用しInstagramアカウントが乗っ取られた事案を取り上げましたが、こうした流れの中で、公開されている本人の写真を誰もが正規の機能として画像生成の素材にできる仕組みが提供されることは、合成画像を作る際の技術的なハードルをさらに一段引き下げる効果を持ちかねません。
国際的な人権・プライバシー団体であるPrivacy Internationalは、BBCの取材に対し、この機能はAI企業がインターネット上の人々の写真や個人データを、明確な許可なく再利用できるコンテンツとして扱う姿勢を強めていることを示すものだと指摘しています。
当サイトでも以前、Xが AIのGrokによる実在人物のビキニ化・水着化編集を規制すると発表した事案を取り上げましたが、同じく実在の人物の画像を無断でAI編集の対象にできてしまうリスクという点で、共通する構図があります。同意のない画像編集は、ハラスメントや誹謗中傷、なりすましといった行為に直結しうるだけに、プラットフォーム側がどこまで悪用対策を講じられるかが今後問われることになります。
オプトアウトの方法
現時点でこの機能の対象から外れたい場合、Instagramアプリ上で個別に設定を変更する必要があります。
具体的には、プロフィール画面右上のメニューから設定・アクティビティを開き、共有と再利用の項目を選択したうえで、Instagram上およびMetaのAI機能による自分のコンテンツの再利用を許可する設定をオフにします。アプリのバージョンによっては、投稿・リール・オリジナル音声など、複数の項目を個別に無効化する必要がある場合もあるとされています。なお、この設定変更はあくまで今後の新規生成を防ぐものであり、前述の通り既存の生成済み画像には効果が及ばない点には留意してください。より確実に自分の写真を保護したい場合は、アカウント自体を非公開に切り替えることが、現時点でMetaが提供する中では最も確実な対策とされています。
原因
Metaがこうしたオプトアウト方式を採用する背景には、同社がAI関連のデータ利用において一貫して踏襲してきた姿勢があるとの指摘があります。海外メディアの報道では、Metaが欧州の利用者データをAIの学習に利用する際にも、GDPR上の正当な利益という法的根拠に基づくオプトアウト方式を採用しており、この立場についてはプライバシー保護団体のNOYBがすでに異議を申し立てているとされています。今回のMuse Imageを巡る対応も、こうした従来からの方針の延長線上にあるとみることができます。
出典
- Meta「インスタグラム」画像、他人がAIで合成可能 拒否しないと勝手に素材化 – 日本経済新聞
- Instagram users: Here’s how to stop Meta’s AI from using your photos – TechCrunch
- Here’s how to block Meta from using your Instagram pictures for its AI – Engadget
- Meta AIアシスタントに「メールアドレスを変えて」と頼むだけで他人のInstagramを乗っ取れた – セキュリティ対策Lab
- X、AI Grokのビキニ化や水着化を規制すると発表 – セキュリティ対策Lab
- 生成AIの進化で身元確認書類の偽造が容易に、KYCの終焉 – セキュリティ対策Lab








