いわき信用組合に業務改善命令、長期にわたる隠蔽と不正融資を問題視-金融庁が厳重処分

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いわき信用組合に業務改善命令、長期にわたる隠蔽と不正融資を問題視-金融庁が厳重処分

金融庁は2025年5月29日、福島県いわき市に本店を置く「いわき信用組合」に対し、重大なガバナンス不備およびコンプライアンス違反を理由に、東北財務局を通じて業務改善命令を発出しました。本件は協同組合による金融事業に関する法律および銀行法に基づく処分であり、信用組合の組織統治への強い警鐘となります。

背景:長期にわたる不正と隠蔽

本件のきっかけは、一連の不正融資と横領事件です。調査によれば、旧経営陣(特に前会長)主導のもと、少なくとも10年以上前から、幹部職員を含む組織的な関与のもと、実在する預金者の名義で無断に口座を開設し、そこに数百万円〜数千万円の融資を行うという手口が横行していました。

本来存在しない借入にもかかわらず、これらの資金は経営難に陥った特定の大口融資先の返済肩代わり資金(いわゆる“B資金”)として流用され、不良債権の表面化を避ける目的があったとみられます。

一時的には返済に充てられていたものの、やがて新たな偽造口座と融資を繰り返す“自転車操業”のような構造へと発展していきました。

さらに、これらの融資に関する事実を長期間にわたり隠蔽し、現役の理事を含む関係者が自己査定基準に抵触しないよう操作していたことが明らかになっています。

組織ぐるみのコンプライアンス不在

調査では、法令遵守よりも「上意下達」を優先する企業風土が問題視されました。特に、以下のような組織的欠陥が指摘されています。

  • 経営監視機能が不全(理事会・監事の機能不発揮)

  • 不祥事件の隠蔽体質(事実と異なる報告や調査の虚偽報告)

  • 内部統制の形骸化(相互牽制の不在、印鑑証明省略などのルール逸脱)

  • 内部監査の無力化(融資関連を対象外とし、監査が予告的に実施されていた)

金融庁の指示内容:組織改革と信頼回復が急務

東北財務局は以下の項目について、業務改善命令を出しています。

  1. 経営責任の明確化と責任追及

  2. 経営監視機能の確立(第三者検証含む)

  3. 組織全体のコンプライアンス意識の醸成

  4. 内部管理態勢の確立(事務・融資管理、相互牽制)

  5. 内部監査機能の強化

  6. 上記を踏まえた特定震災特例経営強化計画の見直し

  7. 不正に開設された口座名義人への丁寧な説明

  8. 第三者委員会報告を踏まえた真相究明の徹底

改善計画の提出期限は2025年6月30日まで、進捗は3ヶ月ごとに報告する必要があります(初回は同年9月末基準)。

情報システム部門への示唆

本件は、紙の書類や口座管理だけでなく、内部統制と監査プロセスにおけるIT活用の必要性も浮き彫りにしています。情報システム部門としては以下の対応が求められます。

  • アクセス管理とログ記録の自動化:不正アクセスや帳簿外取引の検出を強化。

  • 内部統制支援ツールの導入:電子ワークフローや承認履歴の可視化によるガバナンス支援。

  • 監査支援システムの刷新:抜き打ち監査やAIによる異常検知の導入で監査機能の強化。

参照

https://lfb.mof.go.jp/tohoku/b2_kinyu/01_kinyukankei/54_iwaki.html