福島県いわき市に本店を構えるいわき信用組合(以下、いわき信組)で、顧客名義を無断使用した口座開設と、そこに対する架空融資による資金流用が10年以上にわたり組織的に繰り返されていたことが明らかになりました。
この不正は、震災支援によって注入された公的資金の後処理を装う形で一部帳簿上は整理された可能性もあり、構造的な経営不正の実態が疑われています。すでに元会長への刑事告発状が提出されており、関係者に衝撃が広がっています。
2025年5月31日追記:いわき信金のガバナンス崩壊-証拠隠滅と組織ぐるみの隠蔽が招いた行政処分
目次
10年以上前から組織的に繰り返されていた「偽名義・架空融資」
取材によれば、いわき信組では少なくとも10年以上前から、幹部職員を含む組織的な関与のもと、実在する預金者の名義で無断に口座を開設し、そこに数百万円〜数千万円の融資を行うという手口が横行していました。
本来存在しない借入にもかかわらず、これらの資金は経営難に陥った特定の大口融資先の返済肩代わり資金(いわゆる“B資金”)として流用され、不良債権の表面化を避ける目的があったとみられます。
一時的には返済に充てられていたものの、やがて新たな偽造口座と融資を繰り返す“自転車操業”のような構造へと発展していきました。
不正額は17億円超、偽造口座は87件以上
2024年秋時点で作成された内部資料によると、確認されているだけでも偽造された口座数は87件、架空融資の総額は17億円以上に上ります。ただし、これらはあくまで一部であり、総額はさらに膨らむ可能性が高いとされています。
この問題は、昨年11月に発覚した旧経営陣による10億円超の迂回融資の調査過程で浮上し、現在は弁護士らによる第三者委員会が調査を進めています。最終的な報告書は2025年5月30日に公表予定です。
元会長に対する刑事告発状も提出
こうした一連の不正行為に対し、組合員の一部が元会長・江尻次郎氏に対する刑事告発状を提出しています。告発内容には、
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顧客に無断で借入申込書を偽造した「私文書偽造」
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実体のない融資を組み入れた「虚偽の決算書作成」
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「協同組合による金融事業法違反」
などが含まれており、元会長が2023年度決算を虚偽に作成した疑いも浮上しています。これにより、福島地検いわき支部が正式に捜査に乗り出す可能性が高まっています。
東日本大震災後の公的資金が「隠れみの」に?
さらに問題を複雑にしているのは、いわき信組が2012年、東日本大震災からの復興支援の一環として200億円の公的資金を金融庁と全信組連から受けていたという事実です。
関係者の証言によれば、この資金注入の後に、信組は帳簿上で一部の架空融資を「損失」として処理していた疑いがあり、実態のない貸付を「震災対応による損失」として消し込むことで、当局の監査を回避していた可能性が指摘されています。
ただし、2024年10月時点でも17億円以上の架空融資残高が存在しており、不正はその後も継続していたとみられています。
金融庁・福島財務事務所も調査へ
この事案に対し、福島財務事務所と金融庁も調査に着手しており、「第三者委員会の報告を踏まえ、必要な対応を講じる」としています。
現在、いわき信組は預金残高2,110億円、貸出金残高1,239億円と地域では大規模な信用組合に分類されます。自己資本比率は18.71%と健全性の基準は満たしているものの、信頼性の毀損による顧客離れや経営基盤の揺らぎが懸念されています。
今後の焦点:責任の所在と再発防止策
第三者委員会による調査報告は、5月30日に正式に公表される見通しです。報告書では、
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架空融資の全体像
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幹部・経営陣の関与の程度
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経営監督の体制不備
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公的資金の適正使用の有無
などが明らかにされる予定で、刑事責任・行政処分・経営刷新など、複数のレベルでの対応が求められることになります。
まとめ
今回のいわき信組の不正は、単なる一時的な着服や内部不正ではなく、長期かつ組織的な不正操作と隠蔽行為であったことが示唆されています。さらに、震災復興支援という公的信頼を背景にした資金注入が、結果的に「隠れみの」となっていた可能性も否定できません。
信頼を前提とする金融機関にとって、このような構造的不正は最も深刻なリスクであり、今後、他地域や他業態でも類似の問題がないか精査が求められます。
参照
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20250523/6050029723.html
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250519-OYT1T50153/







