ランサムウェアの事例まとめ【最新版】国内・海外の重要被害を年別・業種別に解説

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ランサムウェア 事例解説|被害の内容をランサムウェアの種類別に紹介

ランサムウェアの事例は、2021年のつるぎ町立半田病院や名古屋港から、2024年のKADOKAWA、2025年のアサヒグループホールディングス、2026年のニチレイに至るまで、日本国内でも医療・製造・食品・物流・エンターテインメントと業種を問わず深刻な被害が続いています。本記事では、国内外のランサムウェアの主要事例を年別・業種別に整理し、それぞれの攻撃手口・影響範囲・教訓を解説します。各年の詳細事例は年次まとめ記事でも取り上げており、本記事では全体像の把握を目的とした構成になっています。

サマリー

  • ランサムウェアはデータを暗号化して身代金を要求するマルウェアで、近年は暗号化に加えてデータを窃取して公開すると脅す「二重恐喝(ダブルエクストーション)」が主流となっています
  • 2021年には国内でつるぎ町立半田病院が約2か月の診療停止、名古屋港では3日間の搬出入停止という重要インフラへの直撃が相次ぎました
  • 2024年のKADOKAWAへのBlackSuit攻撃では約26万件の個人情報が流出し、2025年3月期に24億円の特別損失が計上されました
  • 2025年にはアサヒグループホールディングスがQilinによる攻撃で受注・出荷が全面停止し、純利益が37%減となる370億円弱の業績影響を受けました
  • 2026年には日本交通(AiLock)、ニチレイ(RansomHouseが犯行声明)など、物流・交通インフラへの攻撃が取引先サプライチェーン全体に波及しています
  • 海外ではWannaCry(2017年・北朝鮮)、Colonial Pipeline(2021年・米国)、Change Healthcare(2024年・米国医療システム)などが社会インフラを長期停止させた代表的事例です
  • ランサムウェアの侵入経路はVPN機器の脆弱性が最多で、多要素認証の未設定やパッチ未適用が被害を招くケースが国内外問わず繰り返されています

整理表

発生年 主な被害事例 使用ランサムウェア 主な影響
2017 WannaCry(世界) WannaCry 150か国・30万台感染、NHS機能停止
2019 Norsk Hydro(ノルウェー) LockerGoga アルミ製造ライン全停止、損害7,500万ドル
2021 つるぎ町立半田病院 LockBit系 電子カルテ停止・診療2か月停止、復旧費3億円
2021 Colonial Pipeline(米国) DarkSide 燃料パイプライン5日停止、18州に非常事態
2022 大阪急性期・総合医療センター Vice Society 電子カルテ停止、一般診療2か月間停止
2023 名古屋港 LockBit コンテナ搬出入3日間全停止
2023 MOVEit脆弱性悪用(世界) Clop 2,500社超・9,400万人以上に影響
2024 KADOKAWA BlackSuit 約26万件流出、特別損失24億円
2024 Change Healthcare(米国) ALPHV/BlackCat 米国医療処方システム最大2週間停止
2025 アサヒグループホールディングス Qilin 受注・出荷全面停止、業績影響370億円弱
2026 日本交通 AiLock(主張) 電話配車・Web受注停止
2026 ニチレイ RansomHouseが犯行声明 冷蔵倉庫入出庫・冷凍食品出荷停止、取引先波及

ランサムウェアとは-仕組みと攻撃手口の変遷

ランサムウェア(Ransomware)は、感染したコンピュータやサーバー上のファイルを暗号化して使用不能にしたうえで、復号のための鍵と引き換えに金銭(通常はビットコインなどの暗号資産)を要求するマルウェアです。名称はRansom(身代金)とSoftware(ソフトウェア)を組み合わせた造語です。

攻撃の形態は2017年以降に大きく変化しました。初期のランサムウェアはファイルを暗号化して身代金を要求するだけでしたが、現在の主流は二重恐喝(ダブルエクストーション)と呼ばれる手口で、データを暗号化する前に外部サーバーへ窃取しておき、「身代金を払わなければ盗んだデータを公開する」という脅しを組み合わせます。さらに近年は、バックアップも暗号化・削除して復旧を困難にする三重の圧力、被害者の顧客・取引先・規制当局への通報を脅迫に使う手口も確認されています。

RaaS(Ransomware as a Service)の普及も攻撃を拡大させた重要な要因です。ランサムウェアのコードと被害者との交渉インフラを開発者グループが提供し、実際に標的へ侵入する実行役(アフィリエイト)が身代金の7〜8割を受け取るというビジネスモデルが確立しており、高い技術力がなくても参入できる犯罪エコシステムが機能しています。

主な侵入経路は、インターネットに公開されたVPN・RDP(リモートデスクトップ)機器の既知の脆弱性悪用、フィッシングメールを経由した認証情報窃取、初期アクセスブローカー(IAB)から購入した侵入済みの認証情報の悪用の3つが中心です。国内の被害事例の多くがVPN機器のパッチ未適用や多要素認証の未設定を侵入経路としており、基本的な対策の徹底が最も効果的な防御になっています。

2021〜2022年のランサムウェア事例-国内重要インフラへの直撃

2021年は国内でランサムウェアによる重要インフラへの被害が相次いだ年として記憶されています。

2021年10月、徳島県のつるぎ町立半田病院がLockBit系のランサムウェアに感染し、電子カルテが閲覧不能となり外来診療が2か月間停止しました。原因はFortiGate製VPN機器の既知の脆弱性で、2019年にパッチが公開されていたにもかかわらず約3年間放置されていたことが判明しています。暗号化されたカルテの復旧費用は約1億円、新システム構築費用と合わせた総費用は約3億円に達しました。医療機関がランサムウェアの格好の標的になっていることを国内に広く認知させた転換点となった事例です。

2022年10月には大阪急性期・総合医療センターがVice Societyランサムウェアの攻撃を受け、電子カルテを含むシステムが暗号化され、一般外来診療の停止を余儀なくされました。診療が完全再開したのは約2か月後で、医療システムのセキュリティ対策の遅れが改めて指摘されました。同年のランサムウェア事例の詳細は2022年ランサムウェア事例まとめで解説しています。

2023年のランサムウェア事例-名古屋港停止とMOVEit大規模侵害

2023年7月、名古屋港のコンテナターミナル管理システム(NUTS)がLockBitによるランサムウェアに感染し、3日間にわたってコンテナの搬出入が全面停止しました。日本最大の取扱貨物量を誇る名古屋港が機能停止したことで、トヨタをはじめとする中部圏の基幹産業に広く影響が及びました。社会インフラへのサイバー攻撃が国内で現実のものとなった事例として、その後のランサムウェア対策の議論を大きく加速させました。

2023年の国際的な大型事例としては、ファイル転送ツールMOVEit Transferのゼロデイ脆弱性をClopが悪用した大規模侵害があります。BBC・ブリティッシュ・エアウェイズ・米国エネルギー省・Amazonの従業員データなど、2,500社超・9,400万人以上への影響が確認されており、ソフトウェアの脆弱性一点を突破することで数千組織を連鎖的に侵害できることを示した事例です。2023年の詳細事例は2023年ランサムウェア事例まとめで解説しています。

2024年のランサムウェア事例-KADOKAWAと米Change Healthcare

2024年6月、KADOKAWAグループがBlackSuitによるランサムウェア攻撃を受け、ニコニコ動画をはじめとする全グループサービスが停止しました。約26万件の個人情報が外部に流出し、2025年3月期に24億円の特別損失が計上されています。N高等学校の生徒情報、著名バーチャルYouTuberや声優の個人情報を含む流出は、エンターテインメント業界のセキュリティ体制に警鐘を鳴らした国内最大規模の事案の一つです。詳細は当サイトのKADOKAWA攻撃まとめで解説しています。

2024年の海外最大事例は、米国最大の医療請求処理事業者Change Healthcare(UnitedHealthグループ傘下)へのALPHV/BlackCat攻撃です。米国の薬局・病院が利用する医療処方・保険請求システムが最大2週間機能停止し、患者が薬を受け取れない事態が全米規模で発生しました。UnitedHealthは身代金として2,200万ドルを支払ったとされ、業績への影響は年間で8億7,200万ドルを超えるとされています。2024年の詳細事例は2024年ランサムウェア事例まとめで解説しています。

2025〜2026年のランサムウェア事例-食品・物流・交通インフラへの直撃

2025年に発生したアサヒグループホールディングスへのQilinランサムウェア攻撃は、国内企業の業績への影響という観点で過去最大規模の事案の一つとなりました。受注・出荷業務が全面停止し、通期決算発表の延期という異例の事態に至った同社の純利益は37%減となり、攻撃に起因する影響は370億円弱とされています。生産・物流システムへの攻撃が取引先サプライチェーン全体を巻き込む典型事例です。

2026年には日本交通株式会社がAiLockを名乗るランサムウェアグループから犯行声明を受け、電話配車システムやハイヤーWeb受注が停止する事態が発生しました(同社は本稿執筆時点で公式確認を行っていません)。同月にはニチレイが不正アクセスによるシステム障害に見舞われ冷蔵倉庫の入出庫業務と冷凍食品の出荷業務が停止し、ケンタッキー・フライド・チキン、イオン、くら寿司など多数の外食・小売チェーンで食材の配送遅延と欠品が発生しました。ランサムウェアグループRansomHouseが犯行声明を発表していますが、ニチレイは公式確認を行っておらず攻撃者の一方的な主張にとどまります。2026年の詳細事例は2026年ランサムウェア事例まとめで解説しています。

主要ランサムウェアグループの特徴

国内外の被害事例に繰り返し登場する主要グループの特徴を整理します。

LockBit(ロックビット)は2019年から活動する最大級のRaaSで、国内では名古屋港、つるぎ町立半田病院への攻撃を主張しています。2024年2月にはEuropolとFBIが中心となった国際合同作戦Operation Cronos(クロノス)でインフラが解体されましたが、その後LockBit 4.0として活動を再開しています。

Qilin(キリン/キーリン)は2022年から活動するRaaSで、世界的に医療・製造・教育など幅広いセクターを標的にしています。国内ではアサヒグループホールディングス(2025年)、穴吹ハウジングサービス、宇都宮セントラルクリニック、サカタのタネ米国子会社への攻撃を主張しており、日本企業を積極的に狙うグループとして特に注意が必要です。詳細はQilinのプロファイル記事をご参照ください。

BlackSuit(ブラックスーツ)は2023年頃に出現し、2024年のKADOKAWA攻撃で国内外に知れ渡りました。前身と言われるRoyalランサムウェアとの関連が指摘されています。

AiLock(エーアイロック)は2024年から活動する新興RaaSで、ポスト量子暗号の採用と、被害者が支払いを拒否した際に規制当局へ情報を通報すると脅す手口に特徴があります。

RansomHouse(ランサムハウス)は必ずしも暗号化を主目的とせず、データ窃取と公開による恐喝に特化した恐喝集団です。国内ではアスクル(2025年)への攻撃で約74万件の個人情報流出の可能性が生じており、ニチレイへの犯行声明(本稿執筆時点で同社は未確認)も発表しています。詳細はRansomHouseのプロファイル記事をご参照ください。

業種別に見るランサムウェアの事例

ランサムウェアの被害は業種を問いませんが、セクターごとに攻撃者の狙いや被害の性質が異なります。

医療機関は電子カルテ・患者情報という代替不可能な機密データを保有し、システムが停止すると診療継続そのものが困難になることから、支払いに応じる可能性が高い標的として繰り返し狙われています。国内ではつるぎ町立半田病院(2021年)、大阪急性期・総合医療センター(2022年)、岡山県精神科医療センター(2024年)、宇都宮セントラルクリニック(2025年)など、毎年複数の医療機関が被害を受けています。

製造業・食品・物流は、生産ラインや受発注・配送管理システムが停止することで自社の業務停止にとどまらず、取引先サプライチェーン全体に影響が波及する構造的なリスクを抱えています。アサヒグループホールディングス、ニチレイ、名古屋港がその典型例です。

行政・公共機関はサービス停止が市民生活に直結するため、身代金支払いへの圧力が高くなりやすいという特徴があります。国内では葛飾区(2023年)をはじめ複数の自治体が被害を受けています。

ランサムウェア被害を防ぐための対策

国内外のランサムウェア事例を横断的に分析すると、被害を招いた原因のパターンは驚くほど一致しています。

最大の原因はVPN機器・OSのパッチ未適用です。つるぎ町立半田病院は3年間、名古屋港はメーカー公表後の脆弱性を放置し、Equifax(2017年)はApacheのパッチを2か月間適用しませんでした。ランサムウェア対策において脆弱性管理とパッチ適用の迅速化は最優先です。

次いで多要素認証の未設定があります。Colonial Pipelineは流出した従業員のパスワード一つで侵入を許しました。インターネットに面したすべてのシステム、特にVPN・RDP・メール・開発基盤への多要素認証の徹底は、侵入リスクを劇的に下げる最も費用対効果の高い対策です。

バックアップの設計も重要です。ランサムウェアは暗号化の前に接続されたバックアップも狙います。オフライン・オフサイト・クラウドを組み合わせた3-2-1バックアップルールの遵守と、定期的な復旧テストの実施が事業継続において不可欠です。

最後に、インシデント発生を前提とした対応体制の整備です。アサヒグループホールディングスやニチレイの事例が示すように、基幹システムが停止した場合の代替オペレーション(手作業での受発注切り替え等)をあらかじめ整備しておくことで、停止による被害を最小化できます。

年次別ランサムウェア事例まとめ記事

各年の詳細なランサムウェア被害事例は以下の記事でご確認いただけます。

2026年 ランサムウェアの事例-国内・海外の最新被害を解説では、2026年に発生した国内外の主要なランサムウェア事例を随時更新しています。

ランサムウェアの事例【2024年】では、KADOKAWA、Change Healthcare、穴吹ハウジングサービス、岡山県精神科医療センターなど2024年の主要事例を解説しています。

ランサムウェアの事例【2023年】では、名古屋港、MOVEit大規模侵害など2023年の事例を解説しています。

ランサムウェアの事例【2022年】では、大阪急性期・総合医療センター、ALPHV/BlackCatの台頭など2022年の事例を解説しています。

出典