サウジアラビア、イラク発フーシ派のドローン攻撃で原油パイプライン停止-ホルムズ代替ルート直撃で日本にも影響

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サウジアラビア、イラク発フーシ派のドローン攻撃で原油パイプライン停止-ホルムズ代替ルート直撃で日本にも影響

サウジアラビアのエネルギー省は2026年9月11日、同国の東西原油パイプライン「East–West Pipeline」が複数回の攻撃を受け、安全確認のため予防的に停止したと発表しました。

攻撃が発生したのは9月10日朝です。リヤド州とマディーナ州を通るパイプラインが標的となり、負傷者と設備への損傷が確認されています。サウジ外務省は9月12日、攻撃に使われた複数の無人機がイラクから発進したと正式に明らかにしました。

東西パイプラインは、サウジ東部で生産した原油を紅海沿岸のヤンブーへ送り、ホルムズ海峡を経由せずに輸出するための基幹インフラです。

2026年の中東情勢ではホルムズ海峡の輸送制約が続き、Saudi Aramcoは同パイプラインの輸送能力を最大の日量700万バレルまで引き上げてきました。米国エネルギー情報局(EIA)も、サウジアラビアをホルムズ海峡を回避して大量の原油を輸出できる数少ない湾岸産油国として位置づけています。

今回の停止は、単なる国内パイプライン障害ではありません。

ホルムズ海峡を避けるための陸上輸送ルートが攻撃され、その先の紅海・バブ・エル・マンデブでも船舶への攻撃リスクが続いています。湾岸地域から原油を外へ出すための代替経路が、陸上と海上の双方で圧迫されている状況です。

サウジ東西パイプライン攻撃のサマリー

  • サウジ・エネルギー省は9月11日、東西パイプラインを予防的に停止したと発表しました。
  • 攻撃は9月10日朝に複数回発生し、リヤド州とマディーナ州の設備が標的となりました。
  • サウジ外務省は9月12日、複数の無人機がイラクから発進したと公表しました。
  • 負傷者と設備への損傷が確認されています。
  • 攻撃実行組織について、サウジ政府は現時点で公表していません。
  • 東西パイプラインは、ホルムズ海峡を通らずにサウジ東部から紅海側のヤンブーへ原油を送るための重要インフラです。
  • Saudi Aramcoは2026年第1四半期、ホルムズ海峡の輸送制約を受け、同パイプラインを最大の日量700万バレルまで稼働させました。
  • EIAは、2026年第2四半期にバブ・エル・マンデブを通る原油・石油製品が日量810万バレルまで増えたと推計しています。
  • 8月にはヤンブーからの原油輸出が7月比で約半分に減少しており、紅海側の輸送にも圧力がかかっています。
  • 日本は中東とサウジアラビアへの原油依存度が高く、価格上昇と物理的な調達制約の双方で影響を受ける可能性があります。
項目 内容
攻撃日 2026年9月10日
サウジ政府発表 9月11日、12日
対象 East–West Pipeline(東西原油パイプライン)
攻撃手段 複数の無人機
発進地点 イラク
人的被害 負傷者あり
設備被害 損傷あり
運転状況 予防的に停止
最大輸送能力 日量約700万バレル
主な役割 ホルムズ海峡を経由せず、サウジ東部の原油をヤンブーへ輸送
攻撃主体 サウジ政府は公表していません

9月10日に複数回の攻撃、パイプラインを予防停止

サウジ国営通信SPAが伝えたエネルギー省発表によると、東西パイプラインは9月10日朝、リヤド州とマディーナ州で複数回の攻撃を受けました。

サウジ政府は安全確認のため、パイプラインの運転を停止しました。

攻撃では複数の負傷者が発生し、設備への損傷も確認されています。緊急対応チームと技術チームが現場へ入り、設備の安全確認と復旧作業を進めています。

ここで注意したいのは、サウジ政府が「パイプラインが破壊された」とは説明していない点です。

発表上は予防的な停止であり、どの区間がどの程度損傷したのか、攻撃直前にどれだけの原油を流していたのか、停止がいつまで続くのかは明らかにされていません。

なお、今回の攻撃を単独の事案として見ることはできません。

米中央軍(CENTCOM)は2026年7月28日、米軍とサウジ軍がイラク東部にあるイラン系武装勢力の兵站・兵器拠点を共同攻撃したと発表しています。

CENTCOMによると、この勢力はイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の指示を受け、米軍とサウジアラビアのエネルギーインフラに対する攻撃を行っていました。

直前72時間には、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の指示による30回を超える無人機攻撃が確認されたとしています。

7月のCENTCOM発表からは、イラク領内からサウジのエネルギーインフラを狙う無人機攻撃網がすでに存在していたことが分かります。

東西パイプラインはホルムズ海峡を避けるための基幹ルート

東西パイプラインが持つ意味は、サウジ国内の原油輸送だけではありません。

このパイプラインは、東部の油田・原油処理施設から紅海沿岸のヤンブーまで原油を運びます。

通常、サウジ東部から出荷される原油はペルシャ湾側の港からホルムズ海峡を通ります。

東西パイプラインを使えば、ホルムズ海峡を経由せず、紅海側から原油を輸出できます。

EIAによると、通常の輸送能力は日量500万バレル規模で、必要時には日量700万バレルまで引き上げられます。

Saudi Aramcoは2026年第1四半期、ホルムズ海峡の船舶輸送制約を受け、東西パイプラインを最大の日量700万バレルまで稼働させたと発表しました。

同社のAmin Nasser CEOは、このパイプラインを世界的なエネルギーショックを緩和し、ホルムズ海峡の制約を受けた顧客への供給を維持するための「critical supply artery」と位置づけています。

つまり今回攻撃されたのは、平時の輸送設備ではなく、中東有事の際にホルムズ海峡を迂回するための「代替輸出路」です。

2026年は紅海側への原油迂回が急増

2026年に東西パイプラインの重要性がさらに高まったのは、ホルムズ海峡の輸送制約が長期化したためです。

EIAによると、バブ・エル・マンデブを通る原油・石油製品は、2025年第4四半期の日量540万バレルから2026年第2四半期には810万バレルまで増えました。

サウジアラビアが東西パイプラインを使い、ホルムズ海峡を避けてヤンブーへ原油を送ったことが増加要因の一つです。

しかし、その紅海側も安定していません。

EIAは、サウジ原油を運ぶ船舶への攻撃を受け、2026年8月のヤンブーからの原油輸出が7月比で約半分まで減ったと推計しています。

今回のパイプライン停止により、

「東部油田 → 東西パイプライン → ヤンブー → 紅海」

というホルムズ回避ルートは、陸上部分と海上部分の両方で攻撃リスクを抱えることになりました。

この点が、今回の事案を単なる設備停止ではなく安全保障問題として見る理由です。

世界経済への影響は停止期間で大きく変わる

今回の攻撃が発生する前から、世界の石油市場は中東情勢による供給制約を織り込んでいました。

EIAが9月9日に公表したShort-Term Energy Outlookでは、2026年に世界の石油在庫が約4億バレル減少したと推計しています。

8月のBrent原油平均価格は1バレル91ドルで、2026年後半も平均約90ドルで推移すると予測していました。

EIAはこの予測作業を9月3日に終えているため、9月10日の東西パイプライン攻撃は予測に含まれていません。

停止が数日程度で終われば、世界の原油供給への影響は限定的です。

一方、停止が長期化した場合や、追加攻撃によって安定運転できなくなった場合は、ホルムズ海峡の輸送制約に加えてサウジの代替能力まで失われます。

その場合、原油価格だけでなく、軽油、ジェット燃料、ナフサ、海運燃料、石油化学原料にも価格上昇が波及します。

世界にとって問題なのは「代替ルートの代替」が少ないこと

ホルムズ海峡が通常どおり使える状態であれば、東西パイプラインが停止してもサウジ東岸からの輸出で一定程度補えます。

しかし2026年は、ホルムズ海峡自体が安定した輸送ルートとして機能していません。

そのためサウジは東西パイプラインを使い、紅海側へ原油を逃がしてきました。

そのパイプラインが攻撃され、さらにヤンブーから先の紅海でも船舶への攻撃が続くと、代替ルートを別のルートで置き換える余地が小さくなります。

今回の攻撃が示したのは、原油生産設備そのものを破壊しなくても、輸送経路を狙うことで世界市場へ圧力をかけられるという点です。

2026年の中東情勢では、油田だけでなく「ホルムズ海峡を避けるための輸送能力」そのものが安全保障上の標的になっています。

日本への影響 サウジは主要な原油供給国

日本にとって今回の攻撃は、遠い地域のインフラ障害ではありません。

EIAの日本分析によると、日本の原油輸入は中東への依存度が高く、2022年時点で中東産原油は輸入全体の93%を占めていました。

サウジアラビアだけで42%を占めています。

サウジ側から見ても日本は主要な原油輸出先です。

EIAによると、2023年のサウジ原油輸出のうち日本向けは14%を占め、中国に次ぐ主要輸出先の一つでした。

年次は異なりますが、日本がサウジ原油に大きく依存し、サウジ側にとっても日本が主要顧客であることは変わりません。

今回のパイプライン停止が長引けば、日本への影響はまず国際原油価格として表れ、その後、物理的な調達量や輸送ルートへ波及します。

日本はすでに石油備蓄を取り崩している

2026年の中東危機では、日本はすでに石油備蓄を使ってきました。

EIAのGlobal Energy Security Dataでは、日本の戦略石油在庫は2025年第4四半期の2億6,300万バレルから、2026年第2四半期には1億8,700万バレルまで減少しています。

半年間で約7,600万バレル減った計算です。

これは直ちに日本の原油が不足することを意味しません。

一方、危機前と比べて追加の供給ショックを吸収するために使える在庫が減っていることは事実です。

ホルムズ海峡の制約に加え、サウジ東西パイプラインや紅海側の輸送まで不安定になれば、日本は備蓄だけでなく、中東以外からの調達、タンカー確保、製油所で処理できる原油の種類まで含めて対応する必要があります。

復旧時期と追加攻撃の可能性

今回の攻撃による世界・日本への影響は、今後数日の運転状況で大きく変わります。

最初に確認したいのは、サウジ・エネルギー省がいつ運転再開を発表するかです。

あわせて、ヤンブー港からの原油出荷量、Saudi Aramcoの生産・輸出割当、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブの通航量、追加のイラク発無人機攻撃の有無を見る必要があります。

短期間で復旧すれば、今回の事案による物理的な供給減少は限定的になる可能性があります。

一方、攻撃が繰り返され、東西パイプラインを安定して使えない状態になれば、サウジがホルムズ海峡を回避するために確保してきた最大日量700万バレルの輸送能力そのものが不安定になります。

その場合、世界の原油市場は「ホルムズ海峡の危機」に加え、「ホルムズを避けるための代替ルートも安定して使えない」という二重の輸送リスクを織り込むことになります。

日本も、原油の調達先だけではなく、産油地から日本までの途中にあるパイプライン、港湾、海峡を含めてエネルギー供給網を見直す必要があります。

関連する紅海側のリスクについては「フーシ派、サウジアラビアへの海上封鎖を宣言-ヤンブー・トラップが現実化」、ホルムズ海峡と日本への影響については「フーシ派 参戦でイラン紛争が拡大-紅海・ホルムズ海峡封鎖と日本の原油への影響」でも整理しています。

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