
近年、世界各地で中国船による海底通信ケーブルが切断される事例が相次いでいます。2023年バルト海やノルウェー沖、台湾周辺などで発生したケーブルの損傷については、中国やロシアの船舶が現場付近を航行していたことが確認され、意図的な破壊活動ではないかとの疑念が持たれています。
なお、中国政府は「事故」との見解を示しています。Newsweekの調査によると、中国の技術者が海底ケーブルを迅速かつ低コストで切断する装置の特許を出願していたことが判明しました。
目次
海底ケーブル切断技術の特許を出願
中国・浙江省の麗水大学(Lishui University)の研究者のチームが2020年に出願した特許には
「海底ケーブルを迅速かつ低コストで切断する装置」についての詳細が記載されています。
研究者らは特許申請の中で、次のように述べています。
「科学技術の発展に伴い、世界各地の海底に多くの通信ケーブルが敷設されている。緊急時には、それらのケーブルを切断する必要が生じる。従来の方法では、まずケーブルの位置を特定し、掘削して引き上げてから切断する必要があり、このプロセスは複雑で高価な機器が求められる。より迅速で低コストな切断装置が必要とされている。」
船舶がケーブルの上を航行しながら切断を行う仕組み
この装置は「アンカー型」 のデザインを採用しており、船舶がケーブルの上を航行しながら切断を行う仕組みになっています。
画像:Newsweek
また、ケーブルが切断されたことを確認するために銅の残留物を検知する機能 も備えています。
銅は通信ケーブルの主要な導体素材であるため、この装置が通信ケーブルの切断を想定して設計されていることが分かります。
Newsweekは麗水大学の研究部門に問い合わせたところ、担当者は「特にコメントする必要はない」と述べ、すぐに電話を切ったと報じられています。
中国の過去の特許出願と類似技術
この特許は2020年に出願されたものですが、同様の技術はそれ以前にも開発されていました。
2009年には、中国国家海洋局・南シナ海支局の研究者らが「海底ケーブル切断装置」 の特許を申請しています。
出願の目的として「違法なケーブルの除去」が挙げられていますが、実際には軍事的な目的で利用される可能性があると専門家は指摘しています。
ノルウェーの海底通信専門家は「違法なケーブルの除去という説明は不合理であり、無差別にケーブルを切断するこの手法は、合法的なインフラにも深刻な損害を与える可能性がある」と述べています。
中国船による相次ぐ海底ケーブルの切断
台湾海峡で海底ケーブルを切断
2025年1月3日午後12時40分に海底ケーブルの管理者、中華電信からケーブル損傷の報告を受け、巡視船を派遣したと発表しました。
台湾当局は船舶自動識別システムの信号と衛星データの追跡データから、中国と関係を疑われているカメルーン船籍の貨物船「順鑫39号」がケーブルが切断した場所で錨を曳航していたことが示されているとされています。
なお、4本の海底ケーブルが損傷しましたがバックアップシステムが働いたため、国内の通信に影響は発生していません。
バルト海の海底ケーブルが中国船により切断
2024年11月バルト海の海底ケーブルが中国船により切断され、ドイツ国防相「おそらく破壊行為」としています。
中国船籍の易鵬3号(日本語読み:えきほう)はロシアのウスチ・ルガ港を出港した後、スウェーデンとデンマークの間の海域で停船しました。
船舶は海上で燃料補給のために停泊することもあります、同船が停止した位置はそうした活動が行われる場所ではありません。
また、2023年にも同様の事件が発生しており中国の意図的な海底ケーブル切断の可能性が高いです。
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