株式会社ニチレイは2026年8月14日、7月13日に発生したサイバー攻撃によるシステム障害について第6報を公表しました。攻撃を受けたサーバーの一部に国内グループ会社の従業員情報が保管されており、その一部について漏えいのおそれがあることを確認しています。
システム障害では、ニチレイロジグループ各社の冷蔵倉庫入出庫業務と、ニチレイフーズの冷凍食品出荷業務が停止しました。ニチレイは発生当日にネットワークを遮断し、7月17日に業務を段階的に再開、7月24日には受発注制限を解除して全拠点を通常稼働へ戻しています。一方、個人情報への影響調査は業務復旧後も続いています。
ニチレイへのサイバー攻撃のサマリー
- ニチレイは2026年7月13日、不正アクセスによるシステム障害を確認しました。
- 7月15日の第2報で、同社サーバーがサイバー攻撃を受けたことを確認したと公表しました。
- 発生当日にグループ内システムをネットワークから遮断し、緊急対策本部を設置しています。
- ニチレイロジグループ各社の冷蔵倉庫入出庫業務と、ニチレイフーズの冷凍食品出荷業務に影響が生じました。
- 7月17日に業務を段階的に再開し、7月24日には受発注制限を解除して全拠点が通常稼働へ移行しました。
- 8月14日の第6報で、国内グループ会社の一部従業員情報について漏えいのおそれがあることを確認しました。
- 対象となる可能性がある情報は、氏名、生年月日、会社メールアドレス、従業員番号、その他の人事・労務管理情報です。
- 対象人数は公表されておらず、情報が実際に外部へ持ち出されたことも確認されていません。
- 8月14日時点で、対象となる個人情報の不正利用は確認されていません。
- ニチレイは個人情報保護委員会へ、漏えいの可能性がある事案として報告しています。
- 8月7日の決算説明資料では、システム障害による影響を売上高で最大50億円、営業利益で8億円、特別損失で10億円と見込んでいます。
- RansomHouseが攻撃を主張していますが、ニチレイは同グループの関与、ランサムウェアによる暗号化、データ窃取を公式には確認していません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初回公表日 | 2026年7月13日 |
| 最新公表日 | 2026年8月14日(第6報) |
| 発生日・確認日 | 2026年7月13日 |
| 対象組織 | 株式会社ニチレイおよび国内グループ会社 |
| インシデント | サイバー攻撃によるシステム障害 |
| 侵入経路 | 確認できませんでした |
| 影響を受けた業務 | ニチレイロジグループ各社の冷蔵倉庫入出庫業務、ニチレイフーズの冷凍食品出荷業務 |
| 漏えいのおそれがある情報 | 国内グループ会社が取り扱う従業員の氏名、生年月日、会社メールアドレス、従業員番号、その他の人事・労務管理情報 |
| 対象件数 | 公表されていません |
| 漏えいの確認状況 | 一部従業員情報について漏えいのおそれを確認。実際の外部流出や第三者による取得は確認できませんでした |
| 不正利用 | 2026年8月14日時点で確認されていません |
| 業務復旧 | 7月17日に段階的再開、7月24日に受発注制限を解除し全拠点が通常稼働へ移行 |
| 業績への影響見込み | 売上高最大50億円、営業利益8億円、特別損失10億円のマイナス影響 |
| 個人情報保護委員会への報告 | 第2報で報告済み |
| 攻撃者 | ニチレイによる公式発表はありません。RansomHouseが犯行を主張しています |
| 現在の対応 | 外部専門会社による調査、システム強化、監視体制の強化を継続 |
第1報から第6報までの経緯
| 日付 | 発表・動向 | 主な内容 |
| 7月13日 | 第1報 | 不正アクセスによるシステム障害を公表。冷蔵倉庫の入出庫業務と冷凍食品出荷業務に影響。個人情報や顧客データの社外流出は未確認 |
| 7月15日 | 第2報 | サーバーがサイバー攻撃を受けたことを確認。被害サーバーの一部に個人情報が保管されていたため、個人情報保護委員会へ報告 |
| 7月17日 | 第3報 | 冷蔵倉庫全拠点の入出庫業務と冷凍食品出荷業務を順次再開。受発注制限を設けた部分稼働を実施 |
| 7月22日 | 第4報 | 被害サーバーに保管されていた個人情報の対象者へ個別通知。警察、関係機関と連携して調査を継続 |
| 7月22日 | RansomHouseが犯行声明 | ダークウェブ上でニチレイへの攻撃、暗号化、データ入手を主張。ニチレイによる裏付けはありません |
| 7月24日 | 第5報 | 受発注制限を解除し、影響を受けた全拠点が平常時の通常稼働へ移行 |
| 8月7日 | 第1四半期決算説明 | システム障害による売上高、営業利益、特別損失への影響見込みを公表 |
| 8月14日 | 第6報 | 国内グループ会社の一部従業員情報について漏えいのおそれを確認。対象情報の項目を公表 |
第6報で従業員情報の漏えいのおそれを公表
ニチレイは8月14日の第6報で、サイバー攻撃を受けたサーバーの一部に従業員情報が保管されており、その一部について漏えいのおそれがあることを確認したと発表しました。
対象となる可能性があるのは、国内のニチレイグループ会社が取り扱う次の情報です。
- 氏名
- 生年月日
- 会社メールアドレス
- 従業員番号
- その他の人事・労務管理に関する情報
「その他の人事・労務管理に関する情報」の具体的な項目や対象人数は公表されていません。第6報は「一部の従業員情報について漏えいのおそれがあることを確認した」としており、情報流出や第三者による取得が確認されたとは説明していません。
また、第6報では、顧客情報や取引先情報について新たに漏えいのおそれを確認したとの記載はありません。7月22日の第4報で通知した対象者と、第6報で公表した従業員情報の対象者が同一かどうかも確認できませんでした。
従業員情報への影響については、ニチレイ、サイバー攻撃で従業員情報の漏洩恐れでも詳しく整理しています。
7月13日にネットワークを遮断、4日後に段階的再開
ニチレイは不正アクセスによるシステム障害が発生した7月13日、顧客や取引先の個人情報、顧客データの保護を優先し、グループ内で使用しているシステムの遮断措置を講じました。同日中に緊急対策本部を設置し、外部のセキュリティ専門会社と調査、復旧、安全対策を進めています。
システム遮断に伴い、ニチレイロジグループ各社の冷蔵倉庫入出庫業務と、ニチレイフーズの冷凍食品出荷業務が停止しました。物流システムの停止は、同社の商品だけでなく、同社の低温物流を利用する外食、小売、食品メーカーなどにも波及しています。取引先で確認された配送遅延や欠品については、ニチレイへのサイバー攻撃による食品サプライチェーンへの影響で整理しています。
ニチレイは外部専門会社と安全対策を講じたうえで、発生から4日後の7月17日に業務を段階的に再開しました。当初は受発注を一部制限した部分稼働でしたが、7月24日には制限を解除し、影響を受けた全拠点を平常時の通常稼働へ移行しています。
発生から全拠点の通常稼働まで11日間です。ただし、業務の復旧と個人情報への影響調査は別の進行です。業務が通常稼働へ戻った後も調査は継続され、約3週間後の8月14日に従業員情報への影響が公表されました。
売上高で最大50億円、営業利益で8億円の影響を見込む
ニチレイは8月7日の第1四半期決算説明会資料で、システム障害による業績へのマイナス影響を公表しました。
| 区分 | 影響見込み | 内訳・説明 |
| 売上高 | 最大50億円 | 食品事業20億円、低温物流事業30億円 |
| 営業利益 | 8億円 | 持株会社のシステム対応費用2億円、食品事業2億円、低温物流事業4億円 |
| 特別損失 | 10億円 | 緊急対応で発生した費用と、今後発生すると見込む損失 |
同社は2026年12月期の営業利益予想を前回計画の338億円から300億円へ38億円引き下げています。ただし、この38億円の全額がサイバー攻撃によるものではありません。ニチレイは、システム障害による営業利益への影響を8億円とし、残りには中東情勢によるコスト増や主力事業の進捗などを織り込んでいます。
また、売上高への最大50億円の影響見込みは、情報漏えい件数や確定した損害賠償額ではありません。事業停止に伴う売上面のマイナス影響について、8月7日時点でニチレイが示した業績見込みです。グループ全体の通期売上高予想は、海外事業の伸長を反映し、前回計画の6,094億円から6,185億円へ上方修正されています。
RansomHouseが攻撃を主張、ニチレイは攻撃主体を公表せず
ランサムウェアグループ「RansomHouse」は7月22日、ダークウェブ上のリークサイトにニチレイを掲載し、データの暗号化や証拠データの入手を主張しました。
ただし、これは攻撃者側の一方的な主張です。ニチレイは第6報までに、RansomHouseが攻撃主体であること、ランサムウェアによってデータが暗号化されたこと、同グループがデータを窃取したことを公式には確認していません。
第6報で従業員情報の漏えいのおそれが公表されたことも、RansomHouseの主張全体を裏付けるものではありません。RansomHouseによるニチレイへの犯行声明については、確認済みの事実と攻撃者の主張を分けて評価する必要があります。
侵入経路、攻撃に利用された脆弱性、使用されたマルウェア、攻撃者によるデータ取得の有無は公表されていません。公開情報だけから、特定の攻撃グループや手口へ帰属させることはできません。
個人情報の不正利用は未確認、従業員を狙う連絡に注意
ニチレイは8月14日時点で、対象となる個人情報の不正利用を確認していないとしています。一方、氏名、生年月日、会社メールアドレス、従業員番号、人事・労務情報が第三者に取得された場合、従業員を狙った標的型メールやなりすましに利用される可能性があります。
人事部門、情報システム部門、経営層、取引先を装い、給与、社会保険、福利厚生、アカウント確認などを理由として、認証情報や追加の個人情報を入力させる手口が想定されます。会社メールアドレスや従業員番号を示すことで、受信者に正規の社内連絡だと誤認させる可能性もあります。
ニチレイは、不審な連絡を受けた場合、URLへのアクセス、IDやパスワード、個人情報の入力、添付ファイルの開封を行わないよう注意を呼びかけています。今後、追加で個人情報の漏えいのおそれを確認した場合は、対象者への通知と法令に基づく措置を行う方針です。
情報システム部門への示唆
ニチレイの対応では、発生当日のネットワーク遮断、緊急対策本部の設置、外部専門会社との安全確認、段階的な業務再開が公表されています。4日後に業務を一部再開し、11日後に全拠点を通常稼働へ移行した一方、個人情報への影響調査はその後も続きました。
情報システム部門は、業務復旧と情報漏えい調査を同じ終了条件で管理しないことが重要です。システムが復旧しても、ログ解析、侵害範囲の特定、対象データの確認、本人通知、法令対応が完了したとは限りません。
- 業務停止時に優先して復旧するシステムと手動代替手順を事前に定める
- ネットワーク遮断の判断権限と、経営層を含む緊急対策本部の招集条件を明確にする
- 復旧チームとフォレンジック調査、法務、個人情報保護、広報の担当を並行して動かす
- 安全確認が完了した業務から段階的に再開し、再開条件と承認記録を残す
- 売上減少、対応費用、復旧費用、取引先補償などを分けてインシデントコストを集計する
- 業務復旧後も従業員向けのフィッシング監視と不審メール報告体制を継続する
- 初報、業務復旧報、情報漏えい調査、業績影響を段階的に公表できる危機広報手順を整備する
今回の事案では、業務面の復旧、情報漏えいの調査、業績影響の算定が異なる時間軸で進んでいます。インシデント対応計画でも、それぞれに責任者と完了条件を設定する必要があります。
出典
- 当社グループでのシステム障害発生について(第1報) – 株式会社ニチレイ
- 当社グループでのシステム障害発生について(第2報) – 株式会社ニチレイ
- 当社グループでのシステム障害発生について(第3報) – 株式会社ニチレイ
- 当社グループでのシステム障害発生について(第4報) – 株式会社ニチレイ
- 当社グループでのシステム障害発生について(第5報) – 株式会社ニチレイ
- 当社グループでのシステム障害発生について(第6報) – 株式会社ニチレイ
- 2026年12月期 第1四半期決算説明会資料 – 株式会社ニチレイ
- ニチレイ、サイバー攻撃で従業員情報の漏洩恐れ – セキュリティ対策Lab
- ニチレイへの不正アクセスを伴うサイバー攻撃が食品サプライチェーンに影響 – セキュリティ対策Lab
- ランサムウェアグループRansomHouseがニチレイへのサイバー攻撃を主張 – セキュリティ対策Lab








