コクヨ、役員・従業員を装うSlack 偽招待メールを確認、参加後に口座情報を要求

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コクヨ、役員・従業員を装うSlack 偽招待メールを確認、参加後に口座情報を要求

コクヨ株式会社は2026年7月23日、コクヨグループの役員や従業員を装ったSlackへの偽招待メールが送信されているとして注意を呼びかけました。受信者が招待を承諾してワークスペースへ参加すると、Slack上で口座情報などの個人情報を聞き出そうとするメッセージが届くとしています。今回の発表はコクヨやSlackへの不正アクセスを公表したものではなく、実在する役職員の氏名とビジネスチャットの招待機能を悪用した、なりすまし型のソーシャルエンジニアリングとして捉える必要があります。

サマリー

  • コクヨグループの役員や従業員の氏名を使ったSlack招待メールを確認
  • 招待を承諾すると、Slack上で口座情報などを聞き出すメッセージが届く
  • コクヨは、招待メールやメッセージは同社グループと一切関係がないと説明
  • フィッシングサイトへの誘導、ウイルス感染、不正アクセスにつながるおそれがある
  • コクヨやSlackのシステムが侵害されたとの発表ではない
  • 被害件数、金銭被害、情報漏洩の有無は公表されていない
項目 内容
公表日 2026年7月23日
注意喚起を行った企業 コクヨ株式会社
悪用されているサービス Slack
なりすましの対象 コクヨ株式会社およびコクヨグループ各社の役員・従業員
確認された手口 Slackへの招待メールを送り、参加後のメッセージで口座情報などの個人情報を聞き出す
招待メールの例 「〇〇さんから、コクヨ株式会社でやり取りするために招待されました」との件名で送信
想定されるリスク 個人情報の窃取、フィッシングサイトへの誘導、ウイルス感染、不正アクセス
コクヨとの関係 コクヨグループとは一切関係がなく、同グループが送信したものではない
システム侵害の有無 コクヨまたはSlackのシステム侵害を示す発表はない
被害状況 被害件数、情報漏洩、金銭被害は公表されていない
推奨される対応 招待を承諾しない、返信しない、個人情報を入力しない、URLを開かない、アプリをインストールしない

コクヨの役職員を装ったSlack招待を確認

コクヨによると、確認されているメールは、コクヨグループの役員または従業員の氏名を使い、受信者をSlackワークスペースへ招待する内容です。

件名には「〇〇さんから、コクヨ株式会社でやり取りするために招待されました」と表示され、本文には「招待を承諾する」ボタンが設けられています。受信者が招待を承諾してワークスペースへ参加すると、コクヨグループの役職員を名乗る人物から、口座情報などの個人情報を聞き出そうとするメッセージが届くとされています。

コクヨは、これらの招待メールやメッセージについて、同社グループとは一切関係がなく、同社グループが送信したものでもないと説明しています。正規のSlackワークスペースについても、コクヨグループの役員または従業員から外部の利用者を招待することはないとしています。

メールからビジネスチャットへ移動させる手口

今回の特徴は、メールだけで情報を入力させるのではなく、受信者を攻撃者側が用意したとみられるSlackワークスペースへ参加させ、チャット上でやり取りを続ける点にあります。

Slackでは、招待を承諾すると招待先のワークスペースごとにアカウントが作成されます。同じメールアドレスで複数のワークスペースへ参加できるため、業務でSlackを利用している人ほど、既存の自社環境とは別のワークスペースに参加していることを意識しにくい場合があります。

メールからチャットへ場を移すことで、攻撃者は業務上の相談や取引確認を装いながら会話を継続できます。メールアドレスのドメインを確認する習慣があっても、Slack上では表示名やプロフィール画像を手掛かりに相手を信用してしまうおそれがあります。

この構造は、役員を装うメールからLINEなどの外部チャットへ誘導する手口と共通しています。代表や役員を騙るなりすましメールの実例と注意点でも、メールで接触した後に別のコミュニケーション手段へ移動させ、情報提供や送金を求める事例を紹介しています。

確認されている要求と想定されるリスク

コクヨが具体的に確認した内容は、Slack上で口座情報などの個人情報を聞き出そうとするメッセージです。公表資料では、実際に情報を渡した人がいるか、金銭的な被害が発生したかまでは明らかにされていません。

同社は、フィッシングサイトへの誘導、ウイルス感染、不正アクセスなどのリスクも挙げています。ただし、偽サイトのURL、マルウェアを含むファイル、不正アプリの配布が実際に確認されたとする説明ではありません。これらは、不審なワークスペースへの参加や、その後のメッセージへの反応によって生じ得るリスクとして示されたものです。

攻撃者が口座情報を聞き出す目的も公表資料だけでは断定できません。口座番号や名義などを追加のなりすましに利用する可能性に加え、会話を継続して送金指示、認証情報の入力、不正アプリの導入へ進めることも考えられます。

企業を標的としたなりすましでは、最初から不正送金を要求せず、連絡先や口座情報など、相手が比較的提供しやすい情報から聞き出す場合があります。ビジネスメール詐欺やなりすましチャットによる不正送金被害のまとめで取り上げた事例でも、メールからチャットへ誘導し、関係者になりすました状態で指示を続ける手口が確認されています。

コクヨやSlackへの不正アクセスを示す発表ではない

今回の注意喚起では、コクヨのメールアカウントやSlack環境が乗っ取られたとの説明はありません。顧客情報や従業員情報が漏洩したとの発表もなく、コクヨ側でシステム障害が発生した事案でもありません。

役員や従業員の氏名は、企業サイト、ニュースリリース、登記情報、SNSなどの公開情報から収集できる場合があります。そのため、実在する氏名が招待メールに記載されていることだけを根拠に、正規の連絡だと判断することはできません。

Slack側の脆弱性や侵害を示す情報も公表されていません。攻撃者が第三者をワークスペースへ招待できる通常の仕組みを悪用している可能性がありますが、招待メールの技術的な送信経路やワークスペースの契約状況は明らかにされていません。

2026年1月にはLINEへ誘導するなりすましメールも確認

コクヨは2026年1月15日にも、グループ各社の役員や従業員を装ったなりすましメールへの注意喚起を行っています。

当時確認されたメールは、「至急の相談がある」などとして返信を促し、LINEでの連絡や個人情報の提供を求めるものでした。コクヨは、正規のメールでは原則として「@kokuyo.com」をはじめとするグループ各社の独自ドメインを使用し、業務連絡にフリーメールを利用しないと説明していました。

今回のSlack招待メールと1月のなりすましメールが、同じ攻撃者や一連のキャンペーンによるものかは公表されていません。ただし、実在する役職員の氏名を信用材料に使い、外部のチャット環境へ誘導する点は共通しています。

不審な招待を受け取った場合の対応

心当たりのないSlack招待を受け取った場合は、「招待を承諾する」ボタンを押さず、ワークスペースへ参加しないでください。メールへの返信、記載されたURLへのアクセス、添付ファイルの開封、アプリケーションのインストールも避ける必要があります。

連絡の真偽を確認する場合は、招待メールやSlack上のメッセージに記載された連絡先を使わず、公式サイト、既存の取引記録、社内電話帳などから確認した連絡先を使用します。IPAも、役員などを装う詐欺メールについて、受信したメールには返信せず、電話などの別経路で本人確認するよう案内しています。

すでに招待を承諾した場合は、それ以上のメッセージに返信せず、入力または送信した情報、クリックしたURL、インストールしたアプリの有無を整理してください。業務用アカウントの認証情報を入力した場合は、正規サイトからパスワードを変更し、多要素認証とログイン履歴を確認します。口座情報や取引情報を送信した場合は、情報システム部門だけでなく、経理、法務、金融機関にも速やかに共有する必要があります。

情報システム部門への示唆

情報システム部門は、Slackから届いたように見える招待メールであっても、招待者や招待先の組織が正規であるとは限らないことを社内へ周知してください。メールの送信元だけでなく、誰から、何の目的で、どのワークスペースへ招待されているかを確認する運用が必要です。

社外のSlackワークスペースやSlackコネクトへの参加については、管理者または所属長の承認を必須とし、取引先の担当者から招待された場合も既知の連絡先へコールバックする手順を設けます。個人情報、口座情報、請求先変更、送金、認証コード、アプリのインストールをチャットだけの指示で実行しないことも、明文化しておくべきです。

メールゲートウェイでは、外部サービスからの招待メールを一律に遮断するのではなく、受信者が簡単に情報システム部門へ報告できる仕組みを整備します。報告を受けた際は、件名、送信日時、招待者名、招待先ワークスペース、リンク先、受信者の範囲を確認し、同種メールが社内へ広く届いていないかを検索してください。

自社のSlack環境については、招待権限を必要な担当者に限定し、保留中および承諾済みの招待を定期的に確認します。監査ログを利用できる契約では、外部組織との接続、アプリの追加、異常な認証などを監視し、SIEMやSOARとの連携も検討してください。

今回の手口は、マルウェアを検知するだけでは防ぎにくいソーシャルエンジニアリングです。役員名や実在企業名が表示されていても、チャット上の要求をそのまま信用しない運用と、情報提供や送金を一人の判断で完結させない承認統制が被害防止の中心になります。

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