
2025年2月、中京テレビの報道によると三重県大紀町にて、町職員が障害者福祉施設での虐待通報者の個人情報を施設側に漏洩していた事実が明らかになりました。問題が表面化したのは、通報者が所属する労働組合が2025年4月2日に県へ調査を要望した後であり、それまで町は情報漏洩の事実を公表していませんでした。
事件の経緯
通報は、県内の障害者福祉施設に勤務する職員から寄せられたもので、施設内での虐待が疑われる行為について大紀町に報告されたものです。
町は調査の結果、「虐待には該当しない」と判断しましたが、調査過程で施設側から「いつもの方からの通報ですか」と尋ねられた町職員が、通報者の名前を口頭で回答してしまったということです。
障害者虐待防止法では、通報者を特定させるような情報を第三者に漏らすことは固く禁じられており、今回の対応は明確な法令違反に該当します。
公表が遅れた背景
町が情報漏洩を速やかに公表しなかった背景は説明されていませんが一般的には以下のような複数の要因が考えられます
- 自治体内部での事案軽視:情報漏洩を「軽微なミス」と捉え、重大な法令違反としての認識が薄かった可能性。
- 組織防衛の意識:職員のミスを外部に明かすことで町の信用が損なわれることを恐れ、意図的に公表を避けた可能性。
- 法的義務の認識不足:通報者保護に関する法律の理解や教育が職員に十分浸透していなかったことが、対応の甘さに繋がった。
一般的な対策と再発防止策
このような情報漏洩を防ぐためには、次のような対策が必要です:
- 通報者保護に関する職員研修の義務化
- 特に福祉、教育、法務関連部署の職員には、通報者保護法や個人情報保護法に関する実務的研修を実施すべきです。
- 通報受付・調査対応マニュアルの整備
- 通報者情報の取扱いを明文化し、「決して第三者に伝えない」ことを徹底します。
- 外部通報・第三者相談窓口の強化
- 通報者が自治体内部の対応に不安を感じた場合でも、適切なルートで保護されるよう、外部相談窓口の存在を周知する必要があります。
- 情報漏洩時の迅速な公表と謝罪対応のルール化
- 万が一漏洩が発覚した際は、直ちに事実を公表し、関係者に謝罪と再発防止策を提示することが信頼維持につながります。
結びに
今回の大紀町のケースは、自治体による通報者保護体制の脆弱さを浮き彫りにした象徴的な事例です。通報者制度は、虐待や不正を未然に防ぐ社会的セーフティネットであり、その信頼を損なうことは地域福祉そのものの信頼性を揺るがしかねません。
一部参照