福井県内の就労支援事業所が、理事長になりすました人物からの指示に従い、現金500万円をだまし取られていたことが2026年7月2日、福井テレビの報道で明らかになりました。業務用メールを起点にLINEグループへ誘導し、送金を指示するという手口は、同時期に大分県内で発覚した社会福祉法人の被害と共通しており、福祉・就労支援分野を狙うニセ社長詐欺が全国に広がりつつあることをうかがわせる事案です。
サマリー
- 福井市内の就労支援事業所が、理事長になりすました人物からの指示により現金500万円をだまし取られた
- 手口は、法人の代表メールアドレスに理事長を名乗る人物から、業務調整に備えてLINEの業務グループを新規作成するようにというメールが届くことから始まった
- 職員が指示通りにLINEグループを作成し、理事長をかたる人物を招待したところ、支払いが必要だとして指定口座への振り込みと、振込完了後の明細スクリーンショットの送付を求められた
- 職員はこの指示に従って指定口座へ500万円を振り込み、だまし取られた
- 福井県警は防犯アプリふくいポリスや、警察庁が推奨する特殊詐欺対策アプリの利用を呼びかけている
- ほぼ同時期に大分県内でも、社会福祉法人が代表者になりすました人物の指示で1,990万円をだまし取られる、同じ手口の被害が発覚している
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報道日 | 2026年7月2日(福井テレビ) |
| 被害法人 | 福井市内の就労支援事業所 |
| 被害額 | 500万円 |
| 手口 | 理事長を装うメールでLINE業務グループの作成を指示、振込と振込明細のスクリーンショット送付を要求 |
| 警察の呼びかけ | 防犯アプリふくいポリス、特殊詐欺対策アプリの利用 |
| 類似事案 | 大分市内の社会福祉法人でも同時期に1,990万円の同種被害が発覚 |
何が起きたか
福井テレビの報道によると、福井県内の就労支援事業所の代表メールアドレスに、理事長をかたる人物から、後続の業務調整に備えてLINEの業務グループを新規に作成してほしいというメールが届きました。職員はこれを理事長本人からの指示だと信じ込み、指示通りにLINEグループを作成し、理事長をかたる人物をグループへ招待しています。
グループに招待された偽の理事長は、支払いが必要な分があるので先に支払いを済ませてから通常業務に戻るようにと指示し、支払いが完了したら振込明細のスクリーンショットを送るようにも求めました。職員はこの指示に従い、指定された口座へ現金500万円を振込送金しています。振込明細のスクリーンショットまで送らせるというひと手間は、被害者に対して手続きを最後まで完了させるための心理的な圧力をかけるとともに、攻撃者側が送金の完了を確実に把握するための工夫だと考えられます。
福井県警はこの被害を受け、日頃から防犯アプリふくいポリスや、警察庁が推奨する特殊詐欺対策アプリの利用を呼びかけています。なお、ほぼ同じ時期に大分県内でも社会福祉法人が代表者になりすました人物の指示で1,990万円をだまし取られる、同じ手口の被害が発覚しており、地域や法人の種類を問わず同種の攻撃が広がっていることがうかがえます。
原因
今回の事案の背景には、就労支援事業所のような福祉分野の組織が、日常的に多くの関係者とメールやLINEでやり取りをしているという業務特性があります。理事長や代表者からの依頼という形を取られると、それが通常の業務連絡の延長線上にあるものだと受け止めてしまいやすく、送金指示という金銭に関わる重大な依頼であっても、疑いを持たずに対応してしまう土壌があると考えられます。
技術的な観点から見ると、この手口が厄介なのは、攻撃の起点となるメールの時点ではなりすまし対策やスパムフィルターの対象になり得るものの、いったんLINEという個人間のやり取りに近いツールへ話が移ってしまうと、組織的な技術対策がほとんど効かなくなってしまう点です。振込明細のスクリーンショットを送らせるという追加の指示も、通常の業務連絡ではあまり見られない要求ですが、支払い後の事務手続きの一環として自然に紛れ込ませることで、職員に違和感を抱かせない工夫が凝らされていると考えられます。
情報システム部門への示唆
就労支援事業所や社会福祉法人に限らず、理事長・代表者を名乗る人物からの依頼であっても、LINEグループの作成や送金指示といった通常の業務フローから外れた要求があった場合には、メールやLINE以外の経路、具体的には電話や対面で本人に直接確認するというルールを組織内で明文化しておくことが重要です。今回のように振込明細のスクリーンショット送付まで求められるケースでは、その要求自体を怪しむのではなく、むしろ手続きが完結する直前の最後のチャンスとして、送金前にもう一度本人確認を挟む習慣をつけることが有効です。
あわせて、一定金額以上の送金には複数人の承認を必要とする多重承認フローを整備し、1人の職員の判断だけで送金が完結してしまう体制になっていないかを点検することをお勧めします。就労支援事業所のように限られた人員で運営されている組織ほど、こうした承認フローが形骸化しやすいため、規模に関わらず送金プロセスを定期的に見直す必要があります。技術的な対策が効きにくい手口であるからこそ、日頃からの注意喚起と訓練を通じて、職員一人ひとりが立ち止まって確認する習慣を組織文化として根付かせることが、最も現実的な防御策になります。








