Webカメラが中東有事の支援基盤に-Webカメラへハッキングし物理的な戦果確認や攻撃対象選定に利用

インテリジェンス

投稿日時: 更新日時:

Webカメラが中東有事の支援基盤に-Webカメラへハッキングし物理的な戦果確認や攻撃対象選定に利用

Check Point Researchは2026年3月4日、中東情勢の緊張が高まる中で、イランに関連すると同社がみる攻撃インフラから、IPカメラを狙う活動が2月28日以降に強まったとする調査レポートを公表しました。対象地域はイスラエルに加え、カタール、バーレーン、クウェート、UAE、キプロスに広がり、3月1日にはレバノンの特定地域に集中した動きも確認したとしています。Check Pointは、こうした活動がミサイル運用における戦果確認や目標補正の支援に使われている可能性があると評価しています。

概要

レポートによると、Check Pointが継続監視しているイラン系脅威アクターのインフラから、HikvisionとDahuaのIPカメラに対するスキャンや悪用の試みが増加しました。活動は2月28日から目立って増え、複数の商用VPN出口ノードとVPSを組み合わせた攻撃基盤が使われていたとしています。Check Pointは、この基盤が複数のイラン系アクターに利用されていると評価しています。

注目すべきなのは、今回の活動が単なる広域スキャンではなく、地域情勢とタイミングが重なっている点です。Check Pointは、1月14日から15日にかけても、イスラエルとカタールを中心に同様のカメラ標的化を確認しており、この時期はイラン国内の反政府抗議の高まりや、米国による攻撃懸念を背景にイランが一時的に領空を閉鎖した時期と重なると説明しています。

攻撃の戦果確認や目標確認にIPカメラを利用

レポートで指摘されているのは、IPカメラ侵害が単体のサイバー犯罪ではなく、物理戦の支援手段になっているという点です。

Check Pointは、2025年6月のイスラエルとイランの12日間の戦闘でも、カメラ侵害が戦果確認や目標補正に使われた可能性が高いとし、今回も同様の目的で使われている可能性があると評価しています。さらに、特定の攻撃インフラからのカメラ標的化を追うことが、その後の物理攻撃の早期兆候になり得るとも指摘しています。

悪用された脆弱性

CVE 脆弱性
CVE-2017-7921 Hikvision IPカメラファームウェアにおける不適切な認証の脆弱性
CVE-2021-36260 Hikvisionウェブサーバーコンポーネントにおけるコマンドインジェクションの脆弱性
CVE-2023-6895 Hikvisionインターコム放送システムにおけるOSコマンドインジェクションの脆弱性
CVE-2025-34067 Hikvision統合セキュリティ管理プラットフォームにおける認証されていないリモートコード実行の脆弱性
CVE-2021-33044 複数のDahua製品における認証バイパスの脆弱性

なぜIPカメラが重要なのか

IPカメラは企業や公共機関で大量に使われていますが、情シスやセキュリティ部門の管理対象から外れやすい資産です。ネットワーク上では目立たず、監視会社や設備ベンダー任せの運用になりやすく、古いファームウェアや初期設定のまま残ることも少なくありません。今回のレポートは、その見落とされがちな機器が、国家レベルの対立では偵察や戦果確認のインフラとして利用され得ることを示しています。

企業実務に引き直すと、工場、物流拠点、データセンター、発電設備、オフィス外周、病院、自治体施設などに設置されたカメラは、映像の盗み見だけでなく、施設稼働状況や出入り、損傷有無の把握にも使われ得ます。特に有事や地政学リスクの高まりがある局面では、カメラ侵害は単独の情報漏えいではなく、物理リスクと直結する問題になります。

 関連:Insecamとは 世界のWEBカメラ/監視カメラを閲覧できるサイト

情シス部門が押さえるべきポイント

今回のレポートから情シス部門が受け取るべき教訓は明確です。カメラをIT資産として扱い、サーバーやVPN装置と同じ粒度で管理しなければならないということです。Check Pointは、防御策としてインターネットからの直接公開をやめること、VPNやゼロトラスト経由に限定すること、初期パスワードの変更と一意な認証情報の採用、ファームウェア更新、ネットワーク分離、異常ログインや不審な外向き通信の監視を挙げています。

実務では、まず資産台帳に載っていないカメラやNVRの洗い出しが出発点です。そのうえで、外部公開の有無、ベンダー保守経路、古い機種の残存、共通パスワードの使用、社内LANとの接続状態を確認する必要があります。特にOTや物理セキュリティの領域は、情報システム部門のパッチ運用から漏れやすいため、設備部門や施設管理部門と合同で点検することが重要です。

参照

Interplay between Iranian Targeting of IP Cameras and Physical Warfare in the Middle East