2026年6月9日から11日にかけて、Springエコシステム全体で35件を超える脆弱性が一斉に公開されました。
この大規模なCVE開示は、Spring Security・Spring Web Services(Spring WS)・Spring Data・Spring Integration・Spring AMQP・Spring Web Flowなど主要コンポーネントの広範囲にわたります。
今回のうち特に注意が必要な4件は、企業のWebアプリケーションに直接的な影響を持つHIGH評価の脆弱性です。
CVE-2026-41003(Spring Security・HIGH)は、RelyingPartyRegistrationの値に影響を与えられる攻撃者が、Spring Securityフィルターが生成するHTMLフォームで任意スクリプトを実行できるXSS脆弱性です。
CVE-2026-40999(Spring WS・CVSS 8.6・HIGH)は、WS-AddressingのReplyToまたはFaultToヘッダーに含まれる未検証の宛先への外部接続が発生するSSRFです。CVE-2026-40998(Spring WS・CVSS 8.2・HIGH)は、XPathテンプレートでのXXEインジェクションであり、CVE-2026-40994(Spring WS・CVSS 8.2・HIGH)はWS-Security BSP(WS-I Basic Security Profileコンプライアンスフラグ)の検証が誤って無効化されるという問題です。Spring Securityの修正版は6.5.11(OSS)および7.0.6(OSS)です。
サマリー
- 公開日:2026年6月9日〜11日(spring.io/security一次確認)
- 対象コンポーネント:Spring Security・Spring WS・Spring Data・Spring Integration・Spring AMQP・Spring Web Flowなど
- 総CVE数:Springエコシステム全体で35件超(threat-modeling.com確認)
- 主要4件(HIGH)の概要:
| CVE | 深刻度 | CVSSスコア | 対象 | 攻撃種別 |
|---|---|---|---|---|
| CVE-2026-41003 | HIGH | — | Spring Security | XSS(HTMLフォーム未エンコード) |
| CVE-2026-40999 | HIGH | 8.6 | Spring WS | SSRF(WS-Addressing宛先未検証) |
| CVE-2026-40998 | HIGH | 8.2 | Spring WS | XXE(Jaxp13XPathTemplate) |
| CVE-2026-40994 | HIGH | 8.2 | Spring WS | BSP検証バイパス(Wss4jSecurityInterceptor) |
- Spring Securityの修正版:
- 6.5.11(OSS)・7.0.6(OSS)
- 5.7.24・5.8.26・6.3.17・6.4.17(Enterprise Support Only)
- 積極的な悪用の報告:現時点ではなし
- CVE-2026-41003のCVSSベクトル:
AV:N/AC:L/PR:L/UI:R/S:C/C:H/I:L/A:N(spring.io確認)
目次
Spring Securityとは——なぜこのCVEが重要か
Spring SecurityはJavaベースのアプリケーションに認証・認可・セキュリティ保護機能を提供する、Springエコシステムの中核的なセキュリティフレームワークです。Webアプリケーション・マイクロサービス・OAuth2/OIDCを実装するAPIサーバー・エンタープライズシステムなど幅広く利用されており、日本国内でも金融機関・製造業・SIerのJavaシステムに深く根付いています。今回のCVEは認証フィルターや認証プロバイダー設定など、セキュリティの最重要部分に存在するため、パッチ未適用の影響が大きくなります。
CVE-2026-41003:Spring SecurityのHTMLフォームXSS(HIGH)
脆弱性の内容
spring.io公式アドバイザリによれば、「RelyingPartyRegistrationの値に影響を与えられる攻撃者が、Spring Securityフィルターによって生成されるHTMLフォームで任意コードを実行できる可能性がある」とされています。
これは**Reflected XSS(反射型クロスサイトスクリプティング)**の一種です。Spring SecurityがSAML 2.0やOAuth2/OIDCの認証フィルターでHTMLフォームを生成する際、RelyingPartyRegistrationの設定値を正しくHTMLエンコードせずに出力するため、その設定値を操作できる攻撃者が悪意あるJavaScriptを注入できます。
CVSSベクトル:AV:N/AC:L/PR:L/UI:R/S:C/C:H/I:L/A:N(spring.io確認)
- AV:N(ネットワーク経由)・AC:L(複雑さ低)・PR:L(権限あり)・UI:R(ユーザー操作必要)・S:C(スコープ変更)・C:H(機密性への影響高)
影響を受けるバージョンと修正版
| 影響バージョン | 修正版 | 入手方法 |
|---|---|---|
| 5.7.0 〜 5.7.23 | 5.7.24 | Enterprise Supportのみ |
| 5.8.0 〜 5.8.25 | 5.8.26 | Enterprise Supportのみ |
| 6.3.0 〜 6.3.16 | 6.3.17 | Enterprise Supportのみ |
| 6.4.0 〜 6.4.16 | 6.4.17 | Enterprise Supportのみ |
| 6.5.0 〜 6.5.10 | 6.5.11 | OSS(公開版) |
| 7.0.0 〜 7.0.5 | 7.0.6 | OSS(公開版) |
旧バージョン(5.x・6.3.x・6.4.x)を使用している場合はEnterprise Support(Tanzu Spring)が必要です。6.5.xまたは7.0.xを使用している組織は無償のOSS版アップデートで対応できます。
CVE-2026-40999:Spring WSのSSRF(CVSS 8.6・HIGH)
脆弱性の内容
CVSSスコア8.6(AV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:C/C:H/I:N/A:N)というスコアが示す通り、この脆弱性は認証なしで悪用可能な深刻なSSRFです。
Spring WSがWS-Addressing(SOAPメッセージングの宛先を指定するヘッダー標準)を使用している場合、ReplyToまたはFaultToヘッダーに含まれる非匿名の宛先URLをフレームワークが検証なしに直接使用して外部接続を開始する問題です。
攻撃者はSOAPリクエストのWS-AddressingヘッダーにURLまたはIPアドレスを細工して注入することで、Spring WSサーバーに:
- 内部ネットワーク上のホスト(ファイアウォール内のサービス)への接続を強制
- クラウドインスタンスのメタデータエンドポイント(AWSの169.254.169.254等)へのアクセスを誘導
- ポートスキャンおよびネットワーク偵察
を行わせることができます。
CWE:CWE-918(SSRF)
CVE-2026-40998:Spring WSのXXE(CVSS 8.2・HIGH)
脆弱性の内容
Spring Web ServicesのJaxp13XPathTemplateクラスがStreamSourceおよびSAXSourceを使ったXPath評価時に、安全でないXMLパーサー設定を使用することに起因するXXEインジェクション脆弱性です。
外部XMLエンティティ(XXE)は、XMLパーサーが外部参照を解決する際に発生し、内部ファイルの読み取り・SSRFの誘発・サービス拒否(DoS)につながる可能性があります。SOAP Webサービスのエンドポイントで細工されたXMLリクエストを受け付ける環境が特に影響を受けます。
CVSSスコア:8.2(HIGH)
CVE-2026-40994:Wss4jSecurityInterceptorのBSP検証バイパス(CVSS 8.2・HIGH)
脆弱性の内容
Spring WSのWss4jSecurityInterceptorがBSP(WS-I Basic Security Profile)コンプライアンスフラグを、インバウンド検証時にWSS4JのBSP強制を無効化する形で初期化するという問題です。
これはsetBspCompliantセッターの文書化されたデフォルト動作およびWSS4J自体のセキュアなデフォルトに反します。BSP(WS-I Basic Security Profile)は、WS-Securityの安全な使用を保証するための相互運用性標準であり、非標準の署名形式や悪用されやすいWS-Securityの構成を排除するために存在します。
CVSSスコア:8.2(HIGH)
影響を受けるバージョン:Spring WS 2.4 〜 5.0.1
今回のSpring全体の大規模CVE開示——35件超
今回の4件はSpringエコシステム全体で同時開示されたCVE群の一部です。threat-modeling.comによれば「累積件数は現時点で35件以上」に達しており、以下のコンポーネントも影響を受けています。
| CVE | コンポーネント | 深刻度 | CVSSスコア | 概要 |
|---|---|---|---|---|
| CVE-2026-40988 | Spring Security(SAML) | MEDIUM | — | SAML 2.0 DEFLATEインフレーションによるDoS |
| CVE-2026-40991 | spring-restdocs | MEDIUM | — | ドキュメント生成時のXXE |
| CVE-2026-40993 | Spring Security(SAML) | MEDIUM | — | SAML認証情報のJavaデシリアライゼーション |
| CVE-2026-41008 | Spring Authorization Server | MEDIUM | — | request_uri経由のオープンリダイレクト |
| CVE-2026-41694 | Spring Security(SAML) | LOW | — | 署名なしでSAMLペイロードを復号 |
| CVE-2026-41695 | Spring Data Commons | HIGH | — | プロパティパス解析によるDoS |
| CVE-2026-41696 | Spring Data MongoDB | MEDIUM | — | @Queryの正規表現バインディングインジェクション |
| CVE-2026-41697 | Spring Data Relational | MEDIUM | — | QBEのLIKEパターン未エスケープ |
| CVE-2026-41701 | Spring AMQP | MEDIUM | — | 相関IDの予測可能性(返信ポイズニング) |
| CVE-2026-40987 | Spring Integration | HIGH | 7.1 | 任意ファイル書き込み |
| CVE-2026-40985 | Spring Web Flow | MEDIUM | 6.4 | Unified ELインジェクション |
| CVE-2026-40986 | Spring Web Flow | MEDIUM | 4.8 | XSS |
対応手順
① 使用しているSpringバージョンの確認
# Maven
mvn dependency:tree | grep "spring-security"
# Gradle
gradle dependencies | grep "spring-security"
② Spring Security 6.5.11または7.0.6へのアップデート
Maven(pom.xml):
<!-- Spring Boot 3.5.xを使用している場合(Spring Bootのバージョン管理を利用) -->
<parent>
<groupId>org.springframework.boot</groupId>
<artifactId>spring-boot-starter-parent</artifactId>
<version>3.5.x</version> <!-- Spring Boot 3.5対応版を確認 -->
</parent>
<!-- Spring Securityを直接指定する場合 -->
<dependency>
<groupId>org.springframework.security</groupId>
<artifactId>spring-security-core</artifactId>
<version>6.5.11</version>
</dependency>
Gradle(build.gradle):
implementation 'org.springframework.security:spring-security-core:6.5.11'
③ Spring WSの対応
Spring WS(CVE-2026-40999・40998・40994)の修正版については、Spring WS 5.0.2以降またはspring.io/security/cve-2026-40999等の個別アドバイザリで確認してください。
④ 優先対応ポイント
SAMLを使用したシングルサインオン(SSO)環境:CVE-2026-41003(XSS)の影響を受ける可能性が最も高いです。RelyingPartyRegistrationの設定を持つすべてのアプリケーションを優先してアップデートしてください。
SOAP Webサービスを提供している環境:Spring WS(CVE-2026-40999・40998・40994)の影響を確認し、Spring WS 5.0.2以降へのアップデートを実施してください。WS-Addressingを有効にしているサービスはCVE-2026-40999(SSRF・CVSS 8.6)のリスクが特に高くなります。
Spring Data・AMQPを使用している環境:CVE-2026-41695(Spring Data Commons DoS・HIGH)・CVE-2026-41701(Spring AMQP返信ポイズニング・MEDIUM)も同時に対処してください。
参考情報(一次ソース)
- spring.io「Security Advisories」(2026年6月9〜11日付・35件超)
- spring.io「CVE-2026-41003: Unencoded HTML Outputs in Spring Security May Allow Cross-Site Scripting」 ←
- Vulnerability-Lookup「CVE-2026-40999」(CVSS 8.6・CWE-918)
- HeroDevs「CVE-2026-40998」(XXE in Spring WS・CVSS 8.2)
- HeroDevs「CVE-2026-40994」(BSP bypass・CVSS 8.2)
- 当サイト関連:Apache CXF 4.2.2/4.1.7が7件の脆弱性を修正——同時期に発覚したJavaエンタープライズフレームワークの脆弱性群
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