PayPay株式会社は2026年6月18日、公式お知らせで、「送る・受け取る」機能の安全性をさらに強化するため、「請求リンク作成」および「マイコード表示」を使って残高を受け取る際に、本人確認(eKYC)を必須化したと発表しました。
本人確認が未完了のユーザーは、これらの機能を利用しようとすると「本人確認をしてください」という案内が表示され、請求リンクの作成やマイコードの表示自体ができなくなります。同社はこれまでも詐欺などの不正利用に対し監視・検知・注意喚起表示などの対策を実施してきましたが、今回はeKYC未完了のアカウントによる「請求」行為そのものを制限することで、送る・受け取る機能を悪用した不正利用や詐欺への対策を一段強化しました。
なお残高を送る機能、および携帯電話番号・PayPay IDでの受け取りについては、引き続きeKYCの手続きなしで利用可能です。背景には、悪質なショッピングサイトが「在庫がないためPayPayで返金する」などと称して購入者にPayPayを操作させ残高をだまし取る手口や、公金・利用料未払いを装うフィッシング詐欺が確認されていることがあります。本記事では今回の変更内容・対象となる3つの機能・背景にある詐欺の手口・利用者が取るべき対応を解説します。
サマリー
- 発表日・施行日:2026年6月18日(同日施行)
- 発表元:PayPay株式会社
- 必須化された機能:
- 請求リンクを作成して受け取る
- マイコードを表示して受け取る
- LINEアプリから請求リンクを作成して受け取る
- 必須化されない機能(継続して利用可能):
- 残高を送る機能
- 携帯電話番号・PayPay IDでの受け取り
- 目的:「送る・受け取る」機能の安全性強化。eKYC未完了アカウントによる請求を規制し、不正利用・詐欺への対策を強化
- eKYC未完了時の挙動:マイコード表示・請求リンク作成を試みると「本人確認をしてください」という案内が表示され、機能が利用できない
- eKYCの実施方法:マイナンバーカード・運転免許証等を使ってPayPayアプリから手続き
- PayPayの本人確認済みユーザー数:2026年6月時点で約3,000万人(全体6,400万ユーザーの約半数近く)。2026年3月時点では4,000万人(登録ユーザー約7,300万人)との報道もあり、報道間で数値にばらつきあり
- 同時期の関連改定:2026年6月2日より、eKYC未完了ユーザーは「PayPayステップ」のポイント付与・付与率アップの対象外に変更(先行する別の施策)
- 背景にある詐欺の手口(PayPay公式が言及):悪質ショッピングサイトが「在庫がないためPayPayで返金する」と称し、購入者にPayPayを操作させ残高をだまし取る手口
- 関連する注意喚起:2026年5月15日、公金や利用料の未払いを騙るフィッシングメール・SMSで「送る・受け取る」機能を使った送金を要求する手口についてPayPayが注意喚起済み
目次
対象となる3つの機能の詳細
請求リンクを作成して受け取る
個人間送金において、受け取り側が支払い用のURL(請求リンク)を生成し、SNS等で相手に共有して送金を求める機能です。
マイコードを表示して受け取る
「マイコード(Myコード)」と呼ばれる自分専用の二次元コードを友だちに読み取ってもらうことで、簡単に残高を受け取ることができる機能です。
LINEアプリから請求リンクを作成して受け取る
LINEアプリ上からPayPayの「送る・受け取る」機能を利用し、請求リンクを作成する機能です。LINEアプリ経由でも同様にeKYCが必須となりました。
いずれの機能も、eKYCが未完了の状態で利用を試みると「本人確認をしてください」という案内が表示され、請求リンクの作成・マイコードの表示自体ができません。
なぜ「受け取る」側にeKYCを求めるのか
「送る」側ではなく「受け取る」側を規制する設計
今回の施策で注目すべきは、規制の対象が**「残高を受け取る(請求する)」側**である点です。「残高を送る」機能には引き続きeKYCは不要とされています。
これは、詐欺における「金銭を要求する側」のアカウントの実在性・本人性を確認することで、不正な請求自体を未然に防ぐという設計思想に基づいています。攻撃者がeKYC未完了のアカウント(つまり身元確認が取れていない、使い捨てに近いアカウント)を使って不特定多数に請求リンクを送りつけたり、マイコードを表示して金銭を要求したりする行為を制限する効果が期待されます。
想定されている詐欺の手口
Impress Watchが報じたPayPayの説明によれば、同社が把握している悪用パターンの一例として「悪質なショッピングサイトで商品購入後、『在庫がないためPayPayで返金する』などと称し、購入者にPayPayを操作させて残高をだまし取る手口」が確認されています。
この手口では、詐欺グループが請求リンクやマイコードを使って被害者に「返金を受け取るための操作」を装わせ、実際には被害者の残高を詐取する、あるいは被害者に金銭を送らせるよう誘導する構造が想定されます。eKYCの必須化により、こうした請求行為の発信元の身元確認のハードルが上がることになります。
フィッシング詐欺との関連
ITmediaの報道によれば、PayPayは2026年5月15日にも、各種サービスの未払いや公金の未納を騙るフィッシングメール・SMSについて注意を呼びかけていました。通信料金・税金等の未納を理由に、PayPayアプリの「送る・受け取る」機能で残高を送金させようとする手口が確認されているとされ、今回のeKYC必須化はこうした一連の詐欺対策の流れの中に位置づけられます。
eKYCを取り巻く2026年の制度変更—今回だけではない一連の流れ
2026年6月2日:PayPayステップのeKYC連動
今回の発表に先立ち、2026年6月2日からは、PayPayの本人確認が完了していないユーザーは「PayPayステップ」(利用に応じたポイント付与制度)のポイント付与・付与率アップのカウント対象外となる変更が既に実施されています。この変更は2026年2月から告知され、新たにeKYCを完了したユーザーへの100ポイント付与キャンペーン(2月5日〜5月31日)も併せて実施されていました。
eKYC完了ユーザー数の拡大
PayPay公式によれば、2026年3月時点でeKYC完了ユーザーは約7,300万の登録ユーザーのうち4,000万人を突破したと発表されています
マネー・ローンダリング対策としての文脈
PayPayカードの公式説明によれば、eKYCの推進は不正利用対策のみならず、マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策やテロ資金供与対策の強化という、決済事業者としての法令遵守・金融犯罪対策の観点からも重要な取り組みとして位置づけられています。eKYC未完了ユーザーはPayPayクレジットでの支払い・チャージ時の上限金額が10万円までに制限されるなど、複数の制限が段階的に設けられてきました。
利用者が今すぐ確認すべきこと
①自分のeKYC完了状況を確認する
PayPayアプリのアカウント画面から、本人確認(eKYC)が完了しているかを確認してください。未完了の場合、今回対象となった3つの機能(請求リンク作成・マイコード表示・LINEアプリ経由の請求リンク作成)が利用できなくなります。
②eKYCを完了させる
eKYCはマイナンバーカードまたは運転免許証等の本人確認書類とスマートフォンがあれば、PayPayアプリから数分程度で手続きできます。審査結果が出るまでは数日かかる場合があるため、早めの対応が推奨されます。
③「返金」を装う詐欺に注意
ECサイトでの購入後に「在庫切れのためPayPayで返金する」といった連絡を受け、PayPayの操作を求められた場合は注意してください。正規のECサイトであれば決済した方法でそのまま返金処理を行うのが一般的であり、購入者側に追加の操作を求めること自体が不審な兆候です。
④公金・料金未払いを装うフィッシングに注意
「税金の未納」「通信料金の未払い」等を理由にPayPayでの送金を求めるメール・SMSには応じないでください。公的機関や正規の事業者がPayPayの個人間送金機能で支払いを求めることは通常ありません。
⑤受け取る側にも油断は禁物
eKYC必須化はあくまで「請求する側」の身元確認を強化するものであり、すべての詐欺を防げるわけではありません。身に覚えのない請求リンクやマイコードの読み取り要求があった場合は、内容を慎重に確認してから対応してください。
FAQ
Q. 携帯電話番号やPayPay IDでの受け取りもeKYCが必要になりますか? A. いいえ。携帯電話番号・PayPay IDでの受け取りについては、引き続きeKYCの手続きなしでPayPay残高を受け取ることができます。
Q. eKYCをしていないと送ることもできなくなりますか? A. いいえ。「残高を送る」機能は、引き続き本人確認(eKYC)の手続き不要で利用できます。今回制限されたのは「受け取る」側の機能のみです。
Q. すでにeKYCを完了している場合、何か追加の対応は必要ですか? A. 特に追加の対応は不要です。eKYCが完了していれば、これまでと同様に請求リンク作成・マイコード表示を利用できます。
参考情報
- PayPay「『請求リンク作成』『マイコード表示』で残高を受け取る際の本人確認(eKYC)必須化について」(2026年6月18日)
- ITmedia NEWS「『PayPay改悪』話題 本人確認しないと付与ゼロ、『ポイント利用でポイント付与』は終了」(2026年6月5日)
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