アジア大会直前、撮影ドローンが名古屋市役所西庁舎に衝突 申請・安全措置に不備、ドローンのテロ悪用リスク

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アジア大会直前、撮影ドローンが名古屋市役所西庁舎に衝突 申請・安全措置に不備、ドローンのテロ悪用リスク

愛知県と名古屋市は2026年9月19日、「あいち・なごやアート&ライツ」の広報記録撮影に使用していたドローンが、9月17日夜に名古屋市役所西庁舎へ接触・落下する事故が発生したと公表しました。

事故は第20回アジア競技大会の開幕2日前に発生しました。ドローンは名古屋市役所西庁舎の5階から6階付近の壁面に接触して落下しましたが、人的被害や庁舎の損傷は確認されていません。

愛知県によると、撮影日を変更した後、9月17日分について必要な手続きが行われておらず、飛行当日の立入管理措置など安全措置も十分ではありませんでした。実行委員会側も、受託者から「必要な申請を行った」との説明を受けていたものの、確認が不十分だったとしています。

今回の事故にテロとの関係を示す情報はありません。一方、警察庁は小型無人機を悪用したテロを警備上の脅威として位置付けており、アジア競技大会の開会式に合わせて一部施設の周囲おおむね1,000メートルをドローン飛行禁止区域に指定しています。本件は、イベント時のドローン運用で、飛行申請だけでなく委託先管理や安全確認が必要になることを示した事案です。

名古屋市役所へのドローン衝突事故のサマリー

確認できている内容:

  • 事故は2026年9月17日午後8時50分頃に発生しました。
  • 「あいち・なごやアート&ライツ」の広報記録撮影に使用していたドローン1台が名古屋市役所西庁舎へ接触・落下しました。
  • 機体は市役所西庁舎5階から6階付近の壁面に接触しました。
  • 人的被害、庁舎の損傷はいずれも確認されていません。
  • 事業の受託者は株式会社JR東海エージェンシーで、受託者が手配したカメラマンがドローンを飛行させていました。
  • 当初は9月14日と15日に撮影する予定で、受託者が国土交通省へ飛行に関する申請を行っていました。
  • 天候により撮影日を9月15日と17日に変更しましたが、9月17日分の必要な手続きが行われていませんでした。
  • 飛行当日は、立入管理措置など必要な安全措置も十分に講じられていませんでした。
  • 実行委員会は、受託者から必要な申請を行ったとの説明を受けていましたが、自らの確認も不十分だったとしています。
  • 実行委員会は今後、この事業でドローン撮影を行わないとしています。
  • 今回の事故がテロや意図的な攻撃だったことを示す情報は公表されていません。
項目 内容
発生日 2026年9月17日 午後8時50分頃
公表日 2026年9月19日
発生場所 名古屋市役所西庁舎前
ドローン 1台
用途 「あいち・なごやアート&ライツ」の広報記録撮影
運営受託者 株式会社JR東海エージェンシー
事故 西庁舎5~6階付近の壁面に接触し落下
人的被害 なし
庁舎損傷 なし
手続き 9月17日分の必要な手続きが未実施
安全措置 立入管理措置などが不十分
実行委員会の確認 不十分だったと説明
今後 当該事業でのドローン撮影予定なし

アジア・アジアパラ大会に合わせたライトアップの撮影中に発生

「あいち・なごやアート&ライツ」は、第20回アジア競技大会と第5回アジアパラ競技大会の開催に合わせ、名古屋市役所本庁舎と愛知県庁本庁舎をデジタルアートとライトアップで彩る事業です。

開催期間は2026年9月17日から10月24日までで、名古屋都心部の夜間観光の活性化を目的としています。

事故はイベント初日の9月17日に発生しました。撮影担当者は県庁西庁舎と市役所西庁舎前で広報記録用の映像を撮影していました。

アジア競技大会は9月19日に開幕しており、事故は大会開幕の2日前に当たります。

撮影日変更後、9月17日分の必要な手続きを行わず

愛知県の公表によると、当初のドローン撮影予定日は9月14日と15日でした。

受託者は、この2日間について国土交通省へ飛行に関する申請を行っていました。

その後、天候により撮影日を9月15日と17日に変更しましたが、追加された9月17日について必要な手続きが行われていませんでした。

国土交通省のDIPS2.0では、航空法上の特定飛行を行う場合、飛行日時、経路、高度などを含む飛行計画を事前に通報する必要があります。

また、人口集中地区、夜間、目視外、人や物件から30メートル未満などの条件で飛行する場合には、飛行方法や機体・操縦者の条件によって国土交通大臣の許可・承認が必要になります。

愛知県の9月19日の発表では、9月17日に未実施だった「必要な手続き」の詳細までは明らかにしていません。そのため、どの申請・通報が欠けていたかは公表内容を超えて断定できません。

立入管理措置などの安全対策も不十分

問題は行政手続きだけではありません。

実行委員会が受託者への聞き取りと関係書類を確認した結果、飛行当日に立入管理措置など、定められた安全措置が十分に講じられていなかったことも判明しました。

ドローンは市役所西庁舎の壁面へ接触した後、地上へ落下しています。

今回は人的被害がありませんでしたが、建物周辺に通行人やイベント観覧者がいる状況では、機体そのものの落下が事故につながる可能性があります。

実行委員会は、関係法令の遵守、必要な手続き、安全確保について受託者への指導を徹底し、情報共有を見直すとしています。

委託先任せではなく、発注側でも申請状況を確認

愛知県の発表では、必要な手続きと安全措置について受託者が実施する前提となっていました。

一方、実行委員会は受託者から「必要な申請を行った」と説明を受けていたものの、確認が不十分だったことを認めています。

ドローン撮影を外部委託する場合、発注側でも少なくとも次の事項を確認できます。

  • 実際の飛行日と申請・通報日が一致しているか
  • 飛行場所と経路が許可・承認や飛行計画の範囲内か
  • 当日の立入管理区域が設定されているか
  • 飛行禁止区域やイベントに伴う臨時規制がないか
  • 操縦者、機体、保険、緊急時対応の確認が済んでいるか
  • 日程や飛行場所を変更した場合に再確認する手順があるか

「委託先が申請済みと回答した」ことと、「発注者が申請内容を確認した」ことは別です。

警察庁はドローンを悪用したテロを警備上の脅威として位置付け

警察庁は、ドローンを含む小型無人機を悪用したテロ等について、未然防止と対処の両面から対策を進めています。

警察白書では、重要施設周辺の警戒、上空を飛行する小型無人機の早期発見、違法飛行に対する対処資機材の活用などを実施していると説明しています。

政府の「小型無人機等に係る緊急安全対策に関する報告書」でも、ドローンによる重要インフラへの攻撃について、機体の積載能力や施設への被害、長期間の機能停止につながる可能性を検討対象としています。

ドローンがテロ対策上問題となる理由は、次のように整理できます。

地上の警戒線を越えて施設へ接近できる

ドローンは道路や出入口を利用せず、上空から施設やイベント会場へ接近できます。

地上の入退場管理や車両検査だけでは対応できないため、重要施設では上空も警戒対象になります。

機体の衝突・落下そのものが危険になる

今回の事故でも、実際に庁舎へ接触して機体が落下しました。

故意でなくても、人が集中する場所へ機体が落下すれば負傷事故につながる可能性があります。大規模イベントでは、事故による避難や競技・式典の中断も運営上のリスクになります。

物品を運搬できる

政府は、小型無人機の積載能力を悪用した重要施設への攻撃を安全保障上の検討対象としています。

このため、重要施設周辺では「撮影用かどうか」だけでなく、許可・通報された機体か、予定された経路を飛行しているかという確認が必要になります。

上空から施設内外を観察できる

カメラを搭載したドローンは、地上から確認しにくい場所を上空から撮影できます。

通常の撮影用途でも使われる機能ですが、警備配置や施設の状況を意図せず撮影する可能性があるため、大規模イベントや要人関連施設では飛行範囲の管理が必要です。

アジア大会では重要施設周辺1,000メートルを飛行禁止に

警察庁は第20回アジア競技大会に関連し、小型無人機等飛行禁止法に基づいて一部施設を「対象特別要人所在施設」に指定しました。

愛知県警によると、次の区域では大会期間に合わせてドローン等の飛行が原則禁止されています。

対象施設 飛行禁止期間
エスパシオ ナゴヤキャッスル 2026年9月19日~20日
名古屋市瑞穂公園陸上競技場 2026年9月19日

対象施設の敷地・区域だけでなく、その周囲おおむね1,000メートルの上空も規制対象です。

飛行禁止区域で例外的に飛行する場合には、施設管理者等からの同意や警察への事前通報などが必要になります。

この規制は今回ドローンが衝突した9月17日の名古屋市役所西庁舎事故とは別の制度・場所・期間です。事故が発生したことを理由に設定されたものでもありません。

2026年7月から飛行禁止区域を周囲おおむね1,000メートルへ拡大

小型無人機等飛行禁止法は2026年に改正され、7月14日に施行されました。

警察庁によると、対象施設の飛行禁止区域は、施設の敷地・区域に加えて、その周囲おおむね1,000メートルまで対象となっています。

また、対象特別要人所在施設や国際会議の準備・運営に使われる施設なども規制対象として指定できる制度が整備されました。

大規模スポーツ大会や国際会議では、競技会場だけでなく、要人が滞在・利用する施設もドローン規制の対象になる場合があります。

大規模イベントで確認したいドローン対策

自治体、イベント主催者、施設管理者がドローン撮影を利用する場合、安全管理と警備の双方で確認事項を整理します。

  • イベント期間中の臨時飛行禁止区域を確認しているか
  • 航空法上の許可・承認と、小型無人機等飛行禁止法の手続きを区別して確認しているか
  • 委託先から申請書や通報内容の写しを受け取っているか
  • 撮影日、時間、場所を変更した場合に再申請・再通報の要否を確認する手順があるか
  • 警備部門、イベント運営、広報、撮影事業者で飛行予定を共有しているか
  • 正規に飛行するドローンの機体・操縦者・時間帯を警備側が把握しているか
  • 予定外のドローンを確認した際の通報・中止判断の連絡先を決めているか
  • 観客や通行人が立ち入らない範囲を確保できているか
  • 落下や通信断などが発生した場合の初動対応を決めているか

今回の事故では、人的・物的被害はありませんでした。一方で、9月17日分の必要な手続きと飛行当日の安全措置に不備があり、発注側の確認も不十分でした。

国際大会や要人来訪時は、正規の撮影機と不審な飛行を警備側が識別できるよう、飛行予定を事前共有する運用も確認対象になります。

出典