
2024年9月17日 米司法省は中国人男性のソン・ウー容疑者(39歳)を訴追する事を発表しました。同容疑者は標的型攻撃メールでNASAや米軍からミサイル開発に不可欠なソフトウェアを不正に入手した疑いがあり、同氏は現在逃亡中です。
容疑の概要
中国国籍のソン・ウー容疑者(39歳)は、米国を拠点とする研究者やエンジニアを装った偽のメールアカウントを作成し、複数の組織に対して標的型攻撃メールを送信し、ミサイル開発や兵器開発に必要なソフトウェアの提供を依頼していました。
なお、ソン容疑者は依然、逃亡中です。
標的型攻撃メールの送信先
ソン容疑者が作成した標的型攻撃メールの送信先は
NASA、空軍、海軍、陸軍、連邦航空局など米国政府機関の職員、ジョージア州、ミシガン州、マサチューセッツ州、ペンシルベニア州、インディアナ州、オハイオ州の著名な研究大学や、航空宇宙分野の民間企業などで多数の企業や組織が対象でした。
標的型攻撃メールの送付目的
ソン容疑者は標的型攻撃メールを送付し、航空宇宙工学や数値流体力学に使用される特殊な制限付きまたは独占的ソフトウェアを入手したとされています。
この特殊なソフトウェアは、高度な戦術ミサイルの開発や兵器の空力設計と評価など、産業および軍事用途に使用できます。
ソン・ウー容疑者のバックグラウンド
起訴状によると、この標的型攻撃メール攻撃を行っていた当時、ソン容疑者は北京に本社を置く中国の国有企業で、航空宇宙防衛コングロマリットである中国航空工業集団(AVIC)にエンジニアとして勤務していました。
AVICは民間航空機と軍用航空機を製造しており、世界最大の防衛関連請負業者の1つです。
起訴状によると、ソン容疑者は2017年から2021年にかけて、身元不明の人物らの協力を得てスピアフィッシング攻撃に関与していたとして、通信詐欺 14 件と悪質な個人情報窃盗 14 件の罪で起訴されています。
もし、有罪判決が下れば、通信詐欺 1 件につき最高 20 年の法定刑が科せられる可能性があります。
なお、同容疑者への訴追は現在疑惑の段階であり、米国政府は同市の有罪を証明する必要があります。
中国の国家戦略と航空宇宙産業
2015年5月に中国は自国発展の戦略として「中国製造2025」を発表し
「3ステップ」で製造強国になるという戦略目標の実現を図ると目標にしています。
中国はこの戦略に該当する分野は、合法、非合法問わず積極的に投資しており企業スパイや不正アクセスによる情報窃取を積極的に行っており、航空宇宙設備もこの分野に該当します。
アメリカだけでなく、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ中国が複数回の不正アクセスを行っている事が確認されています。
参照
Justice Department Announces Five Cases Tied to Disruptive Technology Strike Force
Chinese Hacker Targeted NASA, U.S. Military to Steal Critical Software