
2025年5月、米政府が発表した2026年度予算案において、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)の予算が大幅に削減されることが明らかになりました。削減額は4億9100万ドルに上り、CISAがこれまで担っていた「誤情報対策」や「国際連携」といった領域が廃止対象となります。
削減理由:「武器化」された言論監視機能の廃止
予算案では、CISAが「検閲産業複合体(Censorship Industrial Complex)」の中核を担い、米国市民の言論の自由を侵害していたと批判。
なかでも、誤情報対策部門や国際協力部門が、「政権批判者をターゲットにした言論統制の拠点」として機能していたとし、それらのプログラムは全面廃止される見込みです。
「CISAは本来、国家の重要インフラを守る任務を担うべきであり、プロパガンダの監視や政府の自己宣伝にリソースを費やすべきではない」とし、予算案ではその「本来の役割」への回帰が掲げられています。
CISAの役割と影響
CISAは、2018年に国土安全保障省(DHS)内に設置された比較的新しい機関で、連邦政府や重要インフラに対するサイバー脅威への防御、インシデント対応、情報共有などを担っています。
特に2020年以降は、選挙に関連した誤情報への対策や、ソーシャルメディアとの連携を強化してきました。
しかし、その活動は共和党を中心とした保守層から「政府による言論弾圧」「表現の自由の侵害」として厳しく批判されており、今回の予算削減はその流れを受けたものと見られます。
今後の懸念と展望
CISAの情報発信機能や外部連携プログラムが廃止された場合、選挙の整合性確保や誤情報対策に空白が生じる懸念もあります。特に州政府や地方自治体との協調体制が弱体化することで、2026年の中間選挙などでのサイバー脅威への対応力が問われることとなりそうです。
ただし、今回の予算案はホワイトハウス側の提案に過ぎず、議会での審議や修正を経て最終決定されます。CISAの将来とアメリカのサイバーセキュリティ政策の方向性は、今後の政治情勢に大きく左右されることになるでしょう。