選挙期間中のSNS上の偽情報・誤情報対策を強化する改正公職選挙法および改正情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)が2026年7月13日、参議院本会議で与野党の賛成多数により可決、成立しました。与野党6党が共同提出したこの改正法は、SNS利用者に対して選挙の公正を害する偽情報の公表を控えるよう求めるとともに、SNS事業者に対しては偽情報の拡散防止に向けた対策を義務付けています。一方で、罰則の新設は見送られました。2027年3月1日に施行され、同年春の統一地方選挙から適用される見込みです。
サマリー
- 改正公職選挙法・改正情プラ法は2026年7月13日、参議院本会議で可決、成立した。自民党・中道改革連合・日本維新の会・国民民主党・参政党・チームみらいの与野党6党が共同提出しており、日本共産党も委員会審議の段階で賛成討論を行うなど、幅広い会派の支持を得て成立した
- 施行日は2027年3月1日で、同年春の統一地方選挙から新たなルールが適用される
- インターネット利用者に対しては、虚偽の事項の公表その他事実を歪めて公にすることにより選挙の公正を害することがないようにしなければならないと明記された。従来の公選法は同種の規定を「努力義務」としていたが、今回の改正でより明確な規定へと強化された
- 生成AI(人工知能)で作成した選挙関連の画像・動画のうち、実際の撮影と誤認されるおそれがあるものについては、AIで作成した旨の表示を義務付ける
- SNS事業者に対しては、偽情報の拡散による選挙への悪影響を軽減するための必要な措置を講じるよう義務付け、具体的な対策の内容は事業者の裁量に委ねつつ、講じた措置の状況を年1回公表させる。総務大臣が策定する指針の内容には、偽情報を発信した投稿者の収益化の制限を含めるかどうかも今後の各党協議会で議論される見込み
- 罰則の新設は見送られた
- あわせて、有権者が電子メールで特定の候補者への投票を依頼できるようにする改正も行われた。2013年の公職選挙法改正でホームページやSNSの選挙運動利用が解禁された際、メールの使用は政党・候補者のみに限定されていたが、今回これが緩和される
- インターネットを通じた在外投票や、街頭演説の妨害行為への対応については、引き続き検討する旨の検討規定が設けられた
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成立日 | 2026年7月13日(参議院本会議) |
| 改正対象法 | 公職選挙法、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法) |
| 共同提出会派 | 自民党、中道改革連合、日本維新の会、国民民主党、参政党、チームみらい(6党) |
| 施行日 | 2027年3月1日 |
| 適用開始 | 2027年春の統一地方選挙から |
| 利用者への義務 | 虚偽事項の公表等により選挙の公正を害さないようにする責務の明記 |
| AI生成物への対応 | 実写と誤認されうるAI生成画像・動画への表示義務 |
| 事業者への義務 | 偽情報拡散防止のための必要な措置、講じた措置の年1回の公表 |
| 罰則規定 | 新設なし |
| その他の改正内容 | 有権者による特定候補者への投票依頼メールの解禁 |
| 検討規定 | ネット在外投票、街頭演説の妨害行為への対応 |
何が起きたか-成立までの経緯
参議院は2026年7月13日の本会議で採決を行い、改正公職選挙法・改正情プラ法を賛成多数で可決、成立させました。この改正法は自民党・中道改革連合・日本維新の会・国民民主党・参政党・チームみらいの与野党6党が共同提出したものです。衆議院では2026年6月25日に政治改革に関する特別委員会で全会一致により可決されており、参議院でも同年7月10日の政治改革特別委員会で日本共産党などの賛成多数により可決されたうえで、今回の本会議採決に至っています。
法案がまとめられた背景には、選挙期間中のSNS上での偽情報・誹謗中傷の拡散が有権者の判断を歪めているとの問題意識があります。
国会に提出された質問主意書でも、2024年11月17日執行の兵庫県知事選挙を念頭に、SNS上での誹謗中傷やデマ・捏造とみられる発信によって何が真実か分からなくなる事態や、特定候補者を支援する団体のSNSアカウントが虚偽の通報により凍結された事例などが指摘されており、こうした経緯を踏まえて与野党協議が進められてきました。与野党は2026年5月14日に法制化について合意し、同年6月16日には罰則を設けない方針を含む要綱案について合意しています。
改正の主な内容
改正法の柱は大きく3点です。
1点目は、インターネット利用者への責務の明記です。虚偽の事項を公表したり、事実を歪めて公にしたりすることにより選挙の公正を害することがないようにしなければならないと定められました。従来の公職選挙法にも、悪質な誹謗中傷によって公正な選挙に悪影響を与えないよう求める規定はありましたが、これは努力義務にとどまっていました。今回の改正では、選挙の公正を損なう行為を「違法行為」とみなす形で、より明確な位置づけが与えられています。
2点目は、生成AIで作成されたコンテンツへの対応です。
AIで作成された選挙関連の動画・画像のうち、実際の撮影によるものと誤認されるおそれがあるものについて、AIによって作成された旨の表示が義務付けられます。
3点目は、SNS事業者への義務付けです。偽情報の拡散による選挙への悪影響を軽減するため、事業者は必要な措置を講じることが求められます。
具体的にどのような措置を講じるかは事業者の裁量に委ねられていますが、講じた措置の状況について年1回の公表が義務付けられます。国会審議では、投稿の閲覧数に応じて投稿者が収益を得られる仕組み(いわゆる収益化)を制限する措置が含まれるかどうかも論点となり、法案提出者の自民党・鈴木英敬議員は、総務大臣が策定する指針の内容について、各党協議会で引き続き議論していく考えを示しています。
なお、罰則の新設は見送られました。あわせて、有権者が電子メールを使って特定の候補者への投票を依頼できるようにする改正も行われています。2013年の公職選挙法改正でホームページやSNSを選挙運動に利用することが解禁された際、メールの利用は政党・候補者のみに限定されていましたが、今回この制限が緩和されました。インターネットを通じた在外投票や、街頭演説の妨害行為への対応については、法改正には至らず、引き続き検討する旨の検討規定が置かれています。
各党の見解
今回の改正法は、与野党6党の共同提出という形を取っており、審議の過程でも比較的幅広い会派の支持を集めた点が特徴です。衆議院の特別委員会では全会一致で可決されており、参議院の委員会審議でも日本共産党の山添拓議員が賛成討論に立っています。
日本共産党は、賛成の立場を取りつつも独自の問題意識を示しています。
山添氏は、偽情報・誤情報の流通によって選挙の公正が脅かされる事態の背景には、公職選挙法における選挙運動規制がそもそも厳しすぎるという問題があると指摘し、立会演説会の復活や、政党・候補者による討論会に関する規制の見直し、ファクトチェックを通じた有権者への判断材料の提供など、規制強化だけでなく現実の場での反論・討論の環境整備をあわせて進めるべきだと主張しました。また、衆議院段階では同党の塩川鉄也議員が、SNS事業者が講じるべき措置の内容について総務大臣が指針を策定するとされている点に触れ、行政側が選挙運動の内容に関する指針を作ることには議会制民主主義の観点から懸念があるとの指摘も行っています。これに対し法案提出者側は、指針の内容は各党協議会での議論を踏まえて策定するものだと説明しています。
公明党は、自民党・中道改革連合などとともに2026年5月14日の時点で選挙期間中のSNS適正利用に向けた法案の作成に合意しており、法案提出会派には名を連ねていないものの、SNS事業者への義務付けやAI生成物への表示義務といった方向性の形成に関わってきた経緯があります。
立憲民主党についても、本会議当日に党首が定例記者会見を行うなど国会全体の会期末対応の一環として法案審議に関わっていますが、本稿執筆時点で同党独自の反対表明は確認されていません。
出典
- SNS偽情報の対策、27年春の統一地方選から義務づけ 改正2法が成立 – 日本経済新聞
- 選挙時のSNS規制に関する改正法が成立 – テレビ朝日系(ANN)/Yahoo!ニュース
- 選挙のSNS規制法案、今国会で成立へ AI作成物は表示義務、フェイク情報を流した投稿者の収益停止など – 東京新聞
- SNS選挙、利用者に責務 事業者は対策義務化―法改正原案 – 時事通信
- 選挙SNS規制法案可決/塩川氏「有権者の自由拡大を」/衆院政治改革特 全会一致 – しんぶん赤旗
- 選挙SNS規制へ – 日本共産党東京都委員会
- 与野党が法制化合意 選挙中のSNS適正利用 – 公明党
- 選挙期間中のSNS規制の必要性に関する質問主意書 – 衆議院








