
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2025年4月15日、セキュリティインシデントへの対応力を高めるための「セキュリティインシデント対応机上演習教材」を公開しました。本教材は、特に中小企業や医療機関を対象にしたもので、ランサムウェアによる感染を想定したシナリオを通じて、実践的な対応能力を養うことを目的としています。
背景:インシデント発生時の初動対応の重要性
近年、サイバー攻撃の対象は大企業だけでなく、情報セキュリティ対策が不十分な中小企業や医療機関にも広がっています。インシデントが発生した際には、被害の最小化と事業継続の確保が急務となります。そのためには、日頃から対応体制の整備と訓練を行い、緊急時に適切な判断ができることが重要です。
IPAはこうした状況を踏まえ、これまで中小企業向けに演習イベントを開催してきましたが、より広範な活用を促すために、今回の教材をオンラインで無償公開しました。
教材の内容と構成
公開された教材は、以下2種類の対象向けに用意されています。
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一般企業(中小企業)向け
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医療機関向け
いずれも実際に起こり得るランサムウェア感染を想定したシナリオに基づき、机上でのインシデント対応を訓練することができます。
教材構成
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座学パート: 「中小企業のためのセキュリティインシデント対応手引き」に準拠し、インシデント対応の基本的な流れを学ぶ内容。
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演習パート: 受講者がグループに分かれ、感染発生後の対応方針・方法を議論、発表しながら実践力を高める構成。
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実施マニュアル: 演習準備から当日の運営方法、終了後のフォローアップ、ファシリテーター向けの解説などが詳細に記載されており、社内研修などでそのまま活用可能。
利用方法と留意点
教材はIPAの公式サイトよりZIPファイル形式でダウンロード可能です(ファイルサイズ:約6.5MB)。カスタマイズも許可されており、企業や組織ごとの実情に応じた内容変更が可能です。ただし、営利目的での利用や再販売・再配布は禁止されているため、利用に際してはマニュアルの指示に従う必要があります。
情報システム部門が活用すべきポイント
情報システム部門やCSIRT(インシデント対応チーム)が本教材を活用することで、次のようなメリットが期待されます。
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社内における実践的な初動対応力の向上
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インシデント対応フローの見直しと可視化
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リスクコミュニケーションや意思決定の訓練
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セキュリティ文化の醸成と平時からの意識向上
特に、定期的な演習実施によって、システム担当者のみならず経営層や現場部門の関係者も含めた全社的な対応能力の底上げにつながる点が重要です。