
大日本印刷株式会社(DNP)は2025年5月30日、グループ会社であるシミックCMO株式会社の米国子会社「CMIC CMO USA Corporation(以下、CCU)」が、サイバー攻撃により被害を受けたことを公表しました。なお、4月30日ランサムウェアグループ Qilin が同社へのサイバー攻撃を主張しています。
目次
被害の概要と対応状況
CCUでは攻撃を受けた直後から、サイバーセキュリティの専門家の協力を得て、システムの防御・調査体制を強化。現在も被害の範囲や影響の特定に向けた調査が継続されています。加えて、米国の法執行機関へもすでに通報済みとのことです。
また、被害を受けたサーバーはCCU内部に限られており、DNPグループ内の他の拠点(日本を含む)とは接続されていないことから、他グループ企業や国内顧客への波及は確認されていないとしています。
Qilinの主張
4月30日ランサムウェアグループ Qilin はダークウェブ上のリークサイトでCMIC CMO USA Corporationへのサイバー攻撃と不正アクセスアクセスを主張しています
セキュリティ対策 Labでサンプルデータを確認したところ以下の画像が掲載されていました
- 職務規定
- 特定のメールの情報
他
なおランサムウェア グループは自身の功績を大げさに記載する事もあるので、同社への問い合わせは控える必要があります。
ランサムウェアグループ「Qilin」の概要
2025年、ランサムウェア攻撃グループ「Qilin(キリン)」が、日本国内の複数の企業・団体に対するサイバー攻撃を行ったと主張し、ダークウェブ上に被害企業のデータを掲載するなど、犯行声明を相次いで公開しています。以下は主な事例とその概要です。
医療法人DIC 宇都宮セントラルクリニック(栃木県)
2025年2月18日、宇都宮セントラルクリニックはサーバーがランサムウェアに感染し、最大30万人分の個人情報が漏えいした可能性があると公表しました。
これに関連し、Qilinは同院への攻撃を主張し、135〜140GBにおよぶ医療データを流出させたと発表しました。漏えい情報には以下が含まれるとされています:
- X線画像
- 患者の診療記録
- 心電図・ホルター心電図
- 医療検査データ
- 保険証の画像
- 医療機器マニュアル、会議の議事録など
Qilinは「クリニックは協議に応じなかったため、公開に踏み切った」と主張し、「佐藤俊彦理事長の不備により、利用者のプライバシーが危険にさらされた」と批判しています。
原田工業株式会社(東京都)
2025年、Qilinは車載アンテナ等を製造する原田工業に対し、約942GBの機密データを流出させたと主張しました。
データの内容には以下が含まれているとされています:
- 海外拠点を含むサプライヤー情報
- 製品開発に関する設計書や2D/3D図面
- 財務データ、契約書、SWOT分析
- 社員の個人情報(パスポート、ビザ情報、家族データなど)
- トヨタ、ホンダ、フォードなど主要自動車メーカーに関する資料
犯行声明では「Haradaはデータ保護に無関心である」と非難し、「ビジネスパートナーとして不適格」とまで記しています。
光精工株式会社(三重県)
2025年1月19日、光精工株式会社はサイバー攻撃によるセキュリティインシデントを発表しましたが、それに先立ちQilinが同社への攻撃と情報窃取を主張。
同グループは約300GB超と見られる社内文書や機密情報を保有しているとしています。
長崎船舶装備
2025年5月6日 ランサムウェア攻撃グループ「Qilin」が、リークサイトへ長崎船舶装備株式会社に名称を掲載しました。
海外での活動:ロンドン Synnovis 医療機関
Qilinは2024年6月、ロンドンの医療検査機関「Synnovis」に対するランサムウェアによるサイバー攻撃にも関与したとされ、一部地域で医療業務が停止しました。