
金融庁は2025年6月5日、不正アクセスによる証券口座の乗っ取り被害が急増しているとして、改めて強い注意喚起を行いました。2025年1月から5月の5ヶ月間で確認された不正アクセスは10,422件、不正取引は5,958件に上り、売却・買付金額は合計で5,200億円を超えました。
被害の推移と実態
月 | 不正アクセス件数 | 不正取引件数 | 売却金額 | 買付金額 |
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1月 | 96件 | 39件 | 約0.8億円 | 約0.7億円 |
2月 | 71件 | 33件 | 約1.0億円 | 約0.6億円 |
3月 | 1,420件 | 687件 | 約129億円 | 約128億円 |
4月 | 5,279件 | 2,910件 | 約1,540億円 | 約1,346億円 |
5月 | 3,556件 | 2,289件 | 約1,101億円 | 約993億円 |
累計 | 10,422件 | 5,958件 | 約2,772億円 | 約2,468億円 |
特に4月の被害が顕著で、不正アクセス件数と被害金額が大きく跳ね上がっており、短期間に集中的な攻撃が仕掛けられたと見られます。
典型的な手口
被害の多くは、フィッシングサイトでログイン情報(IDやパスワード)を盗まれた後、不正に口座へアクセスされ、保有株式を勝手に売却、得た資金で小型株を買付けるという流れです。この結果、被害者の口座には価値の不明な小型株が残されることになります。
著名投資家も被害に
著名な個人投資家であるテスタ氏も、楽天証券の口座が第三者に乗っ取られたとX(旧Twitter)上で明かしており、これまでのセキュリティ対策(ウイルス対策ソフトの常時稼働、定期スキャン)にも関わらず侵入を許した背景には、より巧妙なフィッシング技術があると見られています。
背後にある高度な攻撃基盤「CoGUI」
この攻撃の背景には、「CoGUI(コグイ)」というフィッシングキットが関係している可能性が指摘されています。
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日本のIPのみを標的にしたジオフェンシング
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ブラウザ・端末情報の事前取得
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正規サイトへリダイレクトする手口
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月1億通超の大量メール送信
といった極めて洗練された攻撃手法が確認されており、従来のフィルタリングやウイルス対策では検知が困難になっています。
金融庁の注意喚起と推奨対策
金融庁は証券会社の顧客に対し、以下の対策を強く推奨しています。