
SNSが選挙戦に与える影響が年々大きくなる中、自民党は2025年6月3日、SNS運営事業者に対し選挙関連の投稿の削除要請や収益制限を行える新たな制度のたたき台を公表しました。特に名誉を傷つける投稿の即時削除に重点を置いた内容となっており、今後の法整備や運用方針に注目が集まります。
目次
制度見直しの背景:選挙とSNSの関係
近年、SNS上では候補者や政党に対する誹謗中傷や虚偽情報の拡散が問題となっており、選挙の公正性や有権者の判断に悪影響を及ぼす懸念が高まっています。特に選挙期間中の「炎上投稿」や「ディープフェイク」などは、選挙結果を左右しかねない要因として各国で規制の対象となってきました。
今回示された主な内容
自民党のたたき台で盛り込まれた主な対策は以下の通りです
名誉毀損投稿の即時削除
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政党や候補者の申出に基づき、SNS事業者が問題投稿を即日削除するよう促す規定を新設。
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投稿内容が名誉を毀損すると判断された場合、スピーディな対応が可能に。
誹謗中傷投稿者への収益停止
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YouTubeなどのプラットフォームにおいて、誹謗中傷を行った投稿者には収益が支払われないようにする仕組みを導入することを提案。
候補者のSNS収益禁止
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選挙活動中に候補者がSNSで収益を得ることを禁じる方向での議論も提案。
「2馬力選挙」への対策
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当選を目的としない立候補(いわゆる“ダミー候補”)が特定候補を支援する事例への対応として、立候補届け出時に当選目的であることを宣誓させる案を提示。
考えられる問題点と課題
この制度案には、一定の効果が期待される一方で、表現の自由とのバランスをどう取るかが大きな課題となります。
判断基準の曖昧さ
「名誉を傷つける投稿」が具体的にどのような内容を指すかが曖昧である場合、正当な批判まで削除の対象になりかねず、言論の自由が不当に制限される恐れがあります。また、法的機関がその審査を行う場合、審査機関自体が長期化すると削除まで直ぐに対応できなくなります。
運営側の負担と恣意的運用のリスク
SNS事業者が即時に削除判断を求められることは、過剰な責任を事業者側に負わせることにもなりかねません。また、政権与党による恣意的な削除要請が行われれば、公平な選挙活動を妨げる可能性もあります。
技術的な実効性の限界
投稿者の収益停止についても、収益化の手段が多様化している現状においては、単一のプラットフォームでの対処では抜け穴が生じる可能性があります。
今後の展望
自民党はこのたたき台を6月4日の与野党協議に提示予定です。SNSと選挙の適切な関係構築に向けて、実効性のある制度と透明な運用ルールの確立が求められます。
SNSが選挙戦にもたらした結果─ルーマニアの例に見る現実
SNSは誹謗中傷だけでなく、他国からの介入を防ぐ仕組みや法的規制も必要であります。
ルーマニアでは2024年11月24日に行われた大統領選挙の1回目の投票で、無名の存在だったロシア寄りの主張を掲げる無所属のジョルジェスク氏がTikTokのアルゴリズムを活用した動画拡散運動で、選挙運動開始前の世論調査では1%だったが、当日には23%の支持率で勝利しました。
第2回投票は12月8日に予定されていましたが、ルーマニアの憲法裁判所が「公正な選挙の過程が損なわれた」として、選挙を無効とする判断を下しました。
ルーマニア諜報機関が12月4日に機密解除した文書には、ジョルジェスク氏が選挙資金を一切使わないと公式に宣言しているにもかかわらず、同氏の選挙運動の背後に複雑な資金調達の仕組みがあることが示唆されています。
選挙キャンペーンは11月13日~26日の間に活動が急増し、TikTok上で「#echilibrusiverticalitate」などの選挙関連ハッシュタグが使われる動画が世界トレンドの9位にランクインし、視聴数は数億回に達しました。
拡散活動にはTikTok インフルエンサーを活用されていました。
一部参照
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250603/k10014824991000.html