Google、サードパーティークッキー廃止方針を撤回

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Google、サードパーティークッキー廃止方針を撤回 Privacy Sandboxの未来と業界への影響

2025年4月22日、Googleは公式ブログで、Chromeブラウザにおけるサードパーティークッキーの廃止を見送る方針を明らかにしました。これにより、2019年から進められてきた「Privacy Sandbox」プロジェクトの中核方針が大きく転換されることとなります。

そもそも「サードパーティークッキー廃止」とは何だったのか

サードパーティークッキーとは、訪問しているWebサイトとは別のドメインが設定するCookieであり、主にユーザーの行動追跡や広告配信に利用されてきました。

しかし、ユーザーのプライバシー保護の観点から、AppleのSafariやMozillaのFirefoxではすでにブロックが標準化されており、Googleも追従する形で2020年代前半にはChromeでの廃止を表明していました。

一方でGoogleの立場は他のブラウザと異なり、広告ビジネスを大きく支える企業であることから、単純な「ブロック」ではなく、広告エコシステム全体を維持しながらプライバシー保護を両立させる新たな枠組み「Privacy Sandbox」の開発が進められてきました。

この「Privacy Sandbox」は、個人の識別子を使わずに広告を配信・測定するためのAPI群で構成されており、業界関係者や規制当局(特に英国のCMAやICO)との調整のもと、慎重に導入が進められていました。

なぜ撤回に至ったのか:業界の分断と環境変化

今回の発表では、サードパーティークッキー廃止に関する新たなプロンプトの導入を見送ること、そして既存のCookie制御機能を引き続きユーザーの設定に委ねることが明記されました。

Googleのプライバシー担当VPであるAnthony Chavez氏は、以下のような理由を挙げています

  • パブリッシャーや広告業界などステークホルダーの意見の相違

  • AIや新技術の発展によるプライバシー保護手段の多様化

  • 規制環境の変化(GDPRをはじめとする世界各国のルール整備の進展

  • 現実的な対応として、ユーザー選択制を継続するほうが柔軟であるとの判断

つまり、Privacy Sandboxの開発そのものは継続するものの、サードパーティークッキーを全面的に廃止し、それを代替する新技術への強制的な移行は、当面見送られることになります。

実際のChromeユーザーへの影響

今回の発表により、ユーザーは引き続き「プライバシーとセキュリティ設定」内でサードパーティークッキーの扱いを個別に選択することができます。

また、Chromeのシークレットモードではデフォルトでサードパーティークッキーがブロックされており、今後は「IP Protection」などの追加機能が2025年第3四半期に導入予定です。

さらに、Safe Browsingや内蔵パスワード保護、AIを活用したセキュリティ機能など、Chrome全体としてのセキュリティ強化も継続されます。

今後の展望:Privacy Sandboxは続くが、その「位置付け」は変わる

Googleは、Privacy Sandbox APIの開発と実装を継続するものの、「サードパーティークッキーの代替」としての主軸から、「選択肢の一つとして業界全体に貢献する形」への移行を示唆しています。

今後数カ月で、Googleは業界関係者からのフィードバックをもとに、更新されたロードマップを発表予定としています。

まとめ

Googleの方針転換は、Web広告業界とプライバシー保護のバランスを再考する大きな転機です。廃止が撤回された今こそ、企業は一時的な安堵にとどまらず、将来を見据えた持続可能なデータ活用とユーザー保護の両立を目指した戦略構築が求められます。今後のGoogleの動向とともに、業界全体の対応に注目が集まります。