神戸市、税務端末を私的利用した職員を減給 自身14回・家族8回に納付書を細分化、利用料約600円を回避

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神戸市、税務端末を私的利用した職員を減給 自身14回・家族8回に納付書を細分化、利用料約600円を回避

神戸市が、税務関係の業務に従事していた行財政局の女性職員について、職務用端末を私的に操作し、自身や家族の固定資産税を通常より細かく分割して支払えるよう納付書を再発行したとして、減給10分の1・1カ月の懲戒処分にしたと神戸新聞が2026年8月31日に報じました。

神戸新聞によると、職員は2024年12月から2025年5月にかけて計15回、自身や家族の市税情報などを閲覧しました。2025年分の固定資産税について、自身は14回、家族分は8回に分けて支払えるよう納付書を再発行し、クレジットカード納付時のシステム利用料を計約600円抑えたとされています。

固定資産税そのものを減額したとの報道ではありません。神戸市の固定資産税は通常、一括または年4回に分けて納付する仕組みで、クレジットカードを利用する場合は納付額に応じたシステム利用料が発生します。

今回の事案は、外部からの不正アクセスや認証情報の窃取ではなく、職務上付与された権限を私的利益のために利用した事案です。神戸市の情報セキュリティ対策基準は、職員が業務以外の目的で情報システムへアクセスすることを禁止しています。

なお、本稿執筆時点で、8月31日の処分に関する神戸市の個別記者発表ページは公開検索から確認できませんでした。このため、処分内容や職員の操作回数、約600円という金額などは、神戸新聞が「市によると」と報じた内容に基づいています。一方、税務システムの機能、固定資産税の納付方法、情報セキュリティ上のルールについては神戸市の一次資料で確認しています。

神戸市職員による税務端末私的利用のサマリー

  • 神戸新聞は2026年8月31日、神戸市が行財政局の女性職員を減給10分の1・1カ月の懲戒処分にしたと報じました。
  • 職員は税務関係の業務に従事しており、2024年12月から2025年5月まで計15回、自身や家族の市税情報などを閲覧したとされています。
  • 2025年分の固定資産税について、自身は14回、家族分は8回に分けて納付できるよう納付書を再発行しました。
  • 目的はクレジットカード納付時のシステム利用料を抑えることだったとされています。
  • 免れたシステム利用料は合計約600円と報じられています。
  • 固定資産税そのものを減額した、免れたとの報道ではありません。
  • 神戸市の固定資産税は、一括または年4回に分けて納付するのが通常です。
  • 神戸市はクレジットカード納付について、納付金額に応じたシステム利用料がかかると案内しています。
  • 今回は外部からの不正アクセスではなく、正規の職務権限を私的に利用した目的外利用と整理するのが適切です。
  • 神戸市の情報セキュリティ対策基準は、職員による業務外目的の情報システムアクセスを禁止しています。
  • 情報の外部流出、第三者への提供、税額の不正変更などは報じられていません。
  • 発覚経緯や具体的な再発防止策は、確認できた報道・公開一次資料では明らかになっていません。
項目 内容
公表・報道日 2026年8月31日
対象組織 神戸市
対象職員 行財政局の女性職員(34歳と報道)
処分 減給10分の1、1カ月
行為期間 2024年12月~2025年5月
市税情報の閲覧 計15回と報道
対象 自身および家族の市税情報
納付書の再発行 自身分を14回、家族分を8回に分割して納付できるよう再発行
目的 クレジットカード納付時のシステム利用料を抑えるためと報道
経済的利益 約600円分のシステム利用料
税額への影響 税額自体の減額・免脱は報じられていません
不正アクセス 外部侵入やアカウント侵害は報じられていません
情報漏えい 外部流出・第三者提供は報じられていません
発覚経緯 確認できませんでした
再発防止策 確認できませんでした

15回にわたり自身や家族の市税情報を閲覧

神戸新聞によると、処分を受けた職員は税務関係の業務に従事していました。

2024年12月から2025年5月にかけて、職場の端末から自身や家族の市税情報などを計15回閲覧したとされています。

そのうえで、2025年分の固定資産税について、自身は14回、家族分は8回に分けて支払えるよう納付書を再発行しました。

神戸新聞は、市人事課の聞き取りに対し、職員が「認識が甘かった」と話していると報じています。

一方、今回の行為がどのように発覚したのか、監査ログから判明したのか、内部通報や別の事務確認を契機に判明したのかは記事では明らかにされていません。

固定資産税は通常「一括または年4回」

神戸市の公式案内では、固定資産税・都市計画税は毎年4月上旬に納税通知書と納付書が送付され、一括または年4回に分けて納付します。

例年、第1期は4月、第2期は7月、第3期は12月、第4期は翌年2月が基本です。

納付方法には金融機関、コンビニ、口座振替のほか、地方税統一QRコード「eL-QR」を利用したクレジットカード納付などがあります。

納付書自体を紛失した場合などは、市民も所定の手続きで再発行を申請できます。

今回問題となったのは「納付書を再発行する行為そのもの」ではなく、税務業務に利用する職務上の権限を用い、自身と家族の納税を通常より細かく分割して私的な費用負担を減らした点です。

クレジットカード納付は納付額に応じて利用料が発生

神戸市は、クレジットカードで市税を納付する場合、納付金額に応じたシステム利用料がかかると案内しています。

地方税共同機構のクレジットカード納付サイトでは、現在、1万円まで40円、1万1円から2万円まで123円、2万1円から3万円まで205円など、納付額が増えるにつれてシステム利用料が上がる料金体系となっています。

5万円を超える場合も、納付額が1万円増えるごとに82円または83円程度が追加されます。

そのため、同じ税額でも複数の小額納付へ分けた場合、組み合わせによってはシステム利用料の合計が低くなるケースがあります。

神戸新聞によると、今回の職員は納付書を細分化することで、約600円分の負担を免れました。

なお、このシステム利用料は税金ではありません。地方税共同機構のクレジットカード納付サイトは、システム利用料について地方税共同機構や地方公共団体の収入ではないと説明しています。

したがって、本件を「神戸市から約600円を詐取した」「税金約600円を免れた」などと表現するのは適切ではありません。

外部からの「不正アクセス」ではなく職務権限の目的外利用

セキュリティ上、本件で重要なのはアクセス権限の性質です。

神戸新聞の報道では、職員が他人のアカウントを使った、認証を回避した、アクセス権限のないシステムへ侵入したといった事実は示されていません。

職員は税務関係業務に従事しており、職場の端末から自身や家族の市税情報を閲覧し、納付書を再発行したとされています。

そのため、「サイバー攻撃」「外部からの不正アクセス」とするのではなく、職務上の正規権限を業務目的外で使った内部不正・目的外利用として整理するのが適切です。

神戸市の情報セキュリティ対策基準には「業務以外の目的での使用の禁止」が明記されており、職員等は業務以外の目的で情報システムへアクセスしてはならないと定められています。

これは今回のように、正規アカウントを利用していても、利用目的が業務から外れていれば情報セキュリティ上の問題になることを示しています。

神戸市の税務システムは納税者情報管理・納付書発行機能を持つ

神戸市が公表している「地方税の賦課徴収事務に関する特定個人情報保護評価書」では、市税業務に「税務オンラインシステム」と「税収滞納管理システム」などが利用されています。

税務オンラインシステムには、納税者の基本情報や関係者情報の管理、納税通知書・納付書などの帳票発行機能があります。

税収滞納管理システムにも、収納情報の管理、督促状・催告書・納付書などの発行機能があります。

ただし、今回の職員が具体的にどのシステムを操作したのかは、神戸新聞の記事では明らかにされていません。

同評価書ではユーザーログにユーザーID、ログ出力日時、論理端末名、宛名番号などを保持する設計も確認できます。

このことは、税務システムにおいて「誰が、いつ、どの対象を扱ったか」を追跡するログ設計が存在することを示していますが、今回の事案がこのログ監査によって発覚したとする情報は確認できません。

「自分の情報なら見てもよい」とは限らない

今回の事案では、閲覧対象に職員自身の市税情報が含まれています。

しかし、本人の情報であることと、業務システムを私的に利用してよいことは別問題です。

行政システムは住民や納税者として本人が利用するためのシステムではなく、職員が法令や業務上の目的に基づいて事務を行うためにアクセス権限を付与されています。

自身の情報であっても、職員としての権限を使って私的に閲覧・変更・帳票発行を行えば、権限の目的外利用になり得ます。

家族の情報についても同様で、家族関係にあることだけで職務上の閲覧や操作が正当化されるわけではありません。

神戸市は個人情報保護制度について、職員等は業務で知り得た個人情報を不当な目的に利用してはならないと説明しています。

情報流出や税額変更は報じられず

本件では、自身や家族の市税情報を私的に閲覧したことは報じられていますが、市民や他の納税者の情報を閲覧したとの記載はありません。

また、情報を庁外へ持ち出した、第三者へ提供したといった情報漏えいも報じられていません。

固定資産税の課税額そのものを書き換えたとの記載もありません。

確認されているのは、納付書を通常より細かく分けて再発行し、クレジットカード納付に伴うシステム利用料を約600円減らしたという行為です。

したがって、「個人情報漏えい」「税額改ざん」「横領」「不正アクセス」など、神戸市や捜査機関が使用していない表現を独自に付けるべきではありません。

金額の小ささではなく「正規権限を私益に使えた」ことが論点

神戸新聞が報じた経済的な利益は約600円で、金額だけを見れば小さいものです。

しかし、内部統制の観点では金額の大小だけで評価すべき事案ではありません。

税務システムには、納税者の住所、課税情報、収納状況など重要な情報が集約されます。そのシステムへ業務上アクセスできる職員が、自身や家族の利益のために情報閲覧や帳票発行を行える状態であれば、別の目的外利用へ拡大するリスクも考える必要があります。

重要なのは、今回約600円の利益だったことではなく、「正規利用者による正規機能の不適切利用」をどこまで検知・抑止できるかです。

セキュリティ対策Labでは、自治体職員が住民記録システムを業務目的外で検索した事例として「福島県二本松市、住民記録システムの不正検索で会計年度任用職員を懲戒免職」も取り上げています。

外部攻撃への対策だけでなく、内部利用者による目的外アクセスを想定した監査が必要です。

内部監査・情報システム部門への示唆

今回の事案では、正規権限を持つ利用者による小規模な私的利用をどのように検知するかが論点になります。

第一に、本人・家族・同僚など「利益相反になり得る対象」へのアクセスを監視する仕組みが有効です。

税務、住民記録、人事、医療、福祉などのシステムでは、職員が自身の情報を検索した場合や、職員と一定の関係がある対象へのアクセスを行った場合にアラートを出す仕組みを検討できます。

第二に、閲覧だけでなく「変更・再発行・出力」を高リスク操作として監査します。

今回のような事案では、単なる情報閲覧だけでなく、納付書の再発行という業務処理が私的利益につながりました。通常と異なる回数の再発行や、同一納税者に対する短期間の大量発行などを検知できるルールが必要です。

第三に、職務分掌を見直します。

自分自身や家族の案件を処理する必要が生じた場合には、本人が担当せず別の職員へ引き継ぐ、上長承認を必要とするなど、利益相反を避ける運用が有効です。

第四に、ログを「保存するだけ」で終わらせないことです。

神戸市の公開資料からは、税務系システムにユーザーIDや日時、宛名番号などを記録するログ設計が確認できます。ログが存在しても、異常な検索や再発行を定期的に分析しなければ抑止力は限定的です。

第五に、「少額だから軽微」という判断を避けます。

内部不正では、最初の目的外利用が小さな便益でも、その操作が発覚しなければ、より大きな不正や個人情報の私的利用へ発展する可能性があります。金額ではなく、権限・データ・操作の重要度を基準に評価する必要があります。

今回の事案は、認証を突破する外部攻撃だけでなく、正規アカウントを持つ利用者が正規機能を不適切な目的で使うリスクも、行政システムのセキュリティ設計に含める必要があることを示しています。

出典