
2025年5月1日、トランプ大統領は国家安全保障補佐官を務めていたマイケル・ウォルツ氏を解任し、国連大使に指名すると発表しました。この人事は、いわゆる「Signalgate(シグナルゲート)」と呼ばれるスキャンダルをめぐって注目を集めています。
背景:Signalgateとは?
Signalgateとは、政府高官が使用していたSignalグループチャットに、誤って記者が招待された事件を指します。このチャットでは、イエメンのフーシ派への軍事攻撃に関する計画が話し合われていたとされ、国家機密の取り扱いに関する懸念が噴出しました。
ホワイトハウスはこの件について、「機密情報は含まれていなかった」と説明し、事態を矮小化しようとしましたが、世論や野党の批判は収まりませんでした。
トランプ陣営の対応:静観からの“昇格”人事
Signalgateの余波が一段落したとみたホワイトハウスは、今回ようやく対応に踏み切りました。ウォルツ氏は国家安全保障補佐官の職を離れ、国連大使として上院の承認を受ける必要がある立場に移されることになります。
この対応は一見すると「更迭」に見えますが、ホワイトハウス側は「昇格」として位置づけています。副大統領JD・ヴァンス氏は、「国連大使は戦略的なポジション」と主張していますが、あるホワイトハウス関係者は「国連なんてどうでもいい」と冷ややかに述べており、実質的な“名誉ある左遷”と見られています。
一方で、ウォルツ氏の代わりにマルコ・ルビオ国務長官が国家安全保障分野を暫定的に引き継ぐとされています。
上院での承認審議が新たな焦点に
国連大使に就任するには、上院の承認審議を通過する必要があります。ここで民主党議員がSignalgateを蒸し返し、トランプ政権の機密管理の甘さや人事の杜撰さを追及する場となる可能性が高いと見られています。
すでに民主党のクリス・クーンズ上院議員(デラウェア州)は、SNS上で「公聴会でしっかり確認する」と意気込みを示しており、ウォルツ氏のスマートフォンに表示されたSignalチャットのスクリーンショット(「JD Vance」「Rubio」「Gabbard」などの名前が確認された)にも言及しています。
裏にある党内の権力闘争
国連大使ポストは、当初エリス・ステファニク下院議員(共和・ニューヨーク州)に打診されていました。しかし、ウォルツ氏の補欠選挙による下院の議席争いを懸念したトランプ陣営がステファニクの指名を撤回。これにより彼女とマイク・ジョンソン下院議長との関係がぎくしゃくしていると報じられています。
ステファニク氏は今や、かつて自分が内定していたポジションにウォルツ氏が収まるのを見届けることになり、共和党内部でも微妙な立ち位置に置かれています。
今後の見通し
ウォルツ氏は声明で「引き続きトランプ政権に仕えることを光栄に思う」と述べており、強気の姿勢を崩していません。しかし、上院公聴会では過去の機密取り扱い、チーム内の人間関係(ホワイトハウス首席補佐官スージー・ワイルズとの軋轢)、陰謀論者ローラ・ルーマーからの批判など、多くの問題が再度取り沙汰される見込みです。
まとめ
今回の人事は、単なる官僚ポストの入れ替えに留まらず、トランプ政権の国家安全保障運用と政権内部の力学を象徴する事案です。Signalgateの真相解明とともに、今後の上院での議論が、トランプ政権の透明性と説明責任を問うリトマス試験紙となるかもしれません。
参照
https://www.bbc.com/news/live/crkx3ed5dn2t
https://www.axios.com/2025/05/02/michael-waltz-trump-signal-controversy