米国防総省はイランに対する軍事作戦オペレーション・エピック・フューリーにおいて、サイバー軍と宇宙軍が作戦の最初に動くファーストムーバーとして位置づけられたと説明しました。
米統合参謀本部議長ダン・ケイン大将は、米サイバー軍(USCYBERCOM)と米宇宙軍(USSPACECOM)が非キネティック(兵器)効果を重ね掛けし、イラン側の見通し・通信・応答能力を妨害しつつ、作戦開始(米東部時間で2月28日1:15、テヘラン時間9:45)に向けた戦場環境の形成を行ったと述べています。
概要
同ブリーフィングでは、作戦開始後に100機超の航空機が単一の同期波として発進し、海上からのトマホークを含む攻撃が行われ、初動24時間で1,000超の目標を攻撃したと説明されています。
具体的な作戦行動は明らかにされていませんが、統合参謀本部議長のダン・ケイン空軍大将によると宇宙軍・サイバー軍の協調作戦が、責任地域におけるイラン側の通信とセンサー網を効果的に妨害し、相手が見えない・統制できない・応答できない状態を作ったことが示されました。
最近の軍事作戦は航空機やミサイルの発射以前に、ネットワークと宇宙インフラ上で相手の意思決定と状況把握を崩す工程が組み込まれており、ベネズエラへの進行時にも同様の活動が確認されています。
また、過去サイバー領域における軍事作戦領域は秘匿されている事が多かったですが、昨今では大規模戦闘作戦の一要素として公に語られる場面が増えています。
また、防御側の組織は、地政学イベントが発生した局面で、サイバーが単独で来るのではなく、偽情報・DDoS・破壊・OT/ICSへの干渉などが同時多発し得る前提で備える必要があります。
イラン側の報復サイバー攻撃
作戦が続く中で、脅威インテリジェンス各社は、イラン関連アクターの活動が偵察・準備局面に入り得ると警戒しています。CrowdStrikeは、大規模な国家主導キャンペーンは未観測としつつも、イラン寄り・同調ハクティビストによるDDoSや改ざんなどの主張が増えているとしています。
Google Threat Intelligence Group(GTIG)のジョン・ハルトクイスト氏も、米国・イスラエル・湾岸協力会議(GCC)諸国などを対象に、機会標的型と重要インフラを狙った破壊的攻撃が想定される一方、イランは心理的効果を狙って成果を誇張する傾向があるため、主張は割り引いて見るべきだと述べています。Recorded Futureも、現時点で米国内の政府機関や重要インフラに対する明確な攻撃は観測していないとしつつ、イラン国内の広範な通信遮断が可視性を下げている点、イランがプロキシ(代理)を多用する点に言及しています。
ウクライナ侵攻で見えたサイバー領域の擬似と先行効果
ウクライナ侵攻(2022年2月)では、キネティック(兵器)より前にサイバー領域での作戦行動が先行して戦場を整える動きが確認されています。
Microsoftは、侵攻開始の直前(2月23日)に破壊的マルウェアがウクライナの端末群へ投入されたと説明しており、CISAも同時期にワイパー型マルウェア(HermeticWiper等)を含む破壊的攻撃が確認された旨を注意喚起しています。さらにEUは、侵攻の約1時間前に衛星通信(Viasat KA-SAT)を狙った攻撃が起き、通信断が広域に波及したと指摘しており、通信・指揮統制・状況把握を鈍らせる「開戦前の非キネティック効果」が現実に機能し得ることを示しました。
一方で、サイバー領域では「事実」と同じくらい「擬似(偽装・誇張)」が混ざります。
ウクライナ侵攻期には、ゼレンスキー大統領が降伏を呼びかけるかのような偽動画(ディープフェイク)がSNS上で拡散し、心理面で混乱を狙う典型例になりました。
また、親露派ハクティビストのKillNetのように、DDoS等の活動を掲げつつ成果を誇張しやすい集団も指摘されており、主張先行の情報が現場判断を誤らせるリスクが常にあります。結果として、攻撃そのものよりも、噂・リーク・偽警告が同時に走り、受け手の意思決定を遅らせることが「効果」になる局面が生まれます。
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参照
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