
2025年5月29日、米財務省外国資産管理局(OFAC)は、暗号資産詐欺に関与したとして、フィリピンを拠点とするIT企業「Funnull Technology Inc.」および同社の管理者である中国籍の「Liu Lizhi」氏に対する制裁措置を発表しました。
Funnullは数十万件におよぶ詐欺用ウェブサイトのインフラを提供し、米国民が被った被害は2億ドル(約3,100億円)以上にのぼるとされています。
被害拡大中の“豚の屠殺詐欺”に関与
今回の制裁対象となったFunnullは、フィリピンに拠点を置くIT企業でいわゆる「豚の屠殺詐欺」を支える重要な技術基盤を提供していたとされます。
豚の屠殺詐欺とは、加害者がソーシャルメディアなどでターゲットに接触し、偽装された恋愛関係や投資話を通じて信頼を構築した上で、暗号資産取引を装った詐欺サイトに誘導し、資金を詐取するという手口です。
米財務省によると、この詐欺は東南アジアに拠点を置く犯罪組織が主導しており、搾取し監禁した人間に詐欺を強制させるケースも多数確認されています。
Funnullの役割と詐欺手法
Funnullは、主要クラウドサービス企業からIPアドレスを大量購入し、それらを暗号資産詐欺用のウェブサイトや不正コンテンツのホスティングに活用していたとされています。以下が主な手口です:
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ドメイン生成アルゴリズム(DGA)を使い、短期間で無数のドメインを作成
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詐欺用テンプレートを提供し、実在する金融サービスのように偽装
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不正コードの組み込みにより、正規のウェブサイトから詐欺サイトへリダイレクト
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一部サイトは中国系マネーロンダリング組織とのつながりも確認
OFACによると、Funnullは米国の被害報告の大半に関係しており、平均的な被害額は1人あたり15万ドルを超えるとのことです。
制裁の内容と影響
今回の制裁は、大統領令13694号およびその改訂版14144号に基づいて発動されました。FunnullおよびLiu氏が関与する以下のような行為が対象となっています:
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米国の国家安全保障や経済的安定性に対する脅威となるサイバー活動の支援
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経済資源や個人情報の不正取得
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詐欺、フィッシング、オンライン賭博などへの技術的支援
参照