CSPM(クラウドセキュリティポスチャマネジメント)とは

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CSPM(クラウドセキュリティポスチャマネジメント)とは

今日の複雑なクラウド環境を目の前にすると、セキュリティ担当者は頭を抱えることも少なくありません。Amazon Web Services (AWS) や Microsoft Azure、Google Cloudといったダイナミックな世界で、セキュリティをしっかり維持することは、口で言うほど簡単ではありません。このセキュリティ対策を効率的に行えるのが、クラウドセキュリティポスチャ管理(CSPM)です。

目次

CSPM(クラウドセキュリティポスチャ管理)とは

このCSPMは膨大なクラウドインフラを常に目を光らせて監視し、設定ミスを見つけ出してくれるツールです。

定められたセキュリティポリシーがちゃんと守られているか、規制要件に沿っているかどうかも確認してくれるため、安心して仕事を進めることができます。

特に、Infrastructure as a Service (IaaS) 特有のリスクに対処する上で、CSPMは現代のクラウドセキュリティにおいて、もはや必要不可欠な存在と言えるでしょう。

CSPM市場の熱気、そしてその先の未来

CSPMは、数あるクラウドセキュリティソリューションの中でも、まさに今、最も熱い注目を集めています。調査会社ガートナーの予測によると、CSPM市場は今後もさらに成長を続け、2027年までには世界の年間収益が2022年から213%以上も増加し、33億2,000万ドルに達する見込みだそうです。これは、いかに多くの企業がCSPMの価値を認め、投資しているかの証とも言えます。

ただ、その一方で、CSPM単独のソリューションは、CNAPPのような、より新しく、もっと多くの機能を統合した製品に徐々に取って代わられつつある、という現実もあります。

クラウドセキュリティ、ここまでの歩みとCSPMの登場

2014年にガートナーが「クラウドセキュリティポスチャマネジメント(CSPM)」という言葉を生み出したのは、まさにクラウドの時代が本格的に到来しようとしていた頃でした。AWS、Microsoft Azure、Google Cloudといったクラウドコンピューティングサービスの人気が爆発的に高まるにつれ、それまでになかった新たなセキュリティのニーズが生まれ、CSPMは、まさに待ち望まれていたソリューションとして登場しました。

CSPMが世に出る前、企業は主にクラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)に頼っていました。これは、初期の仮想マシンや、その後登場したコンテナ環境を保護するには十分でした。

しかしながら、CWPPとCSPMは、目指すところが少し異なります。CWPPが「中身を守る」イメージだとすれば、CSPMは「設定という土台をしっかり固める」役割を担います。

これは、クラウドサービスプロバイダー(CSP)との間で明確に定められた「責任共有モデル」において、私たち企業側が果たすべき新しい要件でした。クラウドインフラそのもののセキュリティはCSPが責任を持つが、その上で私たちが使うクラウド資産やサービスの設定は、私たち自身の責任で守らなければいけません。

このモデルは今も変わらず重要で、CSPMはその責任を果たす上で、本当に強力な味方になってくれます。

当然、CSPMがすべてのセキュリティ問題を解決する魔法の杖ではありませんでした。CWPPをはじめとする他のソリューションの必要性がなくなったわけではありません。

CSPMだけではクラウドワークロードのセキュリティを完全に確保したり、十分な可視性を提供したりすることはできません。従って、脆弱性やマルウェア、うっかり公開してしまった機密情報などは、CSPMだけでは見つけられない、という限界もありました。

なぜCSPMは、これほどまでに重要なのか?

AWS、Microsoft Azure、GCPといったパブリッククラウドインフラストラクチャの導入が、ものすごい勢いで加速していることは本記事をご覧の皆さんもご存じかと思います。それに伴い、CSPMの重要性は増すばかりだと感じています。パブリッククラウドやマルチクラウドのインフラの発展により、ITチームや開発チームにとって、サービスやアプリケーションを迅速に構築・展開できるようになりました。

この変化は大きなメリットをもたらしてくれますが、一方で、思わぬ落とし穴もあります。それが、「クラウドの誤設定(クラウド誤構成)」と呼ばれる高リスクな状態です。ちょっとした設定ミスが、データ漏洩や規制コンプライアンス違反といった、本当に頭の痛い事態につながる可能性があります。高額な罰金なんてことになると、目も当てられません。

クラウドインフラストラクチャを導入する企業にとって、CSPMを実践する責任は非常に重いものです。しかし、CSPMツールなしでそれをやろうとすると、セキュリティチームは本当に深刻な課題に直面することになります。

マルチクラウドの複雑さ、その壁を乗り越えるために

セキュリティ担当者が日々感じることが、マルチクラウド環境の複雑さです。各クラウドプロバイダーは、それぞれ異なるインフラストラクチャアーキテクチャや用語を使っているかと思います。Amazon VPCとAzure VPNはどちらも仮想ネットワークですが、その独自のニュアンスを理解して管理するのは一筋縄ではいきません。しかも、クラウドプロバイダーは頻繁に新しいサービスをリリースしますから、その変化に追随し続けるのは、まるで終わりのないマラソンのようなものです。

ここでCSPMツールが真価を発揮します。彼らは、これらのクラウドプロバイダーのサービスを自動で検出して、なんと単一のコンソールに統合して正規化してくれます。これには本当に助けられます。セキュリティチームの複雑な作業を大幅に軽減してくれる、まさに「救世主」と言えるでしょう。

見えないリスク、セキュリティの「盲点」をなくす

多くの企業が直面するのが、「クラウド環境の全体像が見えない」という問題です。次のような質問に、皆さんはすぐに答えられるでしょうか?

  • 自社ではどんなクラウドサービスを使っているんだろう?
  • クラウドリソースに変更を加えたのは誰で、どんな変更が、いつ行われたんだろう?
  • クラウド環境にはどんな設定ミスが潜んでいるんだろう?
  • うちの会社は、ちゃんとコンプライアンス要件を守れているのかな?

CSPMツールを活用すれば、こういったモヤモヤを解消できます。クラウドリソース、設定変更履歴、潜んでいるリスク、コンプライアンス違反など、これまで見えにくかった情報が一目で把握できるようになります。これは、セキュリティ担当者にとって、本当に心強い味方になります。

重くのしかかるコンプライアンス義務

クラウドインフラストラクチャを利用する多くの企業は、PCI DSS、GDPR、SOC 2、HIPAAなど、特定のセキュリティ対策を義務付ける厳しい規制要件に縛られています。適切なクラウド設定を怠ると、コンプライアンス違反につながり、多額の罰金、法的な問題、そして何よりもブランドイメージの低下という、本当に避けたい結果を招きかねません。

CSPMツールは、企業がクラウドインフラストラクチャをこれらのコンプライアンス要件に適合させているかを確認する上で、非常に頼りになります。まず、クラウド設定を規制当局の統制と自動的に比較し、違反を検出して、修正のための具体的なガイダンスまで提供してくれます。一部のソリューションには、素晴らしいコンプライアンスレポート機能も含まれていて、セキュリティチームは監査対応レポートをわずか数分で作成できます。これは、監査の時期に頭を抱えていたセキュリティ担当にとっては、まさに夢のような機能です。

開発者体験の向上:セキュリティは「邪魔者」ではない

クラウドインフラストラクチャの導入は、私たちに俊敏性という大きなメリットをもたらしてくれますが、一方で、セキュリティチームが開発チームから「なんか、邪魔ばかりしてくるなあ…」と見なされてしまうこともあるかと思います。調査機関のガートナーも「セキュリティチームは現代のDevOpsスタイルの開発を阻害していると考えられている」と指摘しています。

だからこそ、現代のCSPMの考え方では、セキュリティチームが開発チームやDevOpsチームと積極的に連携して、設定ミスを修正していくことが求められます。従来のセキュリティツールは、この「連携」という視点が抜けていることが多く、その結果、開発者が対処しなければならない低リスクのアラートが、過剰に生成されてしまうこともありました。これは、お互いにとってストレスでした。

最新のCSPMツールは、誤設定を文脈に応じて優先順位付けし、修正手順をよりわかりやすく示すことで、セキュリティと開発チームのコラボレーションを大きく改善してくれます。セキュリティが開発の足かせになるのではなく、むしろ強力な推進力になる。そんな理想的な関係を築けるのが、今のCSPMの魅力だと感じています。

CSPMソリューションの導入は、クラウドインフラストラクチャのセキュリティを確保し、大切な個人データを安全に保つための確実な第一歩です。クラウドネイティブコンピューティングは今後もますます普及していくでしょうし、CSPMツールは、私たちがクラウドインフラストラクチャの可視性と制御性をしっかり確保する上で、これからもずっと重要な役割を果たし続けると、期待されています。

CSPMの機能:具体的にどう動くのか、その舞台裏

CSPMがどのように機能するかを理解することは、クラウドセキュリティを強化する上でのその役割を把握するために不可欠です。ここでは、CSPMがクラウドインフラストラクチャのセキュリティ確保にどう役立つのかを、もう少し具体的に掘り下げてみましょう。

クラウド環境への「窓」を開く:エージェントレス接続

多くのセキュリティアプローチでは、エージェントやプロキシといったソフトウェアをサーバーにインストールする必要があります。しかしながら、CSPMソリューションは少し違います。彼らはクラウドプロバイダーのAPIに直接接続して可視性を確保します。これを「エージェントレスセキュリティ」と呼びます。

私たち企業側は、クラウドプロバイダー内でCSPMツールへのアクセスを許可するだけでOKです。CSPMツールは、自動化されたワークフローを提供して、効果的なポスチャ管理に必要な権限をサッと生成してくれます。多くのCSPMプロバイダーが、可視性のみを目的とした「読み取り専用アクセス」と、可視性および自動修復のための「最小限の読み取り/書き込み権限」を柔軟に選択できるようにしてくれているのも、ユーザーフレンドリーで助かります

ほとんどの製品はAWS、Azure、GCPといった主要なクラウドをしっかりサポートしていますし、中にはOracle、Alibaba、IBM Cloudなどの追加のクラウドプロバイダーにも対応しているものもあります。

全体の「見える化」:可視性の獲得

接続が完了すると、CSPMソリューションはAPIベースの接続を利用して、まるで探偵のようにクラウド資産のインベントリ、設定、監査証跡(設定の変更履歴)、ネットワーク通信、クラウドイベントなどを洗い出して可視化してくれます。これにより、私たちのクラウド環境が今どうなっているのか、詳細に把握できるようになります。

隠れた「設定ミス」と「コンプライアンス違反」の特定

CSPMツールには、あらかじめ設定された構成チェック機能(「ポリシー」とも呼ばれます)が豊富に搭載されています。これらは、クラウドリソースと設定をセキュリティ対策と比較するためのものです。通常、これらのポリシーは、CISやMITRE ATT&CKといった業界のベストプラクティスフレームワークや、PCI DSS、HIPAAなどの規制コンプライアンスにしっかり準拠しています。多くのCSPMツールには、数十ものフレームワークにマッピングされた、実に数百ものポリシーが付属しています。

設定が定義されたポリシーに合致しない場合、CSPMソリューションはこれを設定ミスとしてすぐに特定し、セキュリティチームにアラートを送ってくれます

設定ミスの具体例としては、このようなものが挙げられます。

  • Amazon EC2インスタンスでIMDSv2が無効になっている(これは結構危険な状態です)
  • Azure Kubernetes Serviceのエンドポイントがパブリックにアクセス可能になっている(誰でもアクセスできる状態です)
  • GCP APIキーが90日ごとにローテーションされていない(定期的な更新は必須です)

脅威の「兆候」を見逃さない:検出能力

従来のセキュリティアプローチでは、マルウェア、ネットワーク攻撃、データ窃盗などの脅威を検出するために、プロキシやエージェントが必須でした。しかし、CSPMは違います。セキュリティチームは、クラウドプロバイダーから提供されるネットワークトラフィック(例えば、Amazon VPCフローログ)やイベント(例えば、AWS CloudTrailイベントログ)といったテレメトリを利用するだけで、侵害行為の兆候を検出できます。これは、本当に画期的なことだと感じています。

CSPMソリューションは、ポリシー、そして場合によっては人工知能の力を活用し、ログとイベントを継続的に検査して、異常な動きや不審なアクティビティを見つけ出してくれます。一部のツールでは、インシデントをMITRE ATT&CK戦術にマッピングすることで、可視性と優先順位付けをさらに強化してくれますから、私たちもより的確に、より迅速に対応できるわけです。

効果的なCSPMは、最新の脅威を特定し、その深刻度を評価するために、常に高精度の脅威インテリジェンスを維持することが求められます。ネットワーク上の異常を検知し、他の種類の脅威データと関連付ける能力も、あらゆる脅威の潜在的なリスク影響に関する完全なコンテキストを把握する上で重要です。ユーザーおよびエンティティの行動分析(UEBA)データについても、同様のことが言えます。

リスクの「本当の意味」を理解する:文脈化

ポリシーは、セキュリティチームが設定ミスやコンプライアンス問題を特定する上で本当に役立ちます。しかし、多くの企業では数千もの設定ミスが存在するため、すべてを同時に対応するのは不可能です。だからこそ、リスクに優先順位を付けることが不可欠になります。

ここで、多くのCSPMソリューションが、脆弱性、過剰なアクセス権限、現在活動中の脅威など、通常は他のツールで検出されるような追加のリスクシグナルも特定するように機能を拡張している点が素晴らしいと感じています。グラフデータベース技術を基盤とする現代のCSPMツールは、設定ミスと追加の検出結果を組み合わせることで文脈化し、潜在的な攻撃経路を特定してくれます。個々の設定ミスも重要ですが、複数の問題が組み合わさることで生まれる複合的な脅威は、個々の問題よりもはるかに大きなリスクとなります。だからこそ、私たちセキュリティチームは、この文脈化されたリスクを活用して優先順位付けの取り組みを改善できるわけです。

問題の「迅速な解決」:修復プロセス

少なくとも、CSPMソリューションは、セキュリティチームが設定ミスの担当チームに情報を渡し、連携を強化できるよう、ステップバイステップの修復手順を提供してくれます。これがあれば、具体的なアクションが明確になり、担当者も迷うことなく対応できます。

CSPMソリューションは、SIEM、SOAR、チケット発行システム、Slackなどのコラボレーションツールといった外部プラットフォームとも統合できる必要があります。これにより、セキュリティチームは、アラートや修復に関するフィードバックを適切なチームにスムーズに連携できます。

場合によっては、セキュリティチームはCSPMコンソールから違反を自動的に修復することも可能で、迅速な対応が本当に容易になります。緊急性の高い問題に、すぐに手が打てるのは大きな安心材料です。

「改善の証」と「報告」:監視とレポート

セキュリティチームがクラウドインフラストラクチャの設定ミスを繰り返し特定し、修正していくにつれて、時間とともにリスクが減少していくことに気づくはずです。これは、セキュリティチームの努力が実を結んでいる証でもあります。

レポート機能が組み込まれたCSPMツールは、セキュリティチームがこれまでの取り組みを検証し、経営層や関係者と効果的にコミュニケーションを取るのに役立ちます。パブリッククラウドインフラストラクチャ上で規制対象のアプリケーションを運用している組織であれば、CSPMを活用することで、コンプライアンス状況に関して次のような疑問に自信を持って答えることができるようになるでしょう。

  • コンプライアンスチェックに合格しているか、それとも不合格か?
  • 自分の環境の何パーセントが準拠しているか?
  • どのリソースが準拠していないのか?そして、どうすれば良いか?

CSPMソリューションは、簡単に利用できるレポートを作成する機能を提供してくれます。セキュリティチームは、まさにボタンをクリックするだけで、例えばPCI DSS v4.0のレポートをPDF形式で生成できます。このレポートには、PCIの各コントロールが示され、クラウドインフラストラクチャがそれぞれのコントロールに準拠していることが確認できます。CSPMツールから生成されたレポートをコンプライアンス専門家に渡してスムーズに監査を受けたり、開発者に送ってコンプライアンスに関する懸念事項を伝え、改善活動の優先順位付けを促したりすることも可能です。

CSPMと他のセキュリティソリューション、その違いは?

市場には本当に多くのセキュリティ製品カテゴリが存在するため、セキュリティの専門家も、様々なクラウドセキュリティソリューションの範囲をしっかり理解しておく必要があります。ここでは、CSPMと似ているが、役割が異なる一般的なセキュリティコントロールについて、少し掘り下げてみましょう。

CASBとCSPM、どこが違う?

クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)ソリューションは、クラウドサービスやSaaSアプリケーション間のネットワークトラフィックをフィルタリングしてデータを保護する、言わば「交通整理役」です。一方、CSPMはクラウドインフラストラクチャの「安全な設定」に焦点を当てています。CASBとは異なり、CSPMツールはネットワークにインラインで接続してトラフィックをフィルタリングしたり、SaaSアプリケーションに特化したりすることはありません。役割が明確に分かれています。

「クラウドセキュリティ」とCSPM、その関係は?

クラウドセキュリティ」という言葉は、CSPMよりもはるかに広い範囲を指します。クラウド環境内のアプリケーション、データ、ID、ネットワーク、そしてインフラストラクチャ全般のセキュリティを網羅する、まさにクラウドにおける防衛の「全体像」といったところでしょうか。CSPMは、この広大なクラウドセキュリティの中で、クラウドインフラストラクチャ全体の設定ミスを検出・修正する、非常に重要な「一部」を担っています。多くの企業がクラウド導入の早い段階でCSPMを導入するのは、これがクラウドセキュリティの大切な第一歩だと認識しているからだと思います。

CNAPPとCSPM:統合された未来のカタチ

クラウドネイティブ・アプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)は、ガートナー社が提唱する造語で、まさにクラウドセキュリティの「全部入り」を目指すようなプラットフォームです。開発段階から本番環境まで、クラウドネイティブアプリケーションのセキュリティと保護を支援するために設計された、クラウドセキュリティとコンプライアンスの機能を統合しています。CNAPPの主な機能には、CSPMはもちろん、CWPP、コードセキュリティ、WebアプリケーションとAPIセキュリティ (WAAS)、クラウドインフラストラクチャエンタイトルメント管理 (CIEM)、データセキュリティ態勢管理 (DSPM) などが含まれます。

CNAPPのこれらの主要機能により、セキュリティチームはアプリケーション開発ライフサイクル全体にわたってパブリッククラウドインフラストラクチャを包括的に把握できるようになります。クラウド導入の初期段階でプラットフォームを導入する際、多くの企業がCSPMから始めることが多いのは、やはり設定管理がセキュリティの基礎だからかと推察されます。

CWPPとCSPM、それぞれの「得意分野」

クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)は、ホスト(Linux、Windowsなど)、コンテナ(Kubernetesなど)、サーバーレス関数(Amazon Lambdaなど)といったクラウドコンピューティングインスタンスを、具体的な脅威から「守る」ことに特化しています。CWPPの適用範囲は、コンピューティングインスタンスの脆弱性管理、コンプライアンス、ランタイム保護です。一方、CSPMツールは、クラウドインフラストラクチャの不適切な設定を「見つけて直す」ことが得意分野です。

市場の動向を見ると、企業がCSPMとCWPPを併用するケースが本当に増えています。ガートナー社によると、「2025年までに、企業の60%がCWPPとCSPMの機能を単一ベンダーに統合する見込みで、これは2022年の25%から増加する」とのこと。私たちも、これらの連携は今後のセキュリティ戦略において非常に重要だと考えています。

CIEMとCSPM:アクセス権限の「肝」

CSPMはクラウドリソースの設定に関する可視性、ガバナンス、コンプライアンスを強化しますが、通常、詳細なアイデンティティ管理やアクセス権限の管理は提供しません。そこで、クラウド・インフラストラクチャ・エンタイトルメント管理(CIEM)が大きな役割を果たします。

CIEMツールは、クラウドIDのリスク特定と、クラウドインフラストラクチャへのアクセス権限の管理に重点を置いています。CSPMとCIEMテクノロジーを組み合わせることで、設定管理と権限管理という両面からクラウドインフラストラクチャのセキュリティ体制を盤石なものにできるわけです。

SIEMとCSPM、ログとイベントの「連携プレー」

セキュリティ情報イベント管理(SIEM)は、複数のITインフラストラクチャソース(クラウド、ネットワーク、IDなど)からセキュリティイベントを集約し、脅威を検出・軽減する、まさにセキュリティ情報の「司令塔」です。一方、CSPMは、クラウドインフラストラクチャ全体のセキュリティリスクを特定する、「偵察兵」のような役割です。ほとんどのCSPMソリューションは、発見した情報をSIEMツールにエクスポートして、さらなる分析や対応に役立てることができます。この連携プレーが、セキュリティオペレーションの効率を格段に高めてくれます。

DSPMとCSPM:データか、設定か

データセキュリティ態勢管理(DSPM)とは、クラウド環境に保存されている機密データを「守る」ための実践です。データ検出、データ分類、データガバナンスといった技術を通じて行われます。

DSPMとCSPMはどちらも可視性を提供し、設定ミスを検出・修正し、コンプライアンスを支援しますが、CSPMはクラウドインフラストラクチャ*「設定」に重点を置いているのに対し、DSPMはクラウドに保存される「データそのもの」に重点を置いています。どちらも重要ですが、守る対象が明確に異なると覚えておくといいでしょう。

CSPM導入のメリット:なぜ、今すぐ始めるべきなのか?

「見える化」による安心感:可視性の向上

クラウドプロバイダー全体に分散されたすべてのクラウドサービスを完全に把握することは、本当に大変なことです。しかしながら、CSPMソリューションは、この課題を根本から解決してくれます。彼らはデータソースを分析・正規化し、クラウドリソースと資産の詳細なインベントリを作成することで、クラウド環境やマルチクラウド環境全体を一元的に「見える化」してくれます

CSPMソリューションの中には、リアルタイムで継続的な可視性を提供してくれるものもあれば、クラウド資産のインベントリを定期的にスナップショットとして取得してくれるものもあります。複数のクラウド環境を単一のダッシュボードで可視化できるCSPMソリューションは、セキュリティ担当者にとって本当に「神ツール」と言えます。クラウドプロバイダーごとに設定が異なる中でも、このCSPMプラットフォームがあれば、セキュリティチームは迷うことなく、効率的に業務を進められます。

クラウドセキュリティリスクの「大幅軽減」

多くのCSPMツールは、脆弱性、過剰なアクセス権限、データリスクなど、他のクラウドセキュリティの検出結果と設定ミスを関連付けて分析する能力を持っています。これらの検出結果を関連付けることで、セキュリティチームはビジネスへの影響が最も大きいクラウドリスクを優先順位付けできるようになります。さらに、CSPMツールに組み込まれた修正ガイダンスや自動化機能は、私たちセキュリティチームが重大なリスクに迅速に対処する上で、本当に役立ってくれます。

規制コンプライアンスを「楽に」クリア

クラウドを積極的に活用し、PCI DSS、GDPR、SOC 2、HIPAAといった厳格なコンプライアンス規制に対応しているガバナンスおよびコンプライアンスチームは、監査人へのコンプライアンス証明に頭を悩ませることがよくありますよね。CSPMソリューションは、コンプライアンスの監視とレポート作成において、まさに「救いの手」となります。

具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • コンプライアンス状況の継続的な監視と、一般的なコンプライアンスフレームワークへの自動マッピング。手作業でやる手間が省けるのは本当に大きいです。
  • 監査対応レポートを迅速に生成し、コンプライアンスレポートの作成、共有、使用にかかる時間を大幅に短縮してくれます。監査のプレッシャーも軽減されます。
  • SOCチームが監査データを調査し、異常なユーザー行動やアカウント侵害の可能性の有無を確認できるため、より高度なセキュリティ監視が可能になります。

企業におけるCSPMの「リアルな」役割

CSPMは、クラウドのリソースのセキュリティ設定を評価し、強化するために活用できます。例えば、Microsoft Defender for Cloud(以前はAzure Security Centerと呼ばれていました)を使えば、マルチクラウドアプリやリソースを統合的に保護できます。Defender for Cloudは、ハイブリッド環境やマルチクラウド環境全体のセキュリティ状況をリアルタイムで概観できる優れものです。サービスのセキュリティを強化するための推奨事項を確認したり、ワークロードの脅威アラートを受け取ったり、その全ての情報をMicrosoft Sentinel(以前はAzure Sentinel)に素早く送信して、高度な脅威ハンティングを行うことも可能です。まさに、セキュリティの連携プレーといった感じです。

まとめ:CSPMは、未来のクラウドを守る鍵

CSPMは、堅牢で包括的なクラウドセキュリティ体制を築く上で、間違いなく重要な構成要素です。企業がCSPMをうまく活用すれば、クラウドインフラストラクチャにおけるリスクや設定ミスを特定し、効果的に管理し、そして迅速に修正することができます。これは、クラウドでビジネスを成功させるために、今や避けて通れない道だと確信しています。

今回の記事が、皆さまのCSPM導入検討の参考になりますと幸いです。