IPAが公表した 情報セキュリティ10大脅威 2026 組織編 では、2025年に社会的影響が大きかった脅威をもとに、組織向けの脅威を順位付けしています。1位は ランサム攻撃による被害、2位は サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 で、いずれも高順位が続いています。今回の特徴は、3位に AIの利用をめぐるサイバーリスク が初選出された点です。IPAは、AIが有用なツールである一方、理解が不十分なまま使うと権利侵害や情報漏えいにつながると注意を促しています。
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2026年の最大論点は、ランサムと委託先リスクがなお中心にあること
1位のランサム攻撃では、IPAは従来の暗号化型だけでなく、情報窃取と暴露予告を軸にしたノーウェアランサムにも言及しています。さらに、データ連携基盤が狙われ、被害が取引先を含めて広範囲に及び、調査や復旧に多くの時間と費用を要する点を重視しています。攻撃手口としては、脆弱性悪用、不正アクセス、改ざんサイトやメール、そしてRaaSの利用が整理されています。
IPAは事例として、アサヒグループホールディングスのランサム被害や、アスクルの認証情報窃取を起点とする侵入事案を挙げています。どちらも、単に端末が暗号化されたという話ではなく、受注、出荷、問い合わせ対応などの事業継続そのものが揺らいだ点が共通しています。ランサム被害は今やIT部門だけの問題ではなく、経営、物流、顧客対応まで含めた全社インシデントだというのがIPAのメッセージです。
2位の サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 も、同じ構造を持っています。自社が守れていても、委託先、関連会社、導入ソフト、配布経路、MSPなどのどこかが弱ければ、そこが突破口になります。IPAは、東海ソフト開発へのランサム被害に伴って複数委託元で影響が広がった事例や、EmEditorの配布導線改ざんによる偽インストーラー配信を挙げ、委託先管理とソフトウェア供給網の両面でリスクが現実化していると示しています。
AIリスクは シャドーAI だけでなく 攻撃側の加速 も前提に考えるべき
IPAは 組織編 で AIの利用をめぐるサイバーリスク を3位に初選出し、シャドーAI、誤情報の利用、AIを悪用した攻撃の巧妙化といった論点を示しました。ここに加えて押さえるべきなのが、Microsoft Threat Intelligenceが2026年3月に公表した、攻撃者がAIをサイバー攻撃ライフサイクル全体へ組み込み始めているという分析です。
Microsoftは、現時点でAIが攻撃者の意思決定そのものを完全に置き換えているわけではない一方、フィッシング文面の生成、翻訳、要約、コード生成やデバッグ、スクリプト作成、インフラ構築支援などを通じて、攻撃の速度、規模、持続性を高める加速装置として機能していると説明しています。
ランサムウェアや恐喝の実務にも AIが入り始めている
Microsoft調査でより重要なのは、AI活用が侵入前だけで終わっていない点です。Microsoftは、侵害後の段階でもAIが環境把握、権限昇格経路の検討、収集対象データの優先順位付け、持ち出し対象の選別、さらには恐喝戦略の組み立てを支えていると説明しています。大量のメール、ファイル、データベースを短時間で要約し、どの情報が最も価値が高いか、どの情報を交渉材料にすると被害者へ圧力がかかるかを整理できるため、ランサムウェアや恐喝型攻撃の効率が大きく上がります。日本語記事では、これを ハッカーやランサムウェアグループがAIをサイバー攻撃へ組み込み始めた動き と整理しています。
これは、IPAが1位に置いた ランサム攻撃による被害 とも強くつながります。
AIリスクは 内部統制 と 外部脅威 を一体で扱うべき
IPAの資料は、AI利用に関して、未許可AIの禁止、利用規程整備、入力情報の制限、生成結果の検証、複数名チェックなどを挙げています。これは今後も正しい方向です。ただしMicrosoftの分析を踏まえると、組織は AIを使う従業員をどう統制するか だけでなく、AIを使う攻撃者にどう備えるか も同じテーマとして扱うべきです。具体的には、AIサービスの可視化やオプトアウト設定と並行して、AIで洗練されたフィッシングを前提にした利用者教育、添付ファイルやURLに頼らない異常検知、認証情報の窃取を前提にした多要素認証の徹底、内部不正や正規アクセス悪用を前提にしたログ監査まで一体で進める必要があります。
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