2026年4月15日、新潟県南魚沼郡の湯沢町(田村正幸町長)は、元会計室会計係長による公金横領事案について業務上横領(刑法第253条)に該当するとして南魚沼警察署に告訴状を提出し、受理されたと発表しました。
横領期間は2023年7月24日頃から2026年3月26日までの約2年8か月にわたり、金庫で保管していた歳計および歳計外現金の合計642万900円が不正に持ち出されていました。被告訴人はすでに懲戒免職処分を受けており、被害金の全額についても弁済が完了しています。
この記事のサマリー
- 湯沢町の元会計係長(女性・60歳)が2023年7月24日頃から2026年3月26日にかけて、業務で管理していた金庫内の公金642万900円を不正に持ち出し、私的(生活費)に消費していました。
- 発覚のきっかけは2026年3月26日の内部点検です。金庫内に約900万円が保管されているはずが約300万円しかなかったことから調査が開始され、横領が確認されました。
- 被告訴人は2026年3月30日付で懲戒免職。被害額642万900円は2026年3月31日に全額弁済が完了しています。
- 告訴状は2026年4月15日付で南魚沼警察署に提出・受理されました。
- 監督責任として会計室長が減給3か月(10分の1)の処分。また町長・副町長の処分については条例改正案が4月28日の臨時議会に提出される予定です。
- 約2年8か月にわたって発覚しなかった背景には、担当者への業務集中・相互確認の欠如という自治体の会計管理上の構造的問題があります。
目次
事案の経緯
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2023年7月24日頃 | 横領行為の開始とみられる時期 |
| 2026年3月26日 | 内部点検で金庫内の現金不足(約600万円)が判明。調査の結果、被告訴人の横領行為を確認 |
| 2026年3月30日 | 被告訴人を懲戒免職処分。会計室長を減給3か月(10分の1)の処分 |
| 2026年3月31日 | 被告訴人が被害金642万900円を全額弁済 |
| 2026年4月15日 | 湯沢町が南魚沼警察署に業務上横領で告訴状を提出・受理 |
| 2026年4月28日(予定) | 町長・副町長の処分に関する条例改正案を臨時議会に提出予定 |
横領の手口と発覚の経緯
被告訴人は湯沢町役場会計室において、歳計現金(自治体の収入・支出に関する現金)および歳計外現金(税還付金等として一時保管する現金)の収受・保管業務を担当していました。金庫で保管していた現金を2023年7月頃から少額ずつ持ち出し、生活費に充てていたとみられます。
発覚のきっかけは定例的な内部点検でした。金庫内には約900万円が保管されているはずのところ、約300万円しかなかったことから関係者の調査が行われ、被告訴人の横領行為が確認されました。被告訴人は内部調査において横領の事実を認め、動機について「生活費に困った」と供述しています。
約2年8か月なぜ発覚しなかったのか—自治体の内部統制の課題
本件で特に注目すべきは、横領行為が約2年8か月にわたって発覚しなかったという点です。
通常、現金の保管・管理業務においては「職務の分離(Segregation of Duties)」が内部統制の基本原則です。現金の「収受」「保管」「記録」「確認」を同一人物が担わないよう役割を分離し、定期的な残高確認・複数人による相互チェックを行うことで、横領を早期に発見・防止できます。
本件では会計係長という単独の担当者が長期にわたって現金管理を担い、その業務が十分な相互確認なく継続していた可能性があります。自治体では人員の少なさから1人の担当者に業務が集中しやすく、管理職による日常的なモニタリングが機能しにくいという構造的な問題があります。
また、定例の内部点検ではなく日常的な残高確認が機能していれば、横領開始から短期間での発覚が可能だったとみられます。
自治体・公的機関の内部不正対策——現金管理における最低限のチェックポイント
本件のような現金管理における内部不正を防止するための対策として、以下が最低限必要です。
現金の日次残高確認と複数人チェックとして、金庫内の現金残高を毎日記録し、担当者以外の管理職または別の担当者が定期的(少なくとも月1回以上)に実残高と帳簿を照合する体制を整備することが基本です。
担当者の固定化・長期化の回避として、現金管理業務を特定の1人が長期間独占しないようローテーションを実施します。担当者が長期休暇を取る際に別の担当者が業務を代行する「強制休暇制度」の導入も有効です。
抜き打ちの内部監査として、定例の内部点検だけでなく、予告なしの残高確認を定期的に実施します。横領の多くは「いつ確認されるかわかっている」という安心感が助長します。
会計システムによる自動記録として、現金の出入りをシステムで自動記録し、担当者が手書きで記録を改ざんできない環境を整備することが根本的な対策です。








