Red Hat RHACM/MCEに深刻な5件の脆弱性 CVSS 9.9、管理クラスタで任意コード実行・権限昇格の恐れ(CVE-2026-72526,CVE-2026-73268)他

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Red Hat RHACM/MCEに深刻な5件の脆弱性 CVSS 9.9、管理クラスタで任意コード実行・権限昇格の恐れ(CVE-2026-72526,CVE-2026-73268)他

Red HatのKubernetesマルチクラスタ管理製品「Red Hat Advanced Cluster Management for Kubernetes(RHACM)」および「Multicluster Engine for Kubernetes(MCE)」で、任意コード実行やクラスタ横断の権限昇格、管理対象クラスタの認証トークン窃取につながる5件の脆弱性が明らかになりました。

対象となるのはCVE-2026-72526、CVE-2026-73269、CVE-2026-73268、CVE-2026-72508、CVE-2026-70398です。Red HatによるCVSS v3.1の基本値は、4件が9.9、CVE-2026-70398が9.6となっています。

5件はいずれも完全な未認証攻撃ではなく、テナントやnamespace管理者など一定の権限を持つユーザーによる悪用が前提です。一方、限定的な権限からOperatorやコントローラーが持つ高い権限を間接的に利用し、別の管理対象クラスタやクラスタ全体へ影響を拡大できる点が問題となっています。

特にCVE-2026-72526では、RHACMのハブクラスタでApplicationを作成できるテナントが、本来アクセスできないマネージドクラスタを対象として処理を実行させ、接続されたspokeクラスタで任意コード実行やcluster-admin権限の取得につながる可能性があります。

Red Hat RHACM/MCE脆弱性のサマリー

  • CVE-2026-72526はRHACMのmulticloud-integrationsに存在し、任意のマネージドクラスタへの権限昇格や任意コード実行につながる可能性があります。CVSS v3.1は9.9です。
  • CVE-2026-73268はMCEのcluster-curator-controllerに存在し、ClusterCuratorを操作できるテナントが高権限ServiceAccountを通じて任意のJobを実行できる問題です。CVSS v3.1は9.9です。
  • CVE-2026-73269もMCEのcluster-curator-controllerに存在し、namespace内の限定権限からクラスタ全体への権限昇格につながります。CVSS v3.1は9.9です。
  • CVE-2026-72508はRHACMのmulticloud-operators-subscriptionに存在し、application-manager addonの広範な権限を利用してクラスタスコープのリソースを展開できる問題です。CVSS v3.1は9.9です。
  • CVE-2026-70398はRHACMのGitOpsClusterコントローラーに存在し、spokeクラスタのBearer Tokenを攻撃者が管理するnamespaceへ書き出させられる可能性があります。CVSS v3.1は9.6です。
  • 5件ともCVSS上のPrivileges RequiredはLowで、一定の認証済み権限が必要です。インターネットから誰でも直接悪用できる未認証RCEではありません。
  • CVE-2026-72526とCVE-2026-70398について、Red Hatは自社基準を満たす実用的な緩和策はないとしています。
  • CVE-2026-73268とCVE-2026-73269では、ClusterCuratorを操作できるユーザーを信頼できる管理者やServiceAccountに限定するRBAC対策が案内されています。
  • CVE-2026-72508では、application-manager addonを最小権限のRBAC構成へ変更することが緩和策として示されています。
  • 2026年8月19日時点で、Red Hatの公開CVE情報から実際の攻撃で悪用されていることを示す記載は確認できません。
  • CISA Known Exploited Vulnerabilities(KEV)Catalogへの5件の掲載も、本稿確認時点では確認できませんでした。
  • Red Hat公式CVE情報では公開PoCへの言及も確認できませんでした。
  • Red Hatの公開CVE情報からは、本稿確認時点で5件すべてに対応する具体的なRHSA番号や修正版バージョンを確認できないため、利用組織はCustomer Portalで自社環境のPackage Stateや更新状況を確認する必要があります。
CVE 主な対象 CVSS v3.1 主な影響 必要権限
CVE-2026-72526 RHACM / multicloud-integrations 9.9 任意コード実行、spokeクラスタでのcluster-admin権限取得 Low
CVE-2026-73269 MCE / cluster-curator-controller 9.9 namespace権限からクラスタ全体への権限昇格 Low
CVE-2026-73268 MCE / cluster-curator-controller 9.9 高権限での任意コード実行、Secretsへのアクセス Low
CVE-2026-72508 RHACM / multicloud-operators-subscription 9.9 クラスタスコープへの権限昇格、任意コード実行の可能性 Low
CVE-2026-70398 RHACM / multicloud-integrations 9.6 spokeクラスタのBearer Token窃取、権限昇格 Low

CVE-2026-72526、ハブ側の限定権限から任意のspokeクラスタへ影響

5件の中でも影響範囲が大きいのがCVE-2026-72526です。

問題はRHACMのmulticloud-integrationsコンポーネントにあります。

Application propagation controllerがApplication Custom Resourceに含まれるマネージドクラスタの指定を適切に検証しないため、ハブクラスタ上でApplicationを作成できるテナントが、本来権限を持たない任意のマネージドクラスタを対象にできる可能性があります。

Red Hatによると、この問題が悪用されると、攻撃者が指定したマネージドクラスタへManifestWorkを送信し、spoke側のArgoCDを通じて攻撃者が制御するマニフェストを同期させられる可能性があります。

その結果、対象となったspokeクラスタで任意コード実行や権限昇格につながり、Applicationを作成できるテナントがcluster-admin相当の権限を取得できる恐れがあります。

CVSS v3.1は9.9で、Attack VectorはNetwork、Attack ComplexityはLow、Privileges RequiredはLow、User InteractionはNoneです。

ただし、完全な未認証RCEではありません。悪用にはハブクラスタ上でApplicationを作成できる権限が必要です。

Red HatはCVE-2026-72526について、同社の基準を満たす実用的な緩和策は利用できないとしています。

CVE-2026-73268、高権限ServiceAccountで任意のJobを実行

CVE-2026-73268は、Multicluster Engineのcluster-curator-controllerに存在するコードインジェクションの脆弱性です。

ClusterCuratorリソースを作成または更新できるテナントが、ユーザーが制御可能なJobの定義を処理させることで、コントローラーが持つ高い権限を利用できる可能性があります。

問題が悪用された場合、Jobはコントローラーの高権限ServiceAccountで実行されるため、任意コード実行や権限昇格につながり、クラスタ全体のSecretsやマネージドクラスタへのアクセスへ影響が及ぶ可能性があります。

Red HatはCWE-94「Improper Control of Generation of Code」に分類し、CVSS v3.1を9.9と評価しています。

暫定的な緩和策として、ClusterCuratorを作成・更新できるRBAC権限を、信頼できる管理者やServiceAccountだけに限定することが推奨されています。

CVE-2026-73269、namespace内の権限からクラスタ全体へ昇格

同じcluster-curator-controllerでは、CVE-2026-73269も確認されています。

Red Hatによると、namespace内のローカルな権限を持つユーザーが特定条件のClusterCuratorリソースを作成すると、クラスタスコープのClusterRoleBindingが作成され、namespace内に限定されていた権限をクラスタ全体へ拡大できる可能性があります。

取得される権限には、Secretsへのアクセスや操作、クラスタ管理処理、Hosted ClusterやNodePoolの削除などが含まれるとされています。

CVSS v3.1は9.9で、CWE-269「Improper Privilege Management」に分類されています。

Red Hatは、ClusterCuratorを作成できるユーザーをRBACで限定することに加え、Admission Controllerを利用して問題となる条件のリソース作成を拒否する方法も緩和策として示しています。

CVE-2026-72508、Operatorの過剰権限を利用してnamespace境界を突破

CVE-2026-72508は、RHACMのmulticloud-operators-subscriptionコンポーネントに存在します。

問題となるのはapplication-manager addonのServiceAccountに広範な権限が付与されていることです。

managed cluster上のnamespace管理者がSubscription Custom Resourceを通じてこのServiceAccountの権限を間接的に利用し、本来許可されていないクラスタスコープのリソースを展開できる可能性があります。

Red Hatは、この問題によって悪意あるテナントがnamespace境界を越えて権限を拡大し、潜在的には任意コード実行につながる可能性があると説明しています。

CVSS v3.1は9.9です。

緩和策としては、application-manager addonで最小権限のRBAC構成を利用することが案内されています。

CVE-2026-70398、spokeクラスタのBearer Tokenが流出する可能性

CVE-2026-70398は、RHACMのmulticloud-integrationsに含まれるGitOpsCluster controllerの問題です。

認証済みのテナントがGitOpsClusterの処理を悪用し、spokeクラスタで使用するBearer Tokenを、本来想定された安全な保存先ではなく、攻撃者が管理するnamespaceへ書き込ませられる可能性があります。

トークンを取得されると、マネージドクラスタの情報への不正アクセスや権限昇格につながるほか、ArgoCD AppProjectによるアクセス制御を回避される恐れがあります。

CVSS v3.1は9.6です。機密性と完全性への影響はHigh、可用性への直接的な影響はNoneと評価されています。

Red HatはCVE-2026-70398についても、同社の基準を満たす実用的な緩和策は利用できないとしています。

「5件すべてCritical」はRed Hatの評価体系に注意

今回の5件については、深刻度の表現にも注意が必要です。

Red Hatの各CVEページのStatementでは「Critical flaw」と説明されており、CVSS v3.1も9.6~9.9と非常に高い値です。

一方、Red HatではCVSSとは別に独自のImpact Ratingを使用しており、Security Data APIではImpactがImportantとして扱われる情報も確認されています。

Red Hat自身も、CVSSスコアとRed HatのImpact Ratingは異なる場合があると説明しています。

そのため、「CVSS 9.9=Red Hatの製品影響評価も必ずCritical」と単純に読み替えないことが重要です。

本稿では5件を一律に「Critical」とせず、Red Hatが示した個別のCVSSと実際に想定される影響を基準に整理しています。

修正版の適用状況はRed Hat Customer Portalで確認を

起点となったSecurityOnlineの記事では、5件について修正版が提供されたと報じています。

一方、2026年8月19日時点で確認したRed Hatの公開CVEページでは、5件すべてに対応する具体的なRHSA番号や修正版バージョンを確認できませんでした。

そのため、RHACMやMCEを利用している組織は、二次情報に記載されたバージョンだけで更新判断をせず、Red Hat Customer Portal上で自社が使用している製品バージョンのPackage State、VEX、Security Advisory、利用可能な更新を確認する必要があります。

特にCVE-2026-72526とCVE-2026-70398は実用的な緩和策が示されていないため、影響する環境では正式な修正状況の確認を優先すべきです。

実悪用やPoC公開は現時点で確認できず

2026年8月19日時点で、Red Hatの5件の公式CVEページには、実際の攻撃で悪用されていることを示す記載は確認できません。

CISA Known Exploited Vulnerabilities Catalogについても、5件の掲載は確認できませんでした。

ただし、KEVに掲載されていないことは「悪用されていない」ことを証明するものではありません。現時点では、実悪用を裏付ける公的な情報を確認できないという整理が適切です。

また、Red Hatの公式CVE情報には公開PoCへの言及も確認できません。本稿ではPoC公開済みとは扱いません。

マルチテナント環境では「低権限だから安全」とは言えない

今回の5件に共通しているのは、攻撃者が完全な外部ユーザーではなく、すでにテナントやnamespace内で何らかの権限を持っていることです。

一見すると、インターネットから直接悪用できる未認証RCEより危険性が低いように見えます。

しかし、RHACMやMCEは複数のKubernetes/OpenShiftクラスタを中央から管理する基盤です。

ハブクラスタ上の限定的な権限から、別のspokeクラスタのcluster-admin権限、高権限ServiceAccount、クラスタ全体のSecretsへ到達できれば、侵害範囲は当初割り当てられていたテナント境界を大きく超えます。

特に、複数の部門、開発チーム、顧客が同じ管理基盤を共有している環境では、「一般ユーザーにはcluster-adminを付与していない」というだけでは十分な対策になりません。

Operatorやコントローラーが保持している権限を、低権限ユーザーがCustom Resourceを通じて間接的に行使できないかという観点が重要になります。

情報システム・セキュリティ部門への示唆

RHACMまたはMulticluster Engineを運用している組織では、利用中の製品、Operator、コンポーネントのバージョンと、Red Hatが公開している最新の影響状況を確認する必要があります。

特にマルチテナント環境では、Application、GitOpsCluster、ClusterCurator、Subscriptionなど今回問題となったCustom Resourceについて、どのユーザーやServiceAccountが作成・更新できる状態になっているかを棚卸しすることが重要です。

CVE-2026-73268とCVE-2026-73269では、ClusterCuratorの作成・更新権限を信頼できる管理者へ限定することが緩和策になります。

CVE-2026-72508では、application-managerのServiceAccountを最小権限化する必要があります。

あわせて監査ログについても、通常利用しないユーザーによるApplication、ClusterCurator、Subscriptionの作成や変更、想定外のnamespaceへのSecret生成、通常とは異なるマネージドクラスタを対象にしたManifestWorkなどがないか確認することが考えられます。

今回の5件は、KubernetesのRBACをユーザー単位で適切に設定していても、それだけではマルチテナント境界を保証できないことを示しています。

OperatorやコントローラーのServiceAccount、Custom Resourceを通じた代理処理、ハブとspoke間の信頼関係まで含めて権限設計を確認する必要があります。

出典