EDRと振る舞い検知の違いとは 効果的に導入するにはどうしたらいい?

EDRと振る舞い検知の違いとは 効果的に導入するにはどうしたらいい?

サイバー攻撃の脅威は日々進化し、企業の防御戦略において革新的な技術が必要不可欠になっています。EDRや振る舞い検知は、そうした中で効果的なセキュリティ対策方法であるとして注目が集まっています。

本記事では、そんなEDRと振る舞い検知について、それぞれの違いや効果的な導入についてお話しします。

EDRについておさらい

EDRとは

EDR(Endpoint Detection and Response)は、エンドポイントの脅威を検出し、対応するためのシステムです。これにはリアルタイムの監視と分析が含まれ、未知の攻撃や複雑なセキュリティリスクに迅速に対応することが可能です。

EDRの主要機能としては、下記です。

  • リアルタイム監視:エンドポイントの異常な挙動を監視し、即時に脅威を検知します。
  • データ収集と分析:詳細なログデータを収集し、AIや機械学習を用いて分析します。
  • 迅速なインシデント対応:検知した脅威に対して即座に対応し、被害を最小限に抑えます。

振る舞い検知についておさらい

振る舞い検知は、異常な行動や予期せぬシステムの変更を自動的に識別する技術です。これにより、シグネチャベース(パターンマッチング)の検出では捕捉しにくい新しいタイプのマルウェアや、ファイルレス攻撃(非マルウェア攻撃)にも対応可能となります。具体的には、従業員のパソコンで通常とは異なるファイルアクセスが検知された場合、その活動を即座にフラグし、詳細な分析を行います。

振る舞い検知の主な特徴は下記です。

  • 異常行動の検知:正常な行動パターンから逸脱した動作を検出。
  • 動的解析:実行中のプログラムの振る舞いを監視し、マルウェアを特定。
  • リアルタイム対応:異常を即座にフラグし、対応策を講じる。

マルウェア対策の3類型

EDRや振る舞い検知は従来型のマルウェア対策とは異なるものですが、ではそもそもマルウェア対策にはどんな種類があるのでしょうか。

パターンマッチング

従来のアンチウイルスソフトウェアが採用する方法であり、既知のウイルスのデジタル署名(シグネチャ)を用いてマルウェアを検出します。しかし、新しい脅威や変異したウイルスには効果が限定的です。例えば、毎年新たに登場する数万種のマルウェアは、既知のシグネチャには含まれていません。

振る舞い検知

システムの通常の振る舞いパターンからの逸脱を検出することで、未知の脅威に対応します。これには、異常なネットワークトラフィックや変わったファイルアクセスパターンが含まれます。例えば、ある製造業の企業では、EDRを通じて不正なファイル削除活動を早期に検知し、迅速に対応することができました。

EDR

EDRは、振る舞い検知の機能を含むより包括的なセキュリティソリューションです。脅威の検出だけでなく、事後の分析と対応も可能にし、詳細なフォレンジックデータを提供、攻撃の全体像を明らかにし、被害の範囲と原因を特定することができます。

また、パターンマッチングと振る舞い検知が入口でマルウェアを防ぐ対策であるのに対し、EDRはエンドポイントに入り込んだマルウェアを検知するというアプローチをとるという違いがあります。

振る舞い検知とEDRの違い

まず、それぞれの手法の守備範囲が異なります。振る舞い検知はマルウェアをその振る舞いで検知し、内部への侵入を防止するというアプローチです。一方、EDRは、侵入してしまったマルウェアを振る舞いで検知し、被害の発生・拡大を防止するというものです。

また、EDRは振る舞い検知を基盤としながらも、それを超えた機能を提供します。EDRは脅威の検出から対応、そして回復までの全プロセスを一貫してカバーし、組織のセキュリティ体制を強化します。振る舞い検知は主に異常検知に焦点を当てますが、EDRはその先の対応とフォレンジック分析をも含みます。

振る舞い検知が注目される背景

デジタル化の進展と共に、サイバー攻撃はより巧妙かつ複雑化しています。振る舞い検知は、これらの進化する脅威に対して効果的な手段を提供します。例えば、ゼロデイ攻撃では、従来のシグネチャベースの検出が困難ですが、振る舞い検知は未知の攻撃パターンをリアルタイムで検出し、迅速に対応できます。

特に近年では、ランサムウェアやファイルレスマルウェアなど、従来の防御策では対応が難しい脅威が増加しています。振る舞い検知は、これらの新たな脅威に対する効果的な防御策として注目されています。

また、こうした攻撃の登場で、内部と外部を区別して侵入を許さない境界型セキュリティ対策のアプローチは意味を失いつつあります。これからは、マルウェアの侵入を前提とし、外部と内部の区別なく警戒を張り巡らすゼロトラスト・セキュリティのアプローチが求められます。そこで、振る舞い検知やEDRによる対策が求められるのです。

EDRと振る舞い検知の両方を導入するのがお薦め

EDRと振る舞い検知のどちらを導入するべきかお悩みの方へは、両方の導入をお勧めしています。

なぜ両方が必要か

EDRと振る舞い検知を組み合わせることで、セキュリティ対策の幅が広がります。EDRは即時の脅威対応と詳細なインシデント分析を提供し、振る舞い検知はそれに先駆けて異常な振る舞いを特定します。この組み合わせにより、エンドポイントの防御を強化し、先進的な攻撃からの保護を実現します。

具体的な導入メリット

  • 包括的なセキュリティ対策: EDRはアラート生成から対応までのプロセスを自動化し、振る舞い検知はそれに先駆けて異常な振る舞いを特定します。
  • 迅速な対応: 組み合わせることで、脅威をより速く特定し、より迅速に対応することが可能です。
  • 詳細な分析: EDRによるフォレンジックデータと振る舞い検知による行動分析が組み合わさることで、セキュリティチームはより深い洞察を得ることができます。

EDRと振る舞い検知を両方兼ね備えた製品一覧

市場には、EDRと振る舞い検知の両方の機能を備えた多くの製品が存在します。ここでは、いくつかの主要な製品を紹介します。

Sophos Intercept X Advanced

高性能なAIを搭載したセキュリティ製品で、ログ検知・マルウェア駆除は勿論の事、端末の隔離・復旧といった対応をワンストップで実施することが可能です。

公式サイト:https://www.sophos.com/ja-jp/products/endpoint-antivirus

CrowdStrike Falcon

シングルエージェントの統合プラットフォームですので、AIによるワークフローで手間なく迅速な運用が可能です。

また、管理画面も一つのプラットフォームで確認できるという利便性もあります。

公式サイト:https://www.crowdstrike.jp/falcon-platform/

VMWare Carbon Black Cloud

高度なNGAVによる侵入防止と、一部それをすり抜けた脅威をEDRが検出します。

感染端末が手元にない場合も、遠隔での隔離が可能です。

公式サイト:https://licensecounter.jp/vmware/products/carbon-black-cloud.html

適切な選択が企業のセキュリティ体制を大幅に向上させることができます。各製品の詳細な比較を行い、組織の具体的な要件とリスクプロファイルに最も適したソリューションを選択することが重要です。

まとめ

EDRや振る舞い検知は、現代のサイバーセキュリティ環境において欠かせない技術です。これらの技術を適切に組み合わせることで、企業は高度な脅威に対して効果的に対応し、そのセキュリティ体制を最先端のものにすることができます。さまざまな製品が存在するため、自社の環境やニーズに最も適した選択を行うことが、将来的なセキュリティ保障の鍵となります。

サイバーセキュリティは一朝一夕に達成できるものではありませんが、正しい知識と技術の選択により、確実にリスクを低減することが可能です。

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