3Dモデリングツールで意識すべきセキュリティ対策

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3Dモデリングツールで意識すべきセキュリティ対策

3Dモデリングツールは、製造業、建築、ゲーム開発、アニメーションなど幅広い分野で利用されており、業界の発展とともにその活用範囲も拡大しています。しかし、3Dデータの取り扱いにはセキュリティ上のリスクも潜んでおり、不正アクセスやデータ漏洩が発生すると、知的財産の流出やプロジェクトの遅延といった深刻な影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、3Dモデリングツールを利用する際に意識すべきセキュリティ対策について解説します。企業や個人が安全に3Dデータを管理し、セキュリティリスクを最小限に抑えるためのポイントを確認していきましょう。

CADとは

CADとは「Computer Aided Design」の略称です。コンピューターを使って図面の作成を行うためのツールで、建築や製造業界などの設計を必要とする業界の多くで利用されています。
たとえば建築業界では、建物の平面図や立体的なモデルの作成にCADを使います。従来は、手書きで設計図を作成していたため、書くときだけではなく修正にも時間がかかっていました。しかし、CADを使うことでこれらの作業が効率化されました。さらに、設計図面などがデータ化されたことによって、管理や共有がしやすくなりました。
CADには2D CADや3D CADがあり、平面図を書くときは2D CAD、立体的なモデルも作成したい場合は3D CADを利用します。

参照:CADとは?機能やメリット、導入時のポイントをわかりやすく解説

3Dモデリングデータのセキュリティリスク

3Dモデリングに関するデータは、単なる設計情報にとどまらず、機密性の高い知的財産が含まれるケースが多いです。そのため、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐためには、適切なセキュリティ対策が不可欠です。

(1)不正アクセスのリスク

クラウドベースの3Dモデリングツールが増える中、外部からの不正アクセスによるデータ流出のリスクも高まっています。特に、企業の設計データが第三者に漏洩した場合、競争優位性を失う可能性があります。

(2)ランサムウェア攻撃の標的に

3Dデータは非常に価値の高い情報であり、ランサムウェア攻撃の標的になることもあります。攻撃者はデータを暗号化し、復旧のための身代金を要求するため、定期的なバックアップやアクセス制限が必要です。

(3)データの改ざんリスク

3Dデータが悪意のある第三者によって改ざんされると、製造業では品質や安全性に影響を及ぼす可能性があります。特に、航空宇宙や医療分野では、改ざんされたデータをもとに製品を製造すると重大な事故につながる危険性があります。

定期的に発生する脆弱性

全てのソフトウェアは、必ず脆弱性が発生します。

以下のような有名なモデリングツールでも、定期的に発生しているので、後述する対策の通り必ず最新の状態で利用する必要があります。

Blenderの脆弱性

  • CVE-2009-3850(2009年):​Blenderのバージョン2.34、2.35a、2.40、2.49bにおいて、特定の.blendファイルを開くことで、リモートの攻撃者が任意のコードを実行できる脆弱性が報告されました。​​

AutoCADの脆弱性

  • CVE-2017-9753(2017年):​AutoCAD 2018以前のバージョンにおいて、特定のDWGファイルを開くことで、リモートの攻撃者が任意のコードを実行できる脆弱性が報告されました。

Mayaの脆弱性

  • CVE-2020-23354(2020年):​Autodesk Maya 2020以前のバージョンにおいて、特定のMELスクリプトを含むファイルを開くことで、リモートの攻撃者が任意のコードを実行できる脆弱性が報告されました。​​

3Dモデリングツールを安全に利用するための基本対策

3Dモデリングデータを適切に保護するためには、いくつかの基本的な対策が求められます。

(1)アクセス管理の強化

3Dデータへのアクセスは、必要最小限のユーザーに限定することが重要です。特に、クラウドストレージを利用する場合は、以下のような対策を講じましょう。

  • 多要素認証(MFA)の導入:パスワードだけでなく、ワンタイムパスワードや生体認証を利用することで、不正アクセスを防ぐことができます。
  • ユーザーごとのアクセス権限の設定:閲覧のみ許可するユーザー、編集可能なユーザーなど、細かく権限を設定することで、不正なデータ操作を防げます。

(2)データの暗号化

3Dデータは、適切な暗号化技術を用いて保護することが重要です。ファイルを保存する際や送信する際には、AES(Advanced Encryption Standard)などの強力な暗号化方式を使用することで、データ漏洩のリスクを低減できます。

(3)定期的なバックアップ

ランサムウェア攻撃やシステム障害によるデータ損失に備えて、定期的に3Dデータをバックアップする習慣をつけましょう。特に、以下の2種類のバックアップを組み合わせることで、より安全にデータを管理できます。

  • ローカルバックアップ:オフライン環境の外付けHDDやNAS(ネットワークストレージ)に保存
  • クラウドバックアップ:セキュリティが強固なクラウドストレージサービスを利用

(4)最新のバージョンで利用する

ソフトウェアには必ず脆弱性が発生します。パッチがリリースされた場合は適用する事を忘れずできるだけ最新バージョンを利用する事をお勧めします。

(5)EDRやアンチウイルスソフトを利用する

動作的に少し遅くなる可能性がありますが、組織で3Dモデリングツールを利用する際は、EDRを導入するなどの検討も必要になります。

3Dデータの共有時に気を付けるべきポイント

3Dデータを外部と共有する際には、情報漏洩を防ぐための対策が求められます。

(1)不要なデータの削除

3Dデータには、設計の詳細情報や機密データが含まれることが多いため、外部に送信する際は、不要なメタデータや機密情報を削除しましょう。特に、以下の情報が含まれていないか確認が必要です。

  • 設計履歴(CADソフトの履歴機能によって含まれることがある)
  • プロジェクト名や企業ロゴ
  • 製造プロセスに関する情報

(2)パスワード付きの圧縮ファイルで送信

メールで3Dデータを送る際は、必ずパスワード付きのZIPファイルに圧縮し、別途パスワードを送信することで不正アクセスを防ぎます。可能であれば、安全なファイル転送サービスを利用するのも有効です。

(3)共有期限を設定する

クラウドストレージで3Dデータを共有する場合、一度ダウンロードした後は、できるだけ早く共有リンクを無効にするように設定しましょう。