中国、アジア冬季競技大会へのサイバー攻撃で米 NSA 職員を名指し非難

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中国、アジア冬季競技大会へのサイバー攻撃で米 NSA 職員を名指し非難

2025年4月16日、中国当局は、今年2月に開催されたアジア冬季競技大会に対する大規模なサイバー攻撃に関与したとして、アメリカ国家安全保障局(NSA)の関係者3名を名指しで非難しました

これまで中国政府は米国によるハッキングを繰り返し批判してきましたが、個人名まで公表するのは極めて異例であり、両国間のサイバー空間を巡る緊張が一層高まっています。

攻撃はNSAの「特別アクセス作戦室(TAO)」が主導か

発表によると、攻撃はNSA内の「Office of Tailored Access Operations(特別アクセス作戦室)」、通称TAOに所属する3人の職員が主導し、アジア冬季大会が開催された黒竜江省ハルビン市の大会運営システムに対して実施されたとされています。

対象となったのは、選手や関係者の登録システム、到着・出発管理、競技エントリープラットフォームであり、さらに電力、交通、通信、防衛研究に関連する重要インフラへのアクセスも試みられたとのことです。

数十万件の攻撃、欧州・アジアのサーバーを経由して匿名化

中国の国家コンピュータウイルス緊急対応センターは、同大会を狙った数十万件に及ぶ攻撃が「外国の敵対勢力」によって実行されたと報告しました。

国営メディアの新華社によると、NSAは関連フロント企業を通じて欧州やアジア地域に設置されたサーバーを匿名でレンタルし、各国のIPアドレスを悪用したとされています。

米国への非難と応答

中国外務省の林剣報道官は記者会見にて、「中国はこれまでにも様々なルートで、米国による中国の重要インフラへのサイバー攻撃に対し深刻な懸念を表明してきた」と述べ、「米国は責任ある態度でサイバーセキュリティ問題に対処し、中国への攻撃と根拠のない中傷を直ちにやめるべきだ」と強く非難しました。

一方、米国家安全保障局(NSA)は本件に関するコメントを控えており、名指しされた3名が現在も政府職員であるかどうかは確認されていません。

背景にある米中間のサイバー戦争

今回の非難は、中国がアメリカのサイバー活動に対して一方的に応酬した形ですが、これまでアメリカも中国政府系ハッカーによる攻撃を非難してきました。

今年3月には米司法省がi-Soon社や中国公安省関係者、ハッカー集団「Salt Typhoon」の構成員ら12名を起訴したと発表しています。

さらに先週、米ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国高官が2023年12月の米中秘密会合で、米国内の重要インフラへのハッキング事実を認めたと報じており、双方が水面下で激しい情報戦を展開していることが明らかになっています。

情報漏洩リスクと国家間の対立

サイバー空間を舞台にした米中の対立は、国家の信頼性やインフラ保護といった観点から、国際的にも重大な懸念事項となっています。今回の中国の発表がどこまで技術的証拠に基づいたものかは不透明ですが、少なくとも国際社会に対するメッセージとしては極めて挑戦的であり、米国がこれにどのように応じるのか注目されます。