スマートニュース側の対応と運用型広告の課題
スマートニュースの広報担当者によると、問題の広告は2月上旬から掲載され、2月14日に自社の審査基準違反を確認。その後、2月28日に広告掲載を完全に停止しました。
同社は「広告が入稿された時点で違反を検知できなかった」としながらも、「利用者の誤認を招くだけでなく、なりすましの対象となった人物の社会的評価を損なう重大な問題と認識している」と説明しています。
また、広告主や広告代理店に対して厳しい姿勢を示し、適切な対応を求めたといいます。
リアルタイムの運用型広告の審査に課題
ネット広告には、広告主が特定のメディアの枠を購入する「予約型」と、広告が表示されるたびにリアルタイムで入札が行われる「運用型」の2種類があります。
電通の調査では、2023年時点でネット広告市場全体の87.4%が運用型広告となっており、この比率は年々高まっています。
スマートニュースも運用型広告を採用しており、独自のアルゴリズムと人の目によるチェックを組み合わせた審査体制を導入していたものの、今回のような広告を完全に防ぐことはできませんでした。
あるネット広告会社の担当者は「ネット広告市場は3兆円規模に成長し、膨大な数の広告がリアルタイムで入れ替わるため、すべてを細かく審査するのは現実的に難しい」と述べています。実際、経済産業省の調査によれば、運用型広告の掲載先を「完全に把握できる」と答えた企業は2割程度にとどまっており、
広告の管理が難しくなっている実態が浮き彫りになっています。
規制の必要性と今後の展開
こうした状況を受け、総務省はネット広告のリスク管理を強化するための有識者会議を設置し、広告主向けの新たな指針を月内にも策定する方針です。広告業界団体「日本アフィリエイト協議会」の笠井北斗代表理事は、「なりすまし広告の法的責任は基本的に広告主が負うものの、日本には運用型広告を規制する法律がなく、今後も消費者被害が増える可能性が高い」と指摘しています。
その上で、「広告プラットフォーム側にも違法広告の排除を義務付ける法規制を導入すべきだ」と提言しています。
ネット広告市場が急成長する一方で、なりすまし広告や偽情報の拡散といった問題も深刻化しています。企業やプラットフォームの自主的な取り組みに加え、法的な枠組みの整備が求められる状況となっています。
参照
岸田文雄氏のなりすまし ネット広告9割「運用型」 スマニュー「防げなかった」