警察庁、前サイバー捜査課長を懲戒免職 捜査費百数十万円を私的流用か、ユーロポール 派遣中から不正疑い

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警察庁、前サイバー捜査課長を懲戒免職 捜査費百数十万円を私的流用か、ユーロポール 派遣中から不正疑い

警察庁が2026年9月10日、海外出張などに伴う捜査費を不正に受給し私的に流用したなどとして、伊貝耕・前サイバー捜査課長を懲戒免職処分にしたと朝日新聞が報じました。

伊貝氏は55歳、階級は警視長で、処分時は警察庁長官官房付でした。報道によると、2022年から2026年ごろにかけ、欧州警察機構(Europol)への派遣中やサイバー捜査課長在任中、海外での捜査協力者への謝礼や外国治安機関との交流に関連する経費について、水増しや架空請求を繰り返し、計百数十万円の捜査費を不正に受け取ったとされています。

警視庁は詐欺や偽造有印私文書行使などの容疑で書類送検する方針と報じられています。刑事手続は今後進められる段階であり、犯罪事実について裁判で有罪が確定したわけではありません。

今回の事案がサイバーセキュリティ分野で重く見られる理由は、不正疑いの対象者が、全国のサイバー捜査の指導・調整や外国捜査機関との連携を担う警察庁サイバー捜査課のトップを務め、Europolへのリエゾン派遣経験も持つ幹部だったためです。

一方、現時点の公表・報道から、サイバー捜査情報、外国機関から共有された情報、機密情報が漏えいした事実や、国際共同捜査そのものが不正の影響を受けた事実は確認できません。経費不正と情報セキュリティ侵害は分けて扱う必要があります。

前サイバー捜査課長の懲戒免職をめぐるサマリー

報道で確認されている内容:

  • 警察庁は2026年9月10日、伊貝耕・前サイバー捜査課長を懲戒免職処分にしたと報じられています。
  • 伊貝氏は55歳、階級は警視長で、処分時は警察庁長官官房付でした。
  • 捜査費計百数十万円を不正に受給し、私的に流用したとされています。
  • 不正は2022年から2026年ごろにかけ、数十回行われた疑いがあると報じられています。
  • 支出額の水増し、架空請求、領収書の偽造などが行われたとされています。
  • 対象となった経費には、海外での捜査協力者への謝礼や、外国治安機関との交流に関する費用などが含まれていたと報じられています。
  • 不正に得た金は、私的な交際費、会食、遊興費などに充てられたとされています。
  • 不正に得た金額は全額返済したと報じられています。
  • 警視庁は詐欺、偽造有印私文書行使などの容疑で書類送検する方針とされています。
  • Europol派遣当時の上司らについても、監督責任を問う処分が行われると報じられています。

一次資料で確認できている経歴・組織情報:

  • 警察庁は2025年9月29日付で伊貝氏をサイバー捜査課長に発令しています。
  • 2026年5月1日時点の警察庁幹部名簿でも、伊貝氏がサイバー捜査課長として掲載されています。
  • 2026年6月26日付で、増沢五郎氏が新たにサイバー捜査課長へ発令されています。
  • 2026年9月1日時点の幹部名簿では、サイバー捜査課長は増沢氏です。
  • 2026年8月号の「警察学論集」では、伊貝氏は「前警察庁サイバー警察局サイバー捜査課長」「元サイバー警察局付(欧州サイバーリエゾン派遣)」として紹介されています。
  • 警察庁のサイバー戦略は、外国治安機関との国際共同捜査と情報・運用面での協力強化を重点項目にしています。
  • 同じ戦略は、サイバー警察活動の適正性、情報の厳格な管理、幹部による適切な指揮も明記しています。

現時点で確認できていない内容:

  • 刑事事件としての最終的な罪名
  • 書類送検後の検察の処分
  • 起訴の有無
  • 裁判での有罪・無罪
  • 不正が行われた正確な回数
  • 百数十万円の正確な金額
  • 上司らに対する具体的な処分内容
  • サイバー捜査情報や機密情報が外部へ流出した事実
  • Europolや外国捜査機関との共同捜査に実害が生じた事実
  • 不正経費処理が国際共同捜査の証拠や事件処理へ影響した事実
項目 内容
処分日 2026年9月10日
対象 伊貝耕・前警察庁サイバー捜査課長
階級 警視長
処分時の所属 警察庁長官官房付
処分 懲戒免職
不正疑いの期間 2022年~2026年ごろ
不正受給額 計百数十万円と報道
主な手口 水増し、架空請求、領収書偽造などと報道
関連する経費 海外捜査協力者への謝礼、外国治安機関との交流費などと報道
刑事手続 詐欺、偽造有印私文書行使などの容疑で書類送検方針と報道
Europolとの関係 欧州サイバーリエゾンとして派遣経験
サイバー捜査課長就任 2025年9月29日
後任発令 2026年6月26日
機密情報漏えい 現時点で確認できず
国際共同捜査への実害 現時点で確認できず

捜査費を水増し・架空請求し、領収書を偽造した疑い

朝日新聞の報道によると、伊貝氏は2022年から2026年ごろ、海外出張に関連する捜査費について不正な請求を繰り返したとされています。

対象となったのは、海外で捜査協力者へ支払う謝礼や、外国の治安機関との交流に必要な費用などでした。

実際より高い金額を申請する水増しや、実際には発生していない支出を申請する架空請求を行い、自らパソコンを使って領収書を偽造したケースもあったと報じられています。

不正は数十回に及び、受け取った金額は合計で百数十万円とされています。

警視庁は、こうした経費請求について詐欺や偽造有印私文書行使などに該当する疑いがあるとみて、書類送検する方針です。

刑事手続については、捜査機関が容疑を認定して書類を検察へ送る段階であり、その後の起訴・不起訴や裁判結果は確定していません。

2022年からEuropolへサイバーリエゾンとして派遣

報道によると、伊貝氏は2022年6月から、オランダ・ハーグに本部を置くEuropolへ長期出張の形で派遣されていました。

公開資料でも、2026年8月に発行された「警察学論集」の著者紹介で、伊貝氏は「元サイバー警察局付(欧州サイバーリエゾン派遣)」と記載されています。

同号で伊貝氏は「ユーロポールにおけるサイバー犯罪捜査の国際共同オペレーションに対する日本警察の参画と今後の課題」と題する論考を執筆しています。

Europolと日本警察の連携そのものは、伊貝氏個人の派遣より前から制度化されています。

Europolと警察庁は2018年12月、国境を越える重大犯罪への対応を強化するWorking Arrangementを締結しました。

この取り決めでは、テロ、薬物、サイバー犯罪などに関する協力を強化し、Europol本部へのリエゾンオフィサー派遣によって、Europolと警察庁の間で安全・迅速・直接的に情報を交換する体制を整えることが示されています。

Europolのリエゾンは国際サイバー捜査の結節点

サイバー犯罪では、攻撃者、C2サーバー、被害者、暗号資産、ドメイン、ホスティング事業者などが複数国へ分散します。

日本警察だけで国外の証拠を収集したり、海外の犯罪インフラを押収したりすることはできません。

このため警察庁は、Europolを含む外国捜査機関との情報共有と国際共同捜査を、サイバー犯罪対策の中核に位置付けています。

令和6年版警察白書では、Europolで各国の捜査員が情報共有・分析を行い、サイバー事案ではそこでの情報共有が国際共同捜査の成否を左右すると説明しています。

同白書に掲載された警察庁サイバー捜査課国際捜査係の職員は、日本警察がEuropolでの連携実績を積み上げ、多くの国際共同捜査へ参加するようになった経緯を紹介しています。

つまり、欧州サイバーリエゾンは単なる海外駐在ではなく、日本と外国法執行機関の捜査実務を接続する役割です。

今回、不正疑いの一部がその海外派遣期間中の経費に関係すると報じられているため、経費管理や監督体制の検証が必要になります。

2025年9月にサイバー捜査課長へ就任

警察庁の人事発令資料によると、伊貝氏は2025年9月29日付でサイバー捜査課長に就任しました。

直前の役職は、警察庁刑事企画課刑事総合研究官、警察政策研究センター付、サイバー警察局付の兼務です。

2026年5月1日時点の警察庁幹部名簿でも、サイバー捜査課長として伊貝氏の名前が掲載されています。

サイバー捜査課は、サイバー事案の捜査に関する企画・立案、情勢・手口分析、外国捜査機関との連携、都道府県警察が行うサイバー捜査の指導・調整などを担います。

全国の都道府県警察と外国機関をつなぐ、サイバー捜査の中枢に位置する部署です。

2026年6月26日に後任の増沢五郎氏を発令

警察庁の人事資料では、2026年6月26日付で増沢五郎氏がサイバー捜査課長に発令されています。

増沢氏はそれまで、関東管区警察局サイバー特別捜査部長と警察庁サイバー警察局付を兼務していました。

朝日新聞は、伊貝氏が2026年6月までサイバー捜査課長を務め、その後は長官官房付となっていたと報じています。

9月1日時点の警察庁幹部名簿でも、サイバー捜査課長は増沢氏となっています。

現時点で公開されている警察庁の人事発令資料からは、伊貝氏が6月に課長を離れた理由や、今回の内部調査との時間的な関係までは確認できません。

そのため、「不正が発覚したため6月26日に更迭された」と断定することはできません。

直前まで国際サイバー捜査を対外発信

伊貝氏は課長在任中、サイバー捜査と国際連携について対外的な発信も行っていました。

「警察公論」2026年7月号では、警察庁サイバー警察局サイバー捜査課長として「世界のサイバー警察へ」と題する記事を執筆しています。

また、「捜査研究」2026年6月号でも、同じ肩書で巻頭言を寄稿しています。

課長を離れた後に発行された「警察学論集」2026年8月号では、前サイバー捜査課長・元欧州サイバーリエゾンとして、Europolでの国際共同オペレーションへの日本警察の参画を論じています。

これらは不正行為そのものを裏付ける資料ではありません。

一方、伊貝氏が警察の国際サイバー捜査を代表する立場で活動していたことを確認できる公開資料です。

警察庁の2026年サイバー戦略は国際共同捜査を重点化

警察庁は2026年4月、「警察におけるサイバー戦略」を改定しました。

新戦略では、国境を越えるサイバー事案の被疑者を検挙するため、外国治安機関との緊密な連携を進める方針を示しています。

警察庁自身が外国治安機関とのハイレベル調整を行い、サイバー特別捜査部による国際共同捜査を進め、情報・運用面の協力を強化するとしています。

サイバー犯罪の国際化が進むなかで、Europolなど海外機関との信頼関係は、単なる外交関係ではなく捜査能力そのものの一部になっています。

その意味で、海外機関との業務に伴う経費を適正に管理することも、国際協力を維持するための内部統制の一部です。

同じ戦略で「サイバー警察活動の適正性」も明記

2026年のサイバー戦略には、国際連携だけでなく「サイバー警察活動における適正性の確保」という項目があります。

警察庁は、サイバー事案では多角的な証拠収集、裏付け捜査、電磁的記録の適正な取扱い、ログの迅速な確保を徹底するとしています。

民間企業や他部門から受け取った情報についても共有範囲を必要に応じて限定し、保秘と適正管理を徹底するとしています。

戦略では、こうした基本が守られなければ国民の警察活動に対する信頼を損ねかねないとして、幹部による適切な指揮と管理を求めています。

今回報じられた不正は情報管理違反ではなく、捜査費の経費処理をめぐる問題です。

それでも、警察庁自身がサイバー部門で「適正性」と「幹部管理」を重点に置くなか、課長級幹部の不正疑いが発覚したことは、内部統制の実効性を確認する事案になります。

警察庁は2026年2月に「組織の規律の緩み」を警告していた

今回の事案には、警察組織全体の綱紀をめぐる背景もあります。

警察庁は2026年2月5日、「警察の在るべき姿を踏まえた綱紀粛正と適確な組織運営管理の徹底について」と題する通達を全国の警察へ発出しました。

通達では、2025年の全国警察職員の懲戒処分者が337人となり、過去10年で最多になったとしています。

警察庁はその状況について、組織の規律が目に見えないうちに徐々に緩んでいるのではないかと強い懸念を示しました。

さらに、所属長や幹部に対し、部下が基本的な職務を適切に行っているか、要所で自ら確認するなど組織運営管理を徹底するよう求めています。

今回の不正疑いの期間は2022年から2026年ごろと報じられており、この綱紀粛正通達が出された2026年にも一部期間が重なります。

2025年の懲戒処分337人、詐欺・横領等は63人

警察庁の統計によると、2025年の全国警察職員の懲戒処分者は337人でした。

区分 2025年の処分者数
全懲戒処分 337人
免職 44人
停職 97人
減給 144人
戒告 52人
窃盗・詐欺・横領等 63人
「窃盗・詐欺・横領等」のうち免職 20人

2025年は「窃盗・詐欺・横領等」だけで63人が処分され、前年より11人増えています。

今回の伊貝氏の処分をこの63人に含めることはできません。処分日は2026年9月10日であるため、2026年下半期の処分に該当します。

2026年上半期も155人を懲戒処分

2026年上半期の全国警察職員の懲戒処分者数は155人でした。

前年同期154人から1人増えています。

処分理由別では「窃盗・詐欺・横領等」が21人で、そのうち4人が免職、8人が停職、9人が減給でした。

また、業務に関係する事案の処分者は57人でした。

今回の事案は7月以降の処分であり、この上半期155人には含まれません。

警察庁の懲戒処分指針は職責や社会的影響も考慮

警察庁の懲戒処分指針では、処分の決定にあたり、単純に不正金額だけを見るのではなく、行為の動機・態様・結果、他の職員や社会に与える影響、職員の職責、行為前後の態度、過去の規律違反、部下の規律違反と監督責任などを総合的に考慮するとしています。

今回のように課長級で全国のサイバー捜査と国際連携に関わる立場だった場合、職責の重さも処分判断上の要素になり得ます。

ただし、警察庁が今回の処分理由をどの項目に当てはめ、懲戒免職を選択したのかについて、詳細な公式処分文書は9月10日時点で確認できませんでした。

職務上の懲戒処分は原則として公表対象

警察庁の「懲戒処分の発表の指針」では、職務執行上の行為や、それに関連する行為に対する懲戒処分は公表対象とされています。

私生活上の行為についても、停職以上の処分などは原則として公表対象です。

また、関連する監督責任について処分や監督上の措置を行った場合も、公表すると定めています。

今回の事案では、海外出張や捜査協力に関係する費用の不正が問題とされているため、職務執行と密接に関係する事案です。

朝日新聞は、Europol派遣当時の上司らについても監督責任を問うと報じています。具体的な処分内容は正式発表で確認する必要があります。

国際共同捜査に必要なのは「情報の信頼」と「人・経費の信頼」

サイバーセキュリティ分野では、国際共同捜査というと、マルウェア解析、暗号資産追跡、ドメイン押収、サーバーテイクダウンなど技術面が注目されます。

しかし、実際の共同捜査は、各国が相手方の組織と担当者を信頼して情報を共有できることが前提です。

Europolと日本のWorking Arrangementも、安全・迅速・直接的な情報交換を協力の一部としています。

この信頼は、機密情報の取扱いだけで成立するものではありません。

出張費、捜査協力者への謝礼、会議費などを含め、共同捜査に付随する事務や会計処理が適正であることも組織としての信頼性を構成します。

ただし、今回の事案によってEuropolや各国機関が日本警察との情報共有を停止・縮小したとの事実は確認されていません。

「国際協力上の信頼へ影響し得る内部統制リスク」と、「すでに国際協力が損なわれた」という事実は分ける必要があります。

組織ガバナンスでは高い信頼を置く幹部ほど統制から外さない

企業の情報システム部門、CSIRT、SOCにとって、今回の事案はサイバー攻撃そのものではありません。

一方、内部統制とインサイダーリスクの観点では参考になる点があります。

高い権限や専門性を持つ人物は、組織から強い信頼を得ていることが多く、通常の確認手続きを省略されやすい場合があります。

特に海外業務や機密性の高い調査では、「捜査上の秘密」「取引上の秘密」「案件の機密性」を理由に、支出の実態を第三者が確認しにくくなります。

企業でも、インシデント対応時の緊急調達、海外出張、外部セキュリティ調査会社への支払い、脅威インテリジェンス契約、匿名性が必要な調査などでは同じ構造が生じます。

業務の機密性が高いことと、内部監査を受けなくてよいことは別です。

情報システム部門・CSIRTが確認したい内部統制

今回の事案を企業側の管理へ置き換えると、次のような確認項目があります。

  • 部門長やCISOを含め、役職に関係なく経費承認の証跡が残るか
  • 申請者と最終承認者を分離しているか
  • 領収書画像だけでなく、予約・決済・カード明細など別証跡と突合できるか
  • 海外出張の支出を現地担当者や主催者情報と照合できるか
  • 機密案件でも独立した監査担当者がアクセスできる仕組みがあるか
  • 長期間同じ人物だけが外部機関との窓口になっていないか
  • 高額・反復・例外的な経費を分析して異常を検知できるか
  • 経費申請データの改ざん防止とログ保存ができているか
  • 管理職による例外承認が常態化していないか
  • 内部通報窓口が部門の指揮命令系統から独立しているか
  • 役職異動時に権限、カード、アカウント、外部連絡先を棚卸しするか
  • 海外機関・取引先との重要な関係を個人だけに依存していないか

「信頼できる人物だから確認を減らす」のではなく、信頼が必要な職務ほど独立した確認を入れる設計が必要です。

サイバー部門では機密性と監査可能性を両立させる

CSIRTやSOCでは、インシデント調査の内容を社内でも限定共有にすることがあります。

その場合でも、支出、特権操作、外部とのデータ共有、調査ツール利用などについては後から監査できる状態を残せます。

例えば、特権操作ログ、チケット番号、支出承認番号、調査案件ID、外部共有承認、証拠データのアクセス履歴、API利用履歴などを分離して保存すれば、機密内容そのものを全員に公開せずとも、適正な手続が踏まれたかを確認できます。

今回の警察庁の事案でも、今後の焦点は個人の処分だけではなく、数年間にわたるとされる不正をなぜ経費審査や監督で検知できなかったのかという点になります。

2026年は警察のサイバー権限・体制が拡大する時期

今回の処分は、警察庁がサイバー分野で権限と体制を拡大している時期に起きました。

2026年4月のサイバー戦略では、サイバー特別捜査部を中心に、国家を背景としたサイバー攻撃への捜査、外国治安機関との国際共同捜査、パブリック・アトリビューション、犯罪収益追跡、官民連携などを推進するとしています。

セキュリティ対策Labでは、警察、自衛隊、国家サイバー統括室(NCO)を集約する能動的サイバー防御の合同拠点構想についても整理しています。

警察が扱うサイバー情報や技術的権限が拡大するほど、外部の攻撃者への対処だけでなく、内部統制、監察、情報管理、会計管理を同時に強化する必要があります。

日本警察の国際共同捜査はEuropolとの連携で実績を拡大

Europolとの協力は、日本警察のサイバー犯罪捜査で実際に使われています。

DDoS攻撃代行サービスを対象とした国際共同捜査では、Europolが主導したOperation PowerOFFに日本も参加し、日本国内の利用者の摘発につながりました。

2026年の警察白書では、サイバー犯罪の検挙件数が2025年に1万5,108件となり過去最多だったことや、国際共同捜査の拡大が整理されています。

今回の不正疑いは、こうした国際共同捜査の必要性を否定するものではありません。

むしろ、海外機関との情報共有と共同捜査を拡大するのであれば、リエゾンや幹部の経費・権限・情報取扱いについても、国際協力の拡大に合わせて監督可能な制度を整える必要があります。

今後確認したいポイント

9月10日時点では、朝日新聞の報道で処分の概要が明らかになった段階です。

今後は、次の事項が確認対象になります。

  • 警察庁による処分内容の正式な詳細
  • 不正受給額の正確な金額
  • 不正が認定された期間と回数
  • 警視庁による書類送検の実施
  • 適用される具体的な容疑
  • 検察による起訴・不起訴判断
  • Europol派遣当時の上司らへの処分
  • 経費審査・監督体制のどこに問題があったか
  • 同種の捜査費について追加監査を行うか
  • 国際共同捜査・情報共有への影響の有無
  • 再発防止策
  • 警察庁の懲戒統計への反映

特に、捜査費の不正が数年間にわたり数十回繰り返されたとすれば、個人の倫理だけでなく、承認、証憑確認、監督、監査という複数の統制がなぜ機能しなかったのかが検証対象になります。

警察庁は2026年2月の通達で、管理職が要所で自ら確認し、適切な組織運営を徹底するよう求めていました。

サイバー警察局が国際共同捜査など、より高度な権限と機密情報を扱う方向へ進む中、外部脅威への対処能力だけでなく、組織内部のガバナンスをどこまで立て直せるかも今後の確認点です。

出典