苫小牧民報社、記者による道警発表文書の個人情報含む内容を私的SNSアカウントへ投稿していたと公表

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苫小牧民報社、記者による道警発表文書の個人情報含む内容を私的SNSアカウントへ投稿していたと公表

北海道苫小牧市の地域紙を発行する株式会社苫小牧民報社は2026年6月、公式サイトで、編集局の記者1人が北海道警察が発表した文書少なくとも1件について、個人情報を含む一部の内容を記者本人が運用する個人のSNSアカウントに投稿していたことが社内調査で判明したと公表しました。

同社は「広報文書を含め取材活動で知り得た情報を報道目的外に使用、公開することは、報道機関としてはあってはならないこと」として関係者に深くお詫びしています。問題の記者は2025年4月から、個人で災害や事故などの情報を伝えるアカウントをSNS上に開設し、約1年間で計100件ほどの投稿を行っていました。

当該アカウントは既に削除されています。同社は今後、報道発表資料、特に個人情報を多く含む警察発表については取り扱いを担当者に限定し厳格化するとともに、記者教育のあり方を根本から見直し再発防止に努めるとしています。本記事ではこの事案の詳細・報道機関における情報管理上の問題点・再発防止策の評価を解説します。

サマリー

  • 発表時期:2026年6月(苫小牧民報社公式サイト
  • 判明の経緯:社内調査により判明
  • 問題の内容:編集局の記者1人が、北海道警察が発表した文書少なくとも1件について、個人情報を含む一部の内容を記者本人が運用するSNSアカウントに投稿
  • 投稿の性質:取材活動で知り得た情報(警察の広報文書)を報道目的外に使用・公開
  • SNSアカウントの運用期間:2025年4月〜(社内調査で判明した6月まで、約1年間)
  • 投稿件数:個人で災害や事故などの情報を伝えるアカウントとして計100件ほどを投稿
  • アカウントの現状既に削除済み
  • 会社の対応:①関係者への謝罪、②報道発表資料(特に個人情報を多く含む警察発表)の取り扱いを担当者に限定し厳格化、③記者教育のあり方の根本的見直し
  • 苫小牧民報社の概要:北海道苫小牧市・東胆振地域を中心とした地域紙。1950年創刊(前身:南北海新聞)

事案の詳細

何が問題だったのか

今回の事案の核心は、取材活動・報道機関としての立場で得た情報を、私的な目的のSNSアカウントで利用・公開したという点です。

報道機関は警察・行政機関等から発表される文書(プレスリリース、記者発表資料等)を取材活動の一環として受け取りますが、これらの文書、特に事件・事故・災害に関する警察発表には被害者・関係者の個人情報が含まれることが多いという特性があります。報道機関がこうした情報を扱う際には、報道目的の範囲内での厳格な取り扱いが求められ、社会的合意・職業倫理として「報道目的外での利用は行わない」という原則があります。

今回、当該記者は警察発表文書のうち少なくとも1件について、個人情報を含む内容を私的に運用するSNSアカウントに投稿していました。このアカウントは「個人で災害や事故などの情報を伝える」という体のものであり、記者個人の情報発信活動として2025年4月から運用され、約1年間で計100件ほどの投稿が行われていたとされています。

「計100件ほど」という規模の意味

苫小牧民報社の発表では「個人情報を含む一部の内容」を投稿していたのは「文書少なくとも1件」としていますが、SNSアカウント自体は2025年4月から約1年間運用され、計100件ほどの投稿が行われていたとされています。

この記述からは、以下の2つの可能性が考えられます。

  • 可能性①:100件の投稿のうち、個人情報を含む警察発表文書に基づく投稿は1件(または少数)であり、他の投稿は独自に収集した一般的な災害・事故情報だった
  • 可能性②:社内調査で判明したのは「少なくとも1件」だが、調査が継続中であり、他の投稿についても同様の問題が含まれている可能性が今後判明する可能性がある

同社の発表文は「道警が発表した文書少なくとも1件に関して」と限定的な表現を使っており、現時点では1件(または特定された範囲)の問題が確認されているという段階と解釈できます。

報道機関における情報管理上の問題点

①取材情報の「公私の境界」が曖昧になるリスク

今回の事案が示す重要な問題は、記者個人が「報道」とは別に運営する情報発信アカウントが、取材で得た情報の漏出経路になりうるという点です。

現代では記者個人がSNS上で情報発信を行うことは一般的になっていますが、「会社としての報道」と「個人としての情報発信」の境界が曖昧になると、職務上知り得た機密性の高い情報(個人情報を含む警察発表等)が個人の発信活動に紛れ込んでしまうリスクが生じます。

②警察発表文書の機密性・取り扱いルールの周知不足

警察発表は通常、捜査上の配慮や被害者保護の観点から、報道機関に対して「報道時の取り扱いに関する注記」(実名報道の可否、写真使用の制限等)が付されることがあります。今回の事案が「記者教育のあり方を根本から見直し」という対応につながっていることから、警察発表文書の機密性・取り扱いルールに関する社内教育が十分でなかった可能性が指摘できます。

③個人SNSアカウントの運用に関する社内ガイドラインの欠如

約1年間にわたり記者が個人のSNSアカウントを運用し、その間に問題が発覚しなかったという経緯は、報道機関として従業員の個人SNS運用に関するモニタリング・ガイドラインが不十分であったことを示唆しています。

苫小牧民報社が示した再発防止策の評価

同社が公表した再発防止策は以下の2点です。

再発防止策 内容 評価
報道発表資料の取り扱い厳格化 報道発表資料、特に個人情報を多く含む警察発表に関しては対応を担当者に限定 ○ 取り扱い者を限定することでアクセス・取り扱いの統制強化につながる
記者教育の根本的見直し 記者教育のあり方を根本から見直し 具体的な教育内容・実施頻度は未公表。今後の運用が問われる

「対応を担当者に限定」という措置は、警察発表文書へのアクセス・取り扱いを一部の担当者に絞ることで、情報の拡散経路を限定する効果が期待されます。一方で、今回問題となった「個人SNSアカウントでの情報発信」というリスクそのものへの直接的な対策(個人SNS運用に関するガイドラインの策定、モニタリング体制の有無等)については、現時点の発表内容では明示されていません。

報道機関・企業の情報システム担当者への教訓

今回の事案は新聞社という報道機関固有の事例ですが、企業の情報管理・コンプライアンス担当者にとっても共通する教訓があります。

①「職務上知り得た情報」と「個人の情報発信」の分離原則の明文化:従業員が個人で運営するSNSアカウントであっても、職務上知り得た機密情報・個人情報を投稿することは情報漏洩に該当します。就業規則・情報セキュリティポリシーにおいて、この原則を明文化し、入社時・定期的な研修で周知することが重要です。

②機密性の高い情報へのアクセス権限の最小化(最小権限の原則):今回の対応策である「対応を担当者に限定」は情報セキュリティの基本原則である「最小権限の原則(Principle of Least Privilege)」の実践です。個人情報を含む機密文書へのアクセスは、業務上必要な担当者のみに限定する設計が、漏洩リスクの低減に直結します。

③従業員の個人SNS利用に関するソーシャルメディアポリシーの策定:従業員が個人で運営するSNSアカウントについて、業務上知り得た情報の投稿を禁止する旨を明記したソーシャルメディアポリシーを策定し、入社時に同意を取得する運用が望まれます。

④内部通報・モニタリング体制の整備:今回の事案は「社内調査により判明」とされていますが、約1年間発覚しなかった点を踏まえると、より早期に異変を検知できる体制(内部通報制度・定期的なコンプライアンス確認)の必要性が示唆されます。


参考情報