
警視庁は5/9、在留カードを偽造した疑いで中国籍の男2人を逮捕したと発表しました。押収されたパソコンからは、偽造された日本人名義の戸籍謄本データも含む、約1万点におよぶ偽造データが見つかっています。
在留カード30枚を偽造
逮捕されたのは、いずれも中国籍の無職・杜晶江(と・しょうこう)容疑者(35)と李竜(り・りゅう)容疑者(36)です。
警視庁によると、2人は先月、東京都大田区のビルの一室でパソコンなどを使用し、在留カード30枚を偽造した疑いが持たれています。
押収されたパソコンの中からは、在留カードを中心に、マイナンバーカード、戸籍謄本、住民票などの偽造データが約1万点見つかりました。このうち半数以上が在留カードだったといいます。特に、日本人名義の偽造戸籍謄本の存在も確認され、捜査関係者は問題の深刻さを指摘しています。
これらの偽造データは、SNSを通じて1枚あたりおよそ1万円で販売されていたとみられ、2024年11月から2025年4月までの約5か月間で、少なくとも7500万円以上の売り上げがあった可能性があるとのことです。
1日50枚を偽造か
警視庁の調べによれば、杜容疑者は、中国にいる首謀者から送られてきた購入者の希望内容を基に、偽造データの印刷などを担当。李容疑者が完成した偽造カードを発送する役割を担っていました。
取り調べに対して2人は容疑を認めており、杜容疑者は「1日に平均50枚くらい偽造していた。在留資格がなかったため、在宅で金を稼げば摘発されにくいと思った」と供述しているということです。
警視庁は、中国にいるとみられる首謀者が犯行を指示していた可能性があるとみて、さらに捜査を進めています。
在留カード偽造事件で考えられるリスクと取るべき対策
今回の在留カード偽造事件では、日本人名義の戸籍謄本や住民票、マイナンバーカードといった公的書類まで偽造されていたことが明らかになりました。この事案から、以下のようなリスクが懸念されます。
想定されるリスク
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不正就労・不法滞在の助長
偽造在留カードを使用して就労する外国人が増加すれば、企業が知らずに不法就労者を雇用するリスクが高まります。これにより企業側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。 -
個人情報の悪用・なりすまし犯罪
偽造された戸籍謄本や住民票を用いて、銀行口座開設、クレジットカード作成、不正融資の申請など、さまざまな詐欺行為が行われるおそれがあります。 -
行政・金融機関の信用失墜
偽造書類を見抜けずにサービス提供や手続きを進めた場合、自治体や金融機関の信用が損なわれるリスクがあります。 -
国全体の治安悪化
偽造書類を利用した組織犯罪の温床となり、社会不安や治安の悪化を招く可能性もあります。
企業・個人が取るべき対策
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本人確認(KYC)プロセスの厳格化
雇用時や取引時に提出される身分証明書については、ICチップの読み取りや真贋判定ツールを使うなど、見た目の確認だけでなく電子的な検証も行うべきです。 -
定期的な社員教育・研修の実施
人事、総務、金融機関の窓口担当者向けに、最新の偽造文書の手口や見破り方について定期的に教育を行い、リスク感度を高めます。 -
不審点のチェックリスト運用
氏名と生年月日の不一致、登録住所の不自然さ、在留カード番号のフォーマットエラーなど、不審な点をチェックするリストを設け、二重確認体制を導入することが有効です。 -
警察・入管・金融庁など関係機関との連携
不審な書類や申請を発見した場合は、速やかに警察や関係当局に報告し、対応を仰ぐ体制を整備しておくことが重要です。 -
セキュリティ技術の導入・活用
オンラインでの本人確認(eKYC)を活用し、生体認証や公的個人認証(JPKI)を取り入れることで、偽造書類によるなりすましリスクを低減できます。
一部参照