米財務省、ミャンマーのカレン国民軍とその指導者をサイバー詐欺関与で制裁対象に-詐欺拠点「KKパーク」に関与

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米財務省、ミャンマーのカレン国民軍とその指導者をサイバー詐欺関与で制裁対象に-詐欺拠点「KKパーク」も関与

2025年5月5日、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、ミャンマーの武装組織「カレン国民軍(KNA)」とその指導者サウ・チット・トゥおよびその息子2名を制裁対象に指定したと発表しました。制裁理由は、米国民を標的としたサイバー詐欺、人身売買、越境密輸行為に関与したことです。

この発表は、KNAが支配するタイ=ミャンマー国境地域がサイバー詐欺の一大拠点となっているという実態を改めて国際社会に突きつける内容となっています。

サイバー詐欺が産業化したミャンマー国境地帯

KNA(旧称:カレン国境警備隊)は、ミャンマー東部カレン州のシュエコッコ地域を拠点とし、詐欺グループへの土地貸与、電力供給、警備提供を通じて巨額の収益を得ているとされています。

また、被害者はサイバー詐欺の加害者だけではなく、詐欺実行のために人身売買され、拘束・強要されている労働者も含まれる点が深刻です。

実際、被害報告の多い「KKパーク」と呼ばれる施設では、KNAの兵士が警備にあたり、その制服にKNAの徽章が確認されているとの証言もあります。

詐欺拠点「KKパーク」で日本人が被害に

今回、制裁の根拠として挙げられたのが、カレン州に存在する詐欺拠点「KKパーク」。ここでは、複数の証言と調査報道により、日本人を含む外国人が拘束・監禁され、詐欺行為を強制されていた実態が明らかになっています。

日本の外務省や在タイ日本大使館は、過去にタイを経由して詐欺組織に連れ込まれた日本人の救出支援を行った実績があり、「仕事のオファー」や「高収入求人」としてSNS等で勧誘された若年層が主なターゲットになっています。

被害者は、パスポートを取り上げられ、逃走を防ぐための暴力や脅迫を受けながら、SNSなどを使ったSNS型投資詐欺を強要されていたと報じられています。

KNAとその指導者たちへの制裁内容

OFACは、以下の制裁対象を発表しました

  • 組織:カレン国民軍(KNA)

    • 対象理由:国境を越えた組織犯罪ネットワーク(TCO)を形成しているため(E.O. 13581)

    • ミャンマーの平和と安定を脅かす存在として(E.O. 14014)

  • 個人:サウ・チット・トゥ(KNA指導者)およびその息子2名(サウ・フトゥ・エ・ムー、サウ・チット・チット)

    • KNAのために行動、またはその代理として活動

    • 息子2名はそれぞれ詐欺ビジネスの関係企業や軍事行動に関与

これにより、米国内または米国人が保有・管理する彼らの資産は凍結され、米国企業および個人とのあらゆる取引が禁止されます。

関連する国際的なサイバー犯罪ネットワーク

今回の制裁は、米財務省が東南アジア全域で広がるサイバー詐欺ネットワークの摘発強化の一環として行われたものです。

  • 2025年5月1日:財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、カンボジアのHuioneグループを「マネーロンダリングの主要懸念」に指定

    • 仮想通貨詐欺(俗に「Pig Butchering(養豚型詐欺)」と呼ばれる)での資金洗浄に関与

    • 北朝鮮のサイバー犯罪組織にも関与

  • 過去の対応

    • 2024年:カンボジアの大富豪リー・ヨン・ファットとその企業グループも制裁対象に

    • 2023年:FinCENが仮想通貨詐欺に関する警告アラートを発出

これら詐欺は、SNSやマッチングアプリなどを通じて信頼関係を構築し、被害者を偽の仮想通貨プラットフォームへ誘導、最終的に財産を奪うという極めて巧妙な手口を取っています。