英国の自動車メーカーであるジャガーランドローバー(JLR)は、2026年1月5日に発表したFY26第3四半期(2025年10月〜12月)の販売実績において、サイバーインシデントの影響により卸売・小売ともに大幅な減少となったことを明らかにしました。
同社によると、2025年夏に発生したサイバー攻撃を受け、生産停止と復旧遅延が発生し、四半期を通じて車両供給に深刻な制約が生じました。この影響は、単なるITトラブルの域を超え、ジャガーランドローバーの業績、従業員、さらには英国経済全体にまで波及しています。
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3Qの卸売・小売販売は前年同期比で2〜4割超の減少
ジャガーランドローバーの発表によると、FY26第3四半期の卸売台数は5万9,200台となり、前年同期比で43.3%減、前四半期比でも10.6%減と大きく落ち込みました。これは、サイバーインシデント後に生産が正常化したのが11月中旬以降にずれ込んだことが主因です。
小売販売台数も7万9,600台にとどまり、前年同期比で25.1%減となりました。地域別に見ると、北米が37.7%減、欧州が26.9%減と主要市場で軒並み大幅な減少が確認されています。
サイバー攻撃による生産停止が物流と供給網を分断
今回の販売減少の直接的な引き金となったのが、2025年8月に発生したサイバー攻撃です。この攻撃により、ジャガーランドローバーのITシステムが広範囲にわたり機能不全に陥り、英国国内の複数工場(ソリハル、ハリウッド、キャッスル・ブロムウィッチなど)で1か月以上にわたり生産が停止しました。
生産が再開された後も、完成車を世界各地へ輸送・配分するまでに時間を要し、結果としてQ3全体の販売実績を大きく押し下げる形となりました。自動車産業において、ITシステムが生産計画や物流と直結している現実が浮き彫りになった事例と言えます。
従業員・元従業員の給与関連データ流出も判明
このサイバーインシデントは、業績面だけでなく人的リスクも伴っていました。ジャガーランドローバーは、現在および過去の従業員に対し、給与・雇用関連データが不正アクセスを受けたことを正式に通知しています。
流出した可能性がある情報には、銀行口座情報、給与額や手当、税コード、ナショナルインシュランス番号(英国の社会保障番号)、住所などが含まれるとされています。対象は現職社員だけでなく、退職者や契約社員、扶養家族の一部情報にも及ぶ可能性があると報じられています。
二次被害リスクと従業員への影響
ジャガーランドローバーは現時点で「悪用の証拠は確認されていない」と説明していますが、これらの情報が犯罪者の手に渡った場合、
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なりすましによる金融詐欺
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給与振込先変更を装う標的型フィッシング
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個人情報を材料とした恐喝
といった長期的な二次被害リスクが続く可能性があります。同社は、該当者への個別連絡やクレジット監視サービスの提供を進めていますが、従業員側にも継続的な警戒が求められる状況です。
売上減少は約15億ポンド、英国経済にも波及
報道によれば、このサイバー攻撃による影響で、ジャガーランドローバーは売上が約15億ポンド(約3,100億円)減少したとされています。さらに、四半期決算ではサイバー事故関連の特別損失として1億9,600万ポンド(約410億円)が計上されました。
英国のサイバー保険会社などが設立したCyber Monitoring Centre(CMC)は、このインシデントが英国経済全体に与える影響を16〜21億ポンド(約3,300〜4,360億円)規模と試算しています。単一企業へのサイバー攻撃が、GDPにも影響を与え得ることを示す象徴的な事例です。
背後に「Scattered Lapsus Hunters」か
英当局やセキュリティ研究者の分析では、この攻撃の背後には「Scattered Lapsus Hunters」と呼ばれる犯罪グループの関与が疑われています。このグループは、Lapsus$やScattered Spider系統とされ、データ窃取と業務妨害を組み合わせた恐喝型攻撃を得意としています。
ジャガーランドローバーに対しても、盗み出したとされるデータを材料に金銭要求を行っている可能性が指摘されていますが、同社は詳細について公表していません。








