米司法省が公開した資料に、伊藤穰一氏とジェフリー・エプスタイン氏のメール等が含まれていたことを受け、伊藤氏は2026年3月3日に声明を公表しました。声明は、MITメディアラボ所長としての資金調達業務の一環でエプスタインから寄付を受けた経緯、2019〜2020年のGoodwin Procterによる第三者調査、そして違法・規程違反はなかったという立場を中心に説明しています。
一方で、公開文書や既報で争点化している論点のうち、声明では踏み込まずに残している部分も多く、対外説明としては空白が目立ちます。本稿では、声明で説明していない(または説明が足りない)ポイントを、公開情報ベースで解説します。
概要
伊藤氏は、エプスタインとのメール等が米司法省公開資料に含まれたことを受け、憶測報道やSNSコメントにより懸念が広がったとして、改めて経緯を説明しました。寄付受領はMITの資金調達業務として、MIT内外の助言を得て適切と判断され、MIT上層部の承認の下で匿名扱い・少額・使途制限なしの条件で受けた、としています。
また、日本側では千葉工業大学が2026年2月28日に、MITの第三者報告書を精査したうえで問題はないとの趣旨を発信しています。
これに対し、、MITの報告書に意図的に触れていない部分があります
※違法関与の断定ではなく、公開情報から整理
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MIT側の調査報告書が示した課題との向き合い方が薄い
伊藤氏は声明の中で、MITの調査報告書を根拠に「私はルールに違反していない」と主張しています。確かに報告書は、当時のMITに「物議を醸す寄付者」からの資金受け入れを禁じる明文化されたポリシーが存在しなかったため、有罪判決を受けた後のエプスタインの寄付を受け入れたことを「ポリシー違反と判断することはできない」としています
しかし、伊藤氏はこの結論の直後に続く極めて重要な一文を完全に黙殺しています。報告書は、寄付の受け入れは「MITコミュニティに深刻なダメージをもたらした『集団的かつ重大な判断ミス(collective and significant errors in judgment)』の結果であったことは明らかである」と厳しく断罪しているのです
さらに報告書は、伊藤氏が受け身で寄付を受け取ったわけではなく、エプスタインの犯罪歴(未成年に対する性犯罪)を十分に認識した上で、彼を寄付者として積極的に「開拓(cultivated)」していた事実を明らかにしています
2013年6月にMIT上層部がエプスタインからの最初の寄付の返金を検討した際、伊藤氏はこれに抵抗し、寄付を受け入れるよう上層部(Jeff Newton氏ら)に強く働きかけ、資金洗浄のための迂回ルートまで提案していたことが記録されています
「ルール違反ではなかった」という形式的な事実だけを抽出し、「性犯罪者であることを知りながら、周囲の反発を恐れて匿名で寄付を処理(実質的な隠蔽)し、積極的に資金を引き出そうとしていた」という部分は語っていません
また伊藤氏の声明では触れられていませんが、MITの報告書は、伊藤氏らがエプスタインを2013年から2017年の間に少なくとも9回、MITのキャンパスに招き入れていたことを暴露しています
伊藤氏は、エプスタインの訪問がMITにとって評判のリスク(レピュテーション・リスク)をもたらすことを十分に理解していたと推測できます。
例えば2016年のマービン・ミンスキー教授の追悼イベントの際には、伊藤氏はエプスタインの出席を許可しつつも、人目を避けるために自らのオフィスに彼を隠すように「隔離」する措置をとっていました
道義的責任を回避し続ける姿勢
今回の事態は、2025年11月に米国で成立した「エプスタイン文書透明化法」に基づき、米司法省が約350万ページ(画像18万枚、動画2,000本以上を含む)という膨大な未公開記録を公開したことに端を発しています。
伊藤穰一氏の声明は、デジタル庁や内閣府の有識者委員からの退任を表明しつつも、「当時のルール違反はなかった」という最低限の遵法精神を主張することで、教育機関のトップとして問われている「倫理的・道義的な責任」から巧みに目を逸らしています。
エプスタイン文書が突きつけているのは、「合法か違法か」という狭い議論ではなく、日本のビジネス界や学術界のリーダーが、性犯罪者の中核的なネットワークに組み込まれ、日本国内での活動を組織的に支援していたという事実です。米国の公的ソースが示す数々の事実と矛盾するこの声明のままでは、本質的な疑惑が払拭されることはありません。








