2026年5月1日、新潟市は記者会見を開き、地域の見守り活動を目的として市内の民生委員・児童委員(以下、民生委員)に提供していた高齢者名簿・児童名簿・避難行動要支援者名簿の計1万4,448人分が紛失したと発表しました。
上所美樹子・福祉部長と山本幹彦・こども未来部長は「このような事案を発生させたことは本市の情報管理体制の不備によるものであり、重大な問題であると認識している」と述べ、謝罪しました。現時点で外部への情報流出および被害は確認されていません。
目次
この記事のサマリー
- 新潟市が民生委員に提供していた児童名簿(170区域・11,949人分)・高齢者名簿(15区域・2,486人分)・避難行動要支援者名簿(1区域・13人分)の計186区域・1万4,448人分が紛失したことが判明しました。
- 発端は2025年12月の民生委員の一斉改選(定数1,375人)に伴う引き継ぎの際に39人分の児童名簿が誤廃棄されていたことが発覚したことで、その後2026年2月にすべての民生委員に連絡して全件点検を行ったところ大規模な紛失が明らかになりました。
- 市は名簿の引き継ぎを民生委員同士に任せきりにし、所在確認を行っていませんでした。市への返却記録も残しておらず、記録なくシュレッダー処理したものも「紛失」として計上されています。
- 名簿に記載されていた情報は氏名・住所・生年月日・性別・世帯主名等です。外部への情報流出は現時点で確認されていません。
- 市は対象者へ個別に文書を送付するとしており、再発防止策として名簿管理記録簿の新設・受け渡し記録の義務化・委員および市職員への研修の実施を行うとしています。
紛失した名簿の内訳
| 名簿の種別 | 対象区域数 | 件数 |
|---|---|---|
| 児童名簿(18歳未満) | 170区域 | 11,949人分 |
| 高齢者名簿 | 15区域 | 2,486人分 |
| 避難行動要支援者名簿 | 1区域 | 13人分 |
| 合計 | 186区域 | 1万4,448人分 |
いずれの名簿にも氏名・住所・生年月日・性別などが記載されており、避難行動要支援者名簿には災害時に自力での避難が困難な住民の情報が含まれています。
経緯——2025年12月の一斉改選が発覚のきっかけ
新潟市の民生委員の任期は3年であり、2025年12月に一斉改選(定数1,375人)が行われました。新任委員への名簿の引き継ぎを行った際、39人分の児童名簿が誤廃棄されていることが判明しました。
これを受けて市は2026年2月26日付ですべての民生委員に連絡し、全名簿の点検を実施しました。その結果、合計1万4,448人分という大規模な紛失が明らかになりました。
問題の本質——「管理をしていなかった」という市の体制の不備
今回の事案で特に注目すべきは、規則違反や意図的な流出ではなく、市が組織的に管理体制を持っていなかったことが根本原因である点です。
会見での市の説明から以下の管理上の問題点が明らかになっています。
問題1:引き継ぎを民生委員任せにしていたとして、市は名簿の引き継ぎを民生委員同士の自主的な対応に委ねており、「引き継ぎを我々の方で点検・確認は行っていなかった」(山本こども未来部長)とのことです。名簿の所在を市が積極的に確認する仕組みが存在していませんでした。
問題2:市への返却記録が存在しなかったとして、一部の民生委員が「市に返却した」と述べていますが、市は返却を受けた際に記録を残しておらず、どの名簿がいつ返却されたかを確認することができません。「(返却された名簿は)市でシュレッダーはかけているんですけど、どなたの分をいつ預かってとかそういった記録をこれまで取っていなかった」(山本こども未来部長)としています。
このため、実際には市に適切に返却・廃棄された名簿が多数含まれているとみられますが、記録がないためすべて「紛失」として計上せざるを得ない状況となっています。「紛失」の中には、委員が古い名簿と判断して廃棄したもの・市に返却されて廃棄されたもの・行方不明のものが混在しています。
問題3:個人情報の取り扱い指示が不徹底だったとして、市は名簿について「外部への持ち出し禁止」を委員に要請していましたが、明確な管理方法を定めておらず、所在確認も実施していませんでした。高齢者名簿は1994年度から、児童名簿は2002年度から提供されており、少なくとも20年以上にわたってこの体制が継続していたことになります。
「避難行動要支援者名簿」の紛失が持つ特別な深刻さ
本件の紛失対象に含まれる「避難行動要支援者名簿」は、災害時に自力での避難が困難な高齢者・障害者等の情報を集約した名簿です。平常時の見守りに加え、地震・水害等の発生時に民生委員が安否確認を行うために提供されるものであり、収録されている情報は他の名簿と比べても機微性が高いといえます。
今回の件数は13人分と比較的少数ですが、この種の情報が所在不明の状態に置かれていた事実は、災害対応の観点からも問題です。
情シス・行政情報管理担当者へのポイント
本件は「情報の漏洩」ではなく「情報の所在管理の欠如」という類型の事案です。不正アクセスやサイバー攻撃とは異なるリスクですが、個人情報の適切な管理という観点では同等の問題として扱われます。
個人情報保護法における「安全管理措置」(第23条)は、データの管理だけでなく紙媒体の情報についても同等の保護措置を求めています。特に外部の関係者(今回は民生委員)に情報を提供する際は、「誰に・いつ・何人分の情報を・何の目的で提供したか」の記録と、「提供した情報が期末や業務終了時にどう処理されたか」の確認が基本的な管理要件です。
「委員任せ」「返却記録なし」という今回の体制はこの基本要件を欠いており、行政機関だけでなく、外部の協力者・委託先に機密性の高い個人情報を提供している民間企業にとっても、自組織の管理体制を見直すきっかけとなる事案です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 自分の情報が含まれているか確認するにはどうすればいいですか? 新潟市は紛失した名簿に記載されていた市民に対して個別に文書を送付するとしています。文書が届いた場合は内容に従って対応してください。不安な方は新潟市の関連窓口(福祉部・こども未来部)に問い合わせてください。
Q. 「紛失」にはどのようなケースが含まれますか? 今回の「紛失」には、①民生委員が古い名簿と判断して廃棄したもの、②民生委員が市に返却したが市側に記録がなく確認できないもの、③行方不明のもの、が混在しています。市の記録不備により区別がつかないため、すべて「紛失」として計上されています。
Q. 民生委員とはどのような存在ですか? 厚生労働大臣から委嘱される無報酬のボランティアで、任期は3年です。地域で高齢者・児童等の見守り活動を行い、生活上の相談を受けるほか、災害時の安否確認なども担います。2026年4月1日現在、新潟市内には1,296人が活動しています。民生委員法により守秘義務が課せられています。
参考情報
- 民生委員・児童委員への名簿提供に関する個人情報紛失について(新潟市 記者会見資料、2026年5月1日)
- 新潟市の会見(5月1日午前)の内容に基づき、TeNYテレビ新潟が報道
- 新潟市、1万4千人分の情報紛失 民生委員に提供、児童名簿など(共同通信、2026年5月1日)
- 【続報】民生委員の情報紛失、対象は新潟市の1万4448人分(新潟日報、2026年5月1日)
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