フランス、15歳未満のSNS利用を原則禁止する法律を可決

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フランス、15歳未満のSNS利用を原則禁止する法律を可決

フランス議会は2026年7月21日、15歳未満の未成年者によるソーシャルネットワークへのアクセスを原則禁止する法律を最終可決しました。正式名称は「ソーシャルネットワーク利用が未成年者に及ぼすリスクから未成年者を保護することを目的とする法律(Proposition de loi visant à protéger les mineurs des risques auxquels les expose l’utilisation des réseaux sociaux)」です。Instagram・TikTok・Facebook・Snapchatをはじめとするプラットフォームが規制対象となり、フランスの視聴覚・デジタル規制当局であるArcom(Autorité de régulation de la communication audiovisuelle et numérique)が禁止対象のSNSリストを作成・管理します。欧州委員会は同年7月8日、EU・デジタルサービス法(DSA)との整合性を概ね認める意見を表明しており、国境を超えたプラットフォーム規制の先例として国際的な注目を集めています。

サマリー

  • 2026年7月21日、フランス議会が15歳未満のSNS利用を原則禁止する法律を最終可決
  • Arcomが禁止対象SNSの「禁止リスト(liste noire)」を策定し、違反を欧州当局に通報
  • 規制対象外の例外: Wikipediaなど共同百科事典、教育・科学ディレクトリ、オープンソース共有プラットフォーム
  • 15歳未満が禁止リスト外のSNSにアクセスする場合も保護者の同意が必要
  • SNSの広告宣伝物に「15歳未満に危険な製品」の警告表示を義務付け
  • 欧州委員会は7月8日、上院版の禁止リスト方式をDSAと概ね整合するとの意見を表明(一部規定は是正要求)
  • 法律の背景: 12〜17歳のTikTok平均利用時間は1日1時間21分(Arcom調査)

項目 内容
法律名称 SNS利用が未成年者に及ぼすリスクから未成年者を保護することを目的とする法律
最終可決日 2026年7月21日(議会による最終議決)
国民議会採択 2026年1月26日(賛成130・反対21)
上院採択(修正あり) 2026年3月31日
欧州委員会意見 2026年7月8日(禁止リスト方式を概ね承認)
主な規制対象 Instagram、TikTok、Facebook、Snapchatなど
規制年齢 15歳未満
執行機関 Arcom(フランス視聴覚・デジタル規制当局)
規制方式 禁止リスト(liste noire)をArcomが策定・更新

立法に至る背景―2023年の先行法から続く課題

今回の法律は、フランスが以前から取り組んできた未成年者のデジタル保護政策の集大成です。

2023年7月には「デジタル成人年齢(majorité numérique)の確立とオンラインヘイト対策を目的とするMarcangeli法(Loi Marcangeli)」が成立しました。この法律でも15歳未満のSNS登録禁止が規定されていましたが、年齢確認の技術的実装がEU規制と整合しないと判断され、事実上未適用のまま放置されることになりました。

転機となったのは2025年7月の欧州委員会によるDSA第28条関連の未成年者保護ガイドライン公表です。これにより、EU法の枠内で未成年者保護のためのより厳格な国内立法が可能となる道が開かれ、今回の法律の立案につながっています。

Arcomのデータによると、12〜17歳のフランスの青少年はTikTokを1日平均1時間21分利用しています。アルゴリズムは過激なコンテンツを優先的に表示する傾向があり、不安を煽る動画や有害な動画に青少年が継続的にさらされる状況が問題視されてきました。

法律の骨格――禁止リスト方式とArcomの役割

この法律の最大の特徴は、SNS全般を対象とした一律禁止ではなく、Arcomが策定・更新する禁止リストによる規制を採用した点にあります。これは国民議会が当初採択した一律禁止方式に対して、上院が修正を加えたものです。

上院は、憲法院(Conseil constitutionnel)への諮問機関であるコンセイユ・デタ(Conseil d’État)が一律禁止は違憲リスクがあると指摘した意見を踏まえ、「禁止リスト(liste noire)」方式を採用しました。ArcomがSNSの危険性を評価し、省令によって禁止対象のリストを定める仕組みです。このリストは状況の変化に応じて継続的に更新されます。Instagram、TikTok、Facebook、Snapchatはこのリストの対象となるものとされています。

禁止リストに掲載されているSNSは15歳未満のアクセスが完全に禁止されます。一方、禁止リストに掲載されていないSNSについては、15歳未満は保護者の同意を得た場合にのみアクセスが認められます。この二層構造は、児童の権利に関する国際条約(子どもの権利条約)が規定する保護者の同伴・同意の要件を尊重した設計です。

例外として規制対象外とされるのは、Wikipediaのような共同百科事典、教育・科学ディレクトリ、そしてオープンソースソフトウェアの開発・共有プラットフォームです。

EU・DSA体制との連動

この法律の制定には、EU全体のデジタル規制の枠組みが深く関わっています。

2022年に施行されたEUデジタルサービス法(Digital Services Act、DSA)の第28条は、未成年者を保護するための措置をプラットフォームに義務付けています。欧州委員会は2025年7月に、この第28条に関する未成年者保護ガイドラインを公表し、加盟国がより厳格な国内立法を行う余地を認めました。

欧州委員会は2026年7月8日、フランスの法律についての詳細な意見を公表しました。委員会は上院が採択した禁止リスト方式を概ね支持しつつも、法律の第6-9条第III項に規定されているArcomのEU当局への通報メカニズムの一部についてはDSAに抵触すると判断し、フランスに対して対応策の検討を求めています。フランスはこの点について欧州委員会に対応を通知する必要があります。

サーバーサイドエンジニアの経験からいえば、このような法律の実装には年齢確認(age verification)の技術的仕組みが核心となります。プラットフォーム側は、ユーザーが15歳未満かどうかを確認するための技術的手段をArcomが定める技術基準に従って実装することが求められます。生年月日の申告だけでなく、より確実な本人確認の仕組みが必要とされており、技術的・プライバシー的な課題が伴います。

広告規制と警告表示義務

この法律はアクセス禁止にとどまらず、付随するマーケティング規制も含んでいます。

まず、15歳未満を特定の対象とするSNSの広告(インフルエンサーや商業的パートナーシップを通じたものを含む)が禁止されます。フランスで存在感を増してきたインフルエンサーを通じた子どもへのSNS宣伝活動が明示的に規制対象とされた点は注目に値します。

また、SNSやオンラインプラットフォームの宣伝物には、「15歳未満に危険な製品(produits dangereux pour les moins de quinze ans)」という警告表示の付与が義務付けられます。これはタバコや酒類の警告表示に近い発想であり、SNSを一種のリスク商品として位置づける方向性を示しています。

情報システム部門への示唆

この法律はフランスの未成年者を対象としたものですが、フランスでビジネスを展開する企業の情報システム部門にも直接の影響があります。

フランスに事業拠点を持つ企業がSNSマーケティングを実施している場合、15歳未満を対象とした広告の見直しが必要になります。Arcomが禁止リストを公表した後は、対象プラットフォーム上での未成年者向けコンテンツの在り方を精査する必要があります。

より広い視点では、フランスの立法はEU全体の未成年者保護規制の方向性を先取りしている可能性があります。DSAの枠組みの下で、今後他のEU加盟国が類似の立法に動く動向を注視することが重要です。

また、フランスでの実施を通じて年齢確認技術の基準が成熟すれば、他の加盟国や日本を含む他の国々でも技術的な参照モデルとなり得ます。日本でもSNS投稿による個人情報漏洩や未成年者の巻き込みを防ぐためのSNS管理の強化が課題となっており、フランスの取り組みは参考になる事例です。


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