総務省は2026年7月24日、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)第28条に定める公表義務に違反したとして、Google LLC、X Corp.、Meta Platforms, Inc.、株式会社湘南西武ホーム、株式会社ドワンゴの5事業者に対し、同法第30条第1項に基づく勧告および第29条に基づく報告徴収を実施したと発表しました。同法に基づく勧告は2025年4月の施行以降で初のケースとなります。5社はいずれも公表を求められた事項の全部または一部を公表していなかったと認定され、GoogleとXについては報道によれば義務項目42のうちそれぞれ22項目・18項目に不備があったとされています。5社は2026年8月31日までに修正した公表資料の再公表または改善計画の提出を求められており、正当な理由なく勧告に従わない場合は是正命令に移行します。
サマリー
- 2026年7月24日、総務省が情プラ法第28条の公表義務違反で5事業者に是正勧告と報告徴収を実施
- 勧告対象:Google LLC(YouTube)、X Corp.、Meta Platforms, Inc.(Facebook・Instagram・Threads)、湘南西武ホーム(爆サイ.com)、ドワンゴ(ニコニコ動画)
- 情プラ法に基づく勧告は2025年4月の施行後初めて
- Googleは義務項目42のうち22項目、Xは18項目で開示不備と報じられている
- Google・Xは「改善の方向性が明確でなかった」として他3社より重い対応(再公表+改善計画の提出)を求められた
- Meta・湘南西武ホーム・ドワンゴは改善方針に基づく措置の実施と定期報告を指示
- 対象事業者9社のうちLINEヤフー・TikTok・サイバーエージェント等は適切に公表済み
- 正当な理由なく勧告に従わない場合は是正命令が発出される
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年(令和8年)7月24日 |
| 実施機関 | 総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報流通適正化推進室 |
| 根拠法令 | 情報流通プラットフォーム対処法 第28条(公表義務)違反 |
| 措置の根拠 | 勧告:法第30条第1項/報告徴収:法第29条 |
| 対象事業者 | Google LLC、X Corp.、Meta Platforms, Inc.、湘南西武ホーム、ドワンゴ(計5社) |
| 対象サービス | YouTube、X、Facebook・Instagram・Threads、爆サイ.com、ニコニコ動画 |
| 違反内容 | 公表を求められた事項の全部または一部を公表していなかった |
| 再公表期限 | 2026年8月31日 |
| 報告期限 | 改善計画:2026年8月31日/進捗:同年10月30日、以降2027年4月30日まで3か月ごと |
| 不履行時 | 是正命令の発出 |
情プラ法第28条が求める公表義務とは
今回の勧告の根拠となった情報流通プラットフォーム対処法(正式名称:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律、平成13年法律第137号)は、インターネット上の誹謗中傷などへの対応を強化するため2025年4月に施行された法律です。
同法第28条は、利用者に対する透明性を確保すること、および外部からの検証可能性を確保することを目的として、大規模特定電気通信役務提供者に対し、年1回、送信防止措置(投稿の削除等)の実施状況等の公表を義務付けています。具体的な公表事項は、同法施行規則(令和4年総務省令第39号)で定められています。
対象となるのは、月間の利用者数が1,000万人以上といった一定の条件を満たすとして総務省が指定した事業者です。指定事業者は、権利を侵害されたとする人から削除の申し出があった場合、7日以内に対応を判断して申立人に通知する義務を負い、その対応実績を年1回公表しなければなりません。
報道によれば、公表が求められる項目は42項目にのぼります。削除申請に7日以内に対応した件数、削除しない場合にその理由を通知した件数、利用者や公的機関からの通報を受けて削除した件数・しなかった件数、AIによる自動削除やアカウント停止の件数、日本語を理解するコンテンツモデレーターの人数などが含まれます。単なる削除総数だけでなく、判断の内訳と運用体制まで数値で開示することが求められている点が特徴です。
勧告に至った経緯――5月末の公表資料を精査、6月に報告徴収を実施
総務省が公表した経緯は次の通りです。
大規模特定電気通信役務提供者は、2026年5月31日までに、法第28条に基づく令和7年度(2025年度)の送信防止措置の実施状況等の公表資料を公表することが求められていました。これが情プラ法施行後の最初の公表サイクルにあたります。
総務省は各社が公表した資料の内容を確認したうえで、一部の事業者に対して法第29条に基づく2026年6月4日付の報告徴収(施行規則第24条)を実施しました。この報告内容を精査した結果、今回勧告を受けた5事業者については、法第28条各項に定める公表事項の全部または一部を公表しておらず、これらの規定に違反すると認められました。
公表対象となっていた指定事業者は9社です。今回勧告を受けなかったLINEヤフー、TikTokの運営会社、サイバーエージェントなどは、期限内に適切な公表を済ませていました。同じ規制のもとで、事業者間の対応に明確な差が生じた形です。
5社への措置――Google・Xとその他3社で対応内容が異なる
総務省は今回、勧告の内容を2つのグループに分けています。開示不備の程度と改善方針の明確さによって、求められる対応に差が設けられました。
Google LLCおよびX Corp.に対しては、令和7年度公表資料について法第28条の違反を是正するために必要な修正を実施し、2026年8月31日までに当該修正箇所を明示したうえで修正後の資料を再公表し、再公表の実施後速やかにその旨を報告することが求められています。令和7年度公表資料の修正が技術的に困難な場合は、法第28条の規定に基づき2027年5月31日までに公表すべき令和8年度(2026年度)の公表資料およびそれ以降の年度の公表資料において、第28条各項に定めるすべての公表事項を公表するよう、必要な措置を速やかに講じることが指示されました。
報告事項も具体的です。2026年8月31日までに、令和8年度公表資料およびそれ以降の年度の公表資料において法第28条各項に定めるすべての公表事項を確実に公表するために必要な措置と、その措置の実施スケジュールを具体的かつ明確に含めた改善計画を日本語の文書で報告することが求められています。さらに、その改善計画の進捗について2026年10月30日までに日本語の文書で報告し、以降も同様に2027年4月30日まで3か月ごとに報告することが指示されました。
Meta Platforms, Inc.、株式会社湘南西武ホーム、株式会社ドワンゴの3社に対しては、令和7年度公表資料の修正と2026年8月31日までの再公表を求める点はGoogle・Xと共通していますが、修正が技術的に困難な場合の対応が異なります。この3社については、2026年6月4日付の報告徴収に対する報告で既に示された改善方針に基づき、必要な措置を速やかに講じることとされました。報告事項も、改善方針に基づく措置の実施状況を2026年10月30日までに日本語の文書で報告し、以降2027年4月30日まで3か月ごとに報告するという内容にとどまっています。
この差は、Google・Xについては報告徴収の段階で改善の方向性が明確に示されなかったと総務省が評価したことによるものと報じられています。
GoogleとXの開示不備の規模
報道によれば、Googleは義務づけられた開示項目42のうち22項目、Xは18項目について適切な開示がなされていなかったと判定されています。義務項目のおよそ半分前後が抜け落ちていたことになり、単純な記載漏れというよりも、制度全体への対応が追いついていなかった実態を示す数字といえます。
総務省の公表資料には各社の個別の不備項目は記載されておらず、事業者ごとの勧告文書(別添1〜5のPDF)に詳細が示される構成となっています。
勧告に従わない場合の効果
情プラ法における勧告そのものに直接の罰則は定められていません。しかし、正当な理由なく勧告に従わなかった場合には、より強い行政処分である是正命令が発出されると規定されています。是正命令にも従わない場合は、さらに次の段階の措置に進む可能性があります。
今回が施行後初の勧告事例であることから、5社が期限内にどこまで対応するかによって、情プラ法という制度の実効性が問われることになります。
情報システム部門・法務部門への示唆
今回の勧告は日本国内でサービスを提供するプラットフォーム事業者を対象としたものですが、企業の情報システム部門・法務部門にとっても複数の実務的な示唆があります。
第一に、自社が利用しているプラットフォームの透明性レポートを確認する意義です。誹謗中傷や不適切な投稿への削除依頼を出す場面において、対応実績や体制の開示が薄いプラットフォームは、いざというときの対応スピードや判断基準が読みにくいリスクを抱えていると評価できます。ブランドセーフティや炎上対応の観点から、主要プラットフォームの公表資料を一度確認しておくことは有用です。
第二に、法令に基づく開示義務の運用リスクです。今回の事案は「サイバー攻撃を受けた」といったインシデントではなく、法定の公表事項を満たしていなかったというコンプライアンス上の不備が行政処分に至った事例です。海外事業者にとって日本の規制要件を正確に把握して社内の報告体制に落とし込むことの難しさが浮き彫りになっています。自社が各国の規制に基づく開示義務を負っている場合、義務項目の抜け漏れを検知する内部統制の整備が必要です。
第三に、情プラ法をめぐる規制動向の継続的な把握です。同法については2026年7月13日に選挙期間中の偽情報対策を強化する改正法が成立しており、2027年3月1日の施行が予定されています。SNSプラットフォームへの規制は今後も強化される方向にあり、事業者・利用企業の双方が動向を注視する必要があります。








