AI時代のセキュリティ教育、押さえるべき5つのポイント【完全ガイド】

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AI時代のセキュリティ教育、押さえるべき5つのポイント【完全ガイド】

セキュリティ教育を今のまま続けてよいのか、判断に迷う情報システム部門は少なくありません。この記事では、米国CISA・NIST、英国NCSC、イスラエルINCDという3カ国の公的機関の指摘をもとに、AI時代のセキュリティ教育で押さえるべき5つのポイントを整理します。自社の教育を見直す際のチェックリストとしてご活用ください。

この記事のサマリー

  • 教育を年1回のEラーニングではなく、EDRやSOC監視と並ぶセキュリティ対策として位置づける必要があります。
  • 訓練シナリオを継続的に更新するには、ベンダー自身のSOCや脅威データベースの保有が実質的な条件になります。
  • 効果測定は開封率だけでなく、NIST Phish Scaleのような難易度評価や報告率もあわせて確認する必要があります。
  • 英国NCSCは、対象をメールに限定せず、テキストメッセージなど複数のチャネルを想定したガイダンスを示しています。
  • 米Verizonの調査では、直近に訓練を受けた従業員の報告率が、受けていない従業員のおよそ4倍に達しています。

整理表—AI時代のセキュリティ教育 5つのポイント

ポイント 何を確認するか 根拠となる公的機関の指摘
1. セキュリティ教育を研修ではなく、セキュリティ対策として位置づける 教育予算ではなくセキュリティ予算の枠組みで評価しているか INCD:攻撃は人間の速度から機械の速度へ転換
2. シナリオを脅威インテリジェンスで更新し続ける ベンダーがSOCや脅威データベースを保有しているか CISA:生成AIで文法的に完璧な文面が量産される
3. 効果測定を開封率だけに頼らない 難易度評価・報告率など複数指標で測定しているか NIST:Phish Scaleによる難易度の客観評価/Verizon:報告率のデータ
4. メール以外のチャネルも対象にする テキストメッセージなど複数の経路を想定しているか NCSC:フィッシングの定義にテキストメッセージも含める
5. 教育の頻度とタイミングを見直す 直近の実施からどれくらい期間が空いているか Verizon:直近訓練を受けた従業員は報告率が約4倍

ポイント1:セキュリティ教育を「セキュリティ対策」として位置づける

多くの組織では、標的型攻撃メール訓練を年1回のEラーニングと同じ予算枠、同じ位置づけで扱たり、セキュリティ教育はあくまでリテラシーや啓発であるという認識があります。

しかし、イスラエルINCD局長のヨッシー・カラディ氏は、新世代のAIモデルの登場によりサイバー攻撃が人間の速度から機械の速度へと転換していると警鐘を鳴らしており、従来型の防御だけではもはや十分ではないと述べています。

目安として、従業員数600人を超える組織では、セキュリティ教育を、EDRやSOC監視と並ぶセキュリティ対策そのものとして位置づけ、運用することが必要になります。

組織の規模が大きくなるほど攻撃者にとっての侵入経路となり得る従業員数も増え、フィッシングシナリオの精度や更新頻度が被害の発生確率に直結するためです。予算やKPIの設計段階から、教育予算ではなくセキュリティ予算の枠組みで教育・訓練ツールを評価することが、選定基準として重要になります。

ポイント2:シナリオを脅威インテリジェンスで更新し続ける

米国CISAの公式ガイダンス「Recognize and Report Phishing」は、生成AIの普及により、これまで見分け方の手がかりとされてきた文法や綴りの誤りが機能しなくなりつつあると明記しています。この変化に追随するには、教育・訓練のシナリオそのものを継続的に更新する体制が欠かせません。

最新のシナリオに対応し続けるためには、

ベンダー自身が自社でSOC(セキュリティオペレーションセンター)を保有しているか、

実際に観測されたフィッシングメールを蓄積したデータベースを保持していることが実質的な条件になります。

汎用テンプレートを定期的に入れ替えているだけのサービスと、日々の監視・検知から得られた実際の攻撃傾向をシナリオへ反映できるサービスとでは、変化速度への追随力に大きな差が生まれます。ベンダー選定時にSOCの有無や脅威データベースの保有状況を確認する具体的な項目については、標的型攻撃メール訓練ツール/サービスの比較と選び方であわせてご確認ください。

ポイント3:効果測定を開封率だけに頼らない

米国立標準技術研究所(NIST)が公開している「NIST Phish Scale User Guide」(NIST Technical Note 2276)は、フィッシングメールが受信者にとってどれだけ見抜きにくいかを客観的に評価するための手法を示しています。同じ開封率であっても、簡単に見抜けるはずのメールへの反応なのか、高度に巧妙化したメールへの反応なのかによって、教育の実効性の評価はまったく異なります。開封率という単一の指標だけでは、教育の本当の効果を測れません。

あわせて、米Verizonの「2025 Data Breach Investigations Report」では、直近に訓練を受けた従業員の不審メール報告率が、受けていない従業員のおよそ4倍に達したというデータが示されています。開封率の低下だけでなく、従業員が不審なメールを自発的に報告する行動そのものを指標に組み込むことが、教育の効果を正しく把握するうえで重要です。

ポイント4:メール以外のチャネルも対象にする

英国NCSCが公開しているガイダンス「Phishing attacks: defending your organisation」では、フィッシングを電子メールに限定せず、テキストメッセージを含む攻撃として定義しています。攻撃者が悪用する経路がメールだけにとどまらない以上、教育やシナリオの対象範囲も、この定義に沿って見直す価値があります。

NCSCのガイダンスはまた、攻撃者からユーザーへの到達を防ぐ層、ユーザーが不審なメッセージを識別・報告できるようにする層、検知されなかった場合の影響を抑える層という複数の防御層を組み合わせることを推奨しており、教育・訓練を特定の一つのチャネルや手段に限定しない設計思想がうかがえます。

ポイント5:教育の頻度とタイミングを見直す

イスラエルINCDは、2025年に31,657件のフィッシング攻撃に対応したと公表しており、これは前年比で7倍の増加にあたります。攻撃の発生頻度がこれほど急速に増加している以上、年1回の教育で対応し続けることには限界があります。

米Verizonの2025年版データ漏えい調査報告書が示す、直近に訓練を受けた従業員の報告率が約4倍に達するというデータは、教育の効果が実施からの経過期間に強く左右されることを裏づけています。教育の内容そのものだけでなく、実施の頻度やタイミングを、年次の恒例行事から継続的な取り組みへと見直すことが、5つ目のポイントになります。

まとめ

米国CISA・NIST、英国NCSC、イスラエルINCDという3カ国の公的機関の指摘を踏まえると、AI時代のセキュリティ教育に求められているのは、教育を単発のイベントから継続的なセキュリティ対策へと組み替えることだといえます。なぜ今このような見直しが必要とされているのかについては、姉妹記事の「なぜ今、セキュリティ教育を見直す企業が増えているのか――AI時代の3つの変化」もあわせてご覧ください。標的型攻撃そのものの基礎知識は標的型攻撃とは?仕組みや手口、事例を解説、教育施策全体の位置づけについてはセキュリティ教育とは?重要性・必要性や実施手順を解説をご参照ください。

 

出典

Recognize and Report Phishing——CISA

NIST Phish Scale User Guide(NIST Technical Note 2276)——NIST

Phishing attacks: defending your organisation——英国NCSC

2025 Data Breach Investigations Report——Verizon

Cyber Directorate: 31K+ phishing attacks in 2025——イスラエルINCDの発表を報じた現地メディア

Israel warns CEOs: AI is lowering the barrier to cyberattacks——INCD局長ヨッシー・カラディ氏の発信を報じた現地メディア