株式会社日刊工業新聞社は2026年8月25日、過去に提供していたメール配信サービス「ニュースウェーブ21」に関連するシステムへの不正アクセスについて、調査結果を公表しました。
調査の結果、第三者が管理画面に対してブルートフォースアタック(総当たり攻撃)を行い、一部の管理用アカウントに設定されていた脆弱なパスワードを突破して不正ログインしたことが原因と判明しました。
閲覧された可能性があるのは約279人分のメールアドレスと会社名です。ただし、8月25日時点で情報が実際に外部へ持ち出されたことが確認されたわけではなく、本件に起因すると考えられる二次被害も確認されていません。
日刊工業新聞社は、管理画面へのIPアドレス制限、攻撃元アクセスの遮断、不正作成アカウントと不要管理アカウントの削除、全管理アカウントのパスワード変更などを実施しました。今後は2026年度内をめどに対象システムを完全閉鎖し、多要素認証(MFA)の導入検討や管理アカウント管理ルールの全面見直しを進めます。
日刊工業新聞社の不正アクセスのサマリー
- 確認済み:日刊工業新聞社は2026年8月25日、「ニュースウェーブ21」に関連するシステムへの不正アクセスについて調査結果を公表しました。
- 確認済み:対象は、すでに提供を終了しているメール配信サービス「ニュースウェーブ21」に関連するシステムです。
- 確認済み:第三者が管理画面へブルートフォースアタックを行い、管理用アカウントへ不正ログインしました。
- 確認済み:原因は、一部の管理用アカウントに脆弱なパスワードが設定されていたことです。
- 確認済み:約279人分のメールアドレスと会社名が第三者に閲覧された可能性があります。
- 未確認:8月25日時点で、対象情報が実際に外部へ流出・持ち出されたことは確認されていません。
- 確認済み:クレジットカード情報、銀行口座情報、マイナンバーなどは対象システムで保有しておらず、今回の影響対象ではありません。
- 確認済み:本件に起因すると考えられる二次被害は確認されていません。
- 確認済み:不正アクセス後に不正作成されたアカウントが存在し、同社はこれを削除しています。
- 対応済み:管理画面へのIPアドレス制限、攻撃元アクセス遮断、不要管理アカウント削除、全管理アカウントのパスワード変更などを実施しました。
- 今後の対応:2026年度内をめどに対象システムを完全閉鎖します。
- 今後の対応:アクセスログ監視、定期的な脆弱性診断、管理アカウント管理ルールの見直し、MFAの導入検討・適用範囲拡大を進めます。
- 未公表:不正アクセスが実際に行われた日時、攻撃元、試行回数、不正ログイン後の操作範囲は公表されていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査結果公表日 | 2026年8月25日 |
| 第一報公表日 | 2026年8月18日 |
| 対象組織 | 株式会社日刊工業新聞社 |
| 業態 | 産業総合紙「日刊工業新聞」を中核とする産業情報機関。電子メディア、出版、展示会・イベント、教育等も展開 |
| 対象システム | 過去に提供していたメール配信サービス「ニュースウェーブ21」の関連システム |
| インシデント | 管理画面への不正ログイン |
| 攻撃手法 | ブルートフォースアタック(総当たり攻撃) |
| 原因 | 一部管理用アカウントに設定されていた脆弱なパスワード |
| 閲覧された可能性がある人数 | 約279人 |
| 対象情報 | メールアドレス、会社名 |
| 情報流出 | 確認されていません。閲覧された可能性 |
| 決済・重要情報 | クレジットカード、銀行口座、マイナンバー等は対象システムで保有せず |
| 二次被害 | 8月25日時点で確認されず |
| 対応 | IP制限、攻撃元遮断、不正・不要アカウント削除、全管理パスワード変更等 |
| システム閉鎖 | 2026年度内をめどに完全閉鎖予定 |
| MFA | 導入検討および適用範囲拡大 |
| 関係機関への報告 | 実施済み。具体的な報告先は公表されていません |
日刊工業新聞社は産業総合紙を中核に複数の情報事業を展開
株式会社日刊工業新聞社は、産業総合紙「日刊工業新聞」を中核に、電子メディア、出版、展示会・イベント、教育などを展開する産業情報機関です。
同社は1915年の創刊以来、日本の製造業や科学技術、産業政策、中小企業などを対象に情報発信を行ってきました。
今回不正アクセスを受けたのは現在の日刊工業新聞電子版や主要な現行サービスではなく、過去に提供していたメール配信サービス「ニュースウェーブ21」に関連するシステムです。
8月18日の第一報から1週間、原因と影響範囲を公表
日刊工業新聞社は8月18日、「ニュースウェーブ21」に関連するシステムで第三者による不正アクセスが発生したことを第一報として公表しました。
その後の調査で、約279人分のメールアドレスと会社名が第三者から閲覧された可能性があること、管理画面への不正ログインがブルートフォースアタックによって成立していたことが判明しました。
8月25日の調査結果では、第一報から一歩踏み込み、攻撃手法、原因、対象人数、対象情報、実施済み対策まで明らかにしています。
一方、不正アクセスが開始された日時や侵入が継続していた期間、攻撃元の属性などは公表されていません。
総当たり攻撃で脆弱な管理者パスワードを突破
日刊工業新聞社によると、攻撃者は管理画面に対しブルートフォースアタックを行いました。
ブルートフォースアタックは、多数のパスワード候補を試して認証突破を試みる攻撃です。
今回、システムの脆弱性や未知のCVEが悪用されたとは公表されていません。原因として明示されているのは「一部の管理用アカウントに設定されていた脆弱なパスワード」です。
日刊工業新聞社は、自社の認証管理が十分ではなかったことを重く受け止め、セキュリティ管理体制の強化を進めるとしています。
今回の事案は、複雑な脆弱性悪用ではなく、管理用アカウントの基本的な認証管理が侵入を許した事例として捉えることができます。
約279人のメールアドレス・会社名に閲覧された可能性
第三者が閲覧した可能性がある情報は、約279人分です。
対象項目は、
- メールアドレス
- 会社名
の2項目です。
日刊工業新聞社は「閲覧された可能性がある」としており、データの外部持ち出しやインターネット上への公開を確認したとはしていません。
そのため、本件を「約279人の個人情報が漏えいした」と断定するのは現時点では正確ではありません。
一方、認証を突破した第三者が利用者情報を閲覧できる状態にあったことは確認されています。
クレジットカードや銀行口座、マイナンバーは保有せず
対象システムでは、クレジットカード情報、銀行口座情報、マイナンバーなどの重要な決済・認証情報を保有していませんでした。
このため、これらの情報は今回の影響対象には含まれていません。
ただし、メールアドレスと会社名の組み合わせも、標的型フィッシングやなりすましメールなどの材料として悪用される可能性があります。
日刊工業新聞社は、同社を装った不審なメールや連絡に注意し、メール内のURLや添付ファイルを開かず削除するよう呼びかけています。
8月25日時点で、本件に起因する二次被害は確認されていません。
不正に作成されたアカウントも削除
不正アクセス確認後、日刊工業新聞社は複数の対応を実施しました。
主な措置は以下です。
| 対応 | 内容 |
| 管理画面のアクセス制限 | IPアドレスによるアクセス制限を実施 |
| 攻撃元遮断 | 攻撃元からのアクセスを遮断 |
| 不正アカウント対応 | 不正作成されたアカウントを削除 |
| 管理アカウント整理 | 不要な管理アカウントを削除 |
| 認証情報変更 | 全管理アカウントのパスワードを変更 |
| 導線削除 | 管理画面へのログイン導線を削除 |
| 外部連携 | 関係機関への報告と連携対応を実施 |
同社は、これらの措置によって「同一手法によるアクセスが行えない状態」であることを確認したとしています。
具体的な関係機関名は公表されていないため、個人情報保護委員会や警察など特定機関への報告を推測することはできません。
旧サービスのシステムを2026年度内に完全閉鎖へ
今回の再発防止策で特に注目されるのが、対象システム自体の閉鎖です。
日刊工業新聞社は、2026年度内をめどとして「ニュースウェーブ21」に関連する当該システムを完全閉鎖するとしています。
提供を終了したサービスのシステムが残り続けていたこと自体が、今回の攻撃対象を残す結果となりました。
ただし、日刊工業新聞社は「システムを残していたこと自体が不正アクセスの原因」とは説明していません。
直接の原因は脆弱な管理者パスワードです。
一方、すでに業務上の役割を終えたシステムを閉鎖していれば、そもそも攻撃可能な対象を削減できたという観点から、レガシーシステムや不要資産の廃止は重要な再発防止策となります。
MFA導入を検討、管理アカウントルールも全面見直し
日刊工業新聞社は今後、対象システムの閉鎖に加えて、
- 攻撃元アクセスの遮断
- アクセスログの継続監視強化
- 定期的な脆弱性診断
- 管理アカウント管理ルールの全面見直し
- MFAの導入検討と適用範囲拡大
- システム基盤とプログラム言語の更新
を進めるとしています。
今回の攻撃は、パスワードだけで管理画面へログインできる構成で、弱いパスワードが突破されたことが直接原因でした。
MFAを適用すれば、仮にパスワードが推測・取得された場合でも、それだけで管理者ログインが成立するリスクを大きく下げられます。
「提供終了済みシステム」の管理が論点
今回の事案は、現役サービスだけでなく、提供終了後に残っているシステムの管理を改めて確認する必要性を示しています。
企業では、サービス終了後も、
- 過去顧客への参照用途
- 法令・契約上のデータ保存
- 移行作業
- 他システムからの依存
- 将来的なデータ参照
などを理由に旧システムが残る場合があります。
問題は、利用頻度が下がった後も、現役システムと同じ水準でアカウント棚卸し、パッチ適用、ログ監視、認証強化が続けられているかです。
業務部門から見れば「もう使っていないサービス」でも、インターネットから到達可能で管理画面が稼働していれば、攻撃者にとっては現役の攻撃対象です。
情報システム部門への示唆
今回の事案から優先して確認したいのは、管理者アカウントと旧システムの二つです。
第一に、管理画面へパスワードだけでログインできるシステムを棚卸しし、可能な限りMFAを適用する必要があります。特にインターネットから到達可能な管理画面は、IP制限、VPN経由化、ゼロトラストアクセスなどを組み合わせ、認証画面そのものへの到達範囲を絞ることが有効です。
第二に、管理アカウントについて、長期間使用されていないアカウント、退職者・異動者のアカウント、共有アカウント、初期アカウントが残っていないかを定期的に確認する必要があります。
第三に、ブルートフォース攻撃を前提とした検知が必要です。同一IPからの大量ログイン試行だけでなく、複数IPから少数ずつ試すパスワードスプレー型の攻撃もあるため、ユーザー単位・IP単位・時間単位で失敗回数を相関させることが重要です。
第四に、提供終了済みサービスを資産台帳から漏らさないことです。「停止予定」「移行済み」「参照専用」などの状態を管理し、完全廃止日と責任者を明確にします。
第五に、システム廃止時には、サーバー停止だけではなく、DNS、クラウドリソース、管理アカウント、APIキー、証明書、バックアップ、監視設定、外部公開ポートまで含めて撤去を完了させる必要があります。
今回のように、重大な脆弱性や高度なマルウェアを使わなくても、弱い管理者パスワードだけで情報へのアクセスが発生する可能性があります。基本的な認証管理と不要資産の削減を継続することが、攻撃面を減らすうえで重要です。








